意見を求めるとき 最初からダメと思われる3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(42)上司の意見が聞きたい
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、上司の意見を聞きたいという場面です。
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いくらよいアイデアが浮かび、完璧な企画書ができても上司からGo sign が出なければ、それを生かすことはできません。自分の企画やアイデアをどう思ったか……それを尋ねるのがまずしなければならないことですが、相手の気持ちを損なわず、こちらの意図を汲みとってもらうにはどうすればよいでしょうか。
正しい訳:アイデアはどうですか?
影の意味:私のアイデアは好き?きらい?どっち?
Do you like my idea? は「好きなの?嫌いなの?どっちなの?」というニュアンス。答えはYes. かNo. しかありません。相手の意見を聞く必要がある場合はYes. No. を問わない聞き方が必要になります。
正しい訳:このアイデアはうまくいくと思いますか?
影の意味:このアイデアは何とかなるかな?
all right のニュアンスは日本人とは違うかもしれません。「大丈夫」すなわち「ギリギリで何とかなる」の意味合いがあり、この言葉を使った時点で、自信のなさが期せずして伝わってしまうことになります。
正しい訳:このアイデアを喜んでくれるといいのですが、
影の意味:あまりいいアイデアではないですが、どうでしょうか?
I hope…には客観的なニュアンスもなく、またポジティブな響きもありません。すなわちビジネス場面などで、自分のアイデアを推す場合には弱すぎます。これでは上司も「ぜひ見せてくれ」とはならないでしょう。
これなら「影の意味」はない!
このアイデアは気に入っていただけると思います。この企画書を見ていただけますか?
I hope…ではなく、I think… ということで、あなたの自信が垣間見られます。上司は早速真剣に見てくれるでしょう。
コストを30%削減できるアイデアがあります。このサマリーを見ていただけますか?
企画書などを出す場合、どのような場面でも同じですが、自分だけが企画書を提出し、ぜひ気に入ってもらいたいと考えているという前提は誤りです。競合者がいるときでも、しっかり自分の企画書を見てもらうためには、このように何についての企画書なのかを具体的に明示することが非常に効果的になります。
配送時間を短縮するための方策に何とか答えを出してみました。10分ほどお時間を頂けたら、お話しいたします。
話の内容を具体的に述べるとともに、相手に都合してもらう時間が10分であるという具体的な数字をあげています。これであれば、仕事と仕事の合間のひととき、あるいはたとえ忙しくても10分程度なら時間は融通できると思うでしょう。ビジネスでは漠然とした話はご法度。具体的に進めていくのが一番です。
あなたが知らない本当の意味―― idea
・Maybe George has some suggestions. He's an idea hamster. おそらくジョージには何か提案があるんじゃないかなあ。彼はアイデアの宝庫だからね。
*hamster とは、檻の中で一時も休まずコトコトと動き回っているあのハムスターのことです。idea hamster となると、「アイデアが次々と湧いてくる人、もしくはそう思われている人」「アイデアの宝庫」の意味になります。
・The idea is to get a lot of people to come to the seminar. セミナーに多くの人に来てもらうことが狙いです。
*この場合のidea は単なる「考え/アイデア」ではなく、「目的としていること/狙っていること」の意味になります。
・If you hit upon any new ideas, please let me know. 何かアイデアが思いついたら、知らせてください。
* hit upon an idea:アイデアを思いつく
・I was surprised by the idea that debt is a good thing. 負債がよいことであるという考えには驚かされました。
*the idea that …:that 以下であるという考え
* idea that there's no such thing as good deflation:よいデフレーションのようなものはないという考え方、すなわち「よいデフレは存在しないという考え方」
・What's the big idea of putting all my things on the floor? 僕のものを全部床に置いちゃうなんていったい何考えてんだよ!
*What's the big idea of …ing ? は意味不明であったり、傍若無人なふるまいをする人に対して思わず発する 「~するなんていったい何のつもりだよ、何考えてんだよ」という意味のフレーズです。
*What's the big idea lounging in my room?:人の部屋で、何くつろいじゃってるのよ!
・My partner and I had conflicting ideas about the future of the company. パートナーと私は会社の将来については考えが対立していました。
*have a conflicting idea:対立する考えを持つ
・Linda spends too much time on half-baked ideas. リンダは中途半端な考えに長時間を費やしています。
*half-baked idea は文字通り「生焼けのアイデア」すなわち「生半可な、不完全なアイデア」のこと。
・That sounds like the worst idea in the history of humankind. それは人類史上最悪の考えのようです。
*the worst idea in the history of humankind:人類史上最悪な考え
・I have no idea why Steve said such a stupid thing. スティーブがなぜそんなバカなことを言ったのかさっぱり分かりません。
*I don't know. など「分かりません」を表すフレーズは色々ありますが、I have no idea. は「何の考えもない」すなわち「皆目見当がつかない、全く考えつかない」の意味になります。いわば「お手上げ」のイメージです。
日本人が意外と間違いやすいのがall right あるいはokay の使い方かもしれません。「これ、頼むね」「OK」こんな会話はそこここであります。「あ、やってくれるのね。よかった。でも大丈夫なの?」。そんなときに案外出てくるのが Are you okay? 実はこれ、文字通り「大丈夫?」の意味になります。
もし、あなたが道端で転んでしまったら、そして膝から血が出ていたら、Are you okay? 「大丈夫ですか?」と聞かれるでしょう。「冷えピタ」を貼って仕事をしていたら、やっぱりAre you okay? と聞かれるでしょう。これは「けがしていないですか? 気分はどうですか?大丈夫ですか?」のような場面での質問になります。
Are you all right? も同じように使われますが、all right の場合はそれに加えて「とってもいいわけじゃないけど、何とか間に合う、ぎりぎりで大丈夫」のニュアンスもあります。転職した友人に How's your new work? 「新しい仕事はどう?」と質問をしたら It's all right. という答えが返ってきました。これは「まあ、何とかね(すごくいいわけじゃないけど)」のニュアンスになります。つまokayもall right も「絶好調!/最高!というわけではありません」ということになります。
Hang in there!
:D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は9月7日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。