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瀬戸内のハワイに移住 子育て世代、年商1億円起業も

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NIKKEI STYLE

「え、国内にこんな島があったなんて……」。訪れた人の多くがそうつぶやく、周防(すおう)大島(山口県)。その形から「金魚島」の愛称で親しまれる瀬戸内海ののどかな島です。

山口県柳井市と周防大島を結ぶ、全長1キロ強の大島大橋が完成したのは1976年。それまでは、本州への往復には航路を利用していました。船の便数が限られていたため、柳井市内の学校に通う子どもたちの中には下宿せざるを得ない子もいました。わずか1キロ先の対岸に見える町の明かりを、親御さんたちはどんな思いで見ていたのでしょうか。

この周防大島が今、注目されています。旅行の目的地だけではなく、働く場としても。現地に渡り、話を聞いてきました。

島のサテライトオフィスで子育てしながら勤務

周防大島は「瀬戸内のハワイ」とも呼ばれています。今から132年も前、1885年(明治18年)から「官約移民」として3913人もの島民がハワイに渡り、その子孫の多くが現在もハワイに暮らしているのです。こうした背景から、周防大島は1963年(昭和38年)にカウアイ島の姉妹島となりました。毎年、姉妹縁組を結んだ6月22日から8月31日の期間はアロハシャツを正装とする「アロハビズ」を実施しており、ホテル、銀行、役場でもアロハシャツでお出迎え。ちょっとしたハワイ気分を味わうことができます。

その島に昨年、東京の企業が拠点を開設しました。POSレジのシステムを開発するビジコム(本社:東京都文京区)の周防大島サテライトオフィス(周防大島町和田)を訪れてみました。

広々とした校庭。今にも子どもたちが走ってきそうな小学校の雰囲気をそのまま残した和田小学校跡地がビジコムのオフィス。校庭の横を通り、広々とした昇降口から中に入ります。廊下や教室、理科室、図書室などもそのままになっていますが、改装済みで清潔感があります。閉校したのは3年前で、昨年からビジコムがオフィスとして利用しています。

今年の6月に入社したばかりの社員、宮本明日香さん(35歳)に話を聞きました。0歳児と4歳児の子育て中の宮本さんは、東北の大学を卒業後、東京都内の会社に就職。東京、神奈川、埼玉暮らしを経て、夫の実家である山口県に移住しました。

「小さな子どもを育てていたため、仕事を見つけにくかったのですが、山口県若者就職支援センター(通称・YYジョブサロン)を通して、就職先を見つけることができました。運が良かったと思っています」

宮本さんは、これまでと同じようにオフィスワークに携われることに満足しているとのこと。業務は電子商取引(EC)サイトでの受注対応などが中心で、大変な部分もあるようですが、午後6時には仕事が終わり、残業はほぼなし。何よりオフの過ごし方が有意義になったといいます。

「移住前と今では、起床時間は5時半で変わりません。ですが東京では9時始業に合わせて子どもを預ける時間を逆算し、7時半には家を出て電車に揺られていました。今は9時20分に家を出て、9時40分に会社に到着です(笑)」。家の目の前まで保育園の送迎バスが来ることも幸運でした。生協も家まで来てくれます。

あえて問題点を挙げるとすれば、子どもが急病などになったとき。島の個人病院で対応できないときは、柳井市まで行かなければならないのです。

店が早くに閉まってしまうとか、大人の遊び場が少ないといった点は気にならないのかと聞けば「夜遊びしたいとも思わない。外に出たら真っ暗。星を見るぐらいしか、することが何もない。いつだって、東京では見られないほどの数の星が夜空に浮かんでいる。幸せです」。

ビジコムはサテライトオフィスの一部を一般に公開しています(午前10時-午後6時)。サテライトオフィス開設に興味がある人を対象に、必要に応じて説明も実施しているそうです。

こうしたサテライトオフィスの候補地は周防大島町の他、県内に合計40カ所ほどあり、開設する企業が徐々に増えています。山口県はこうした形での企業誘致に力を入れており、ビジコムはその1社目です。

「山口県では空き校舎や空き店舗などの遊休施設と全域で快適な通信環境を活用して、ICT(情報通信技術)関連企業などのサテライトオフィス誘致に取り組んでいます。『お試しサテライトオフィス』のご案内も行っています」(山口県総合企画部中山間地域づくり推進課交流推進班主査の深見康利さん)。山口市などの視察やお試し勤務ができ、交通費(視察の場合は宿泊費も)、オフィス賃料、機器リース料金、通信料、レンタカー料金などを県が負担するそうです。

深見さんによると、これまでに視察ツアーに参加した企業数は15社で、お試し勤務を実施済みの企業は5社。問い合わせ数も大幅に伸びているそうです。

島で起業 ワークとライフが融合した暮らしに豊かさ

周防大島で起業した人もいます。手づくりジャム専門店「瀬戸内Jam's Garden & Farm」を運営する松嶋匡史さん(45歳)が、島に完全移住をしたのは10年前のことです。

妻が周防大島で育ち、義父はお寺の住職。島は、温暖な気候を生かしたかんきつ類の栽培が盛んです。

「さまざまな条件の畑で、多くの人が多様な果物を作っている。その土地に合ったジャムが作りたい」

原点は、新婚旅行で訪れたフランス。ブドウなど土壌の影響を受けやすい果物が、育てられた土地や降水量、日照時間、風などの自然条件によって味が異なるというテロワール(フランス語で土地を意味する「テール」から派生した言葉)に心が動いたことでした。

「例えば、北斜面の畑で作られたはっさくは酸味が抜けない。ならば、レモンティーをイメージして紅茶で煮てジャムを作る。寒い日が続けばはっさくに苦味が出る。その苦味を生かして、チョコレートを入れて煮込む。そんなふうに、その時期に取れた果物の素材の味を生かして作ります」

旬の果物を使うレシピを考え、年間170種ものジャムを作ります。果実の栽培からこだわり、添加物は一切入れず、自然の甘みを生かすため低糖度で、少量ずつ小さな鍋で丁寧に作ります。10年前は8軒だけだった地元農家とのつながりが、現在は58軒にも広がっているといいます。

20平方メートルほどの店舗横にはカフェスペースを設け、季節のジャムを使ったスイーツやドリンクを提供。夏の人気は「ぜいたくフルーツソースかき氷」(980円)で、「添えられたジャムがかき氷に合う」と評判です。

10年前は4人だった従業員も今は30人に増え、昨年度の売り上げは約1億円。周防大島で起業した成功例の一つといえます。

「この島にしてよかったなと思うのは、地域を元気にしたいと考えている若者が多いという点、そして人の温かさ。みんなでワイワイと、新しい地域文化や事業をつくろうとするのは本当に楽しい。そんなメンバーに恵まれていることに感謝していますし、伸び伸びと子育てができる環境はすばらしいです」(松嶋さん)

松嶋さんは、義父、義母、妻、息子(13歳)、娘(8歳)の3世代6人暮らしです。毎日午後7時には家族全員で夕食を取ります。昼食も徒歩7分の家に戻り、夫婦で食事をしたり、昼寝をすることもあるとか。夜11時には就寝という規則正しい生活。家族と共に過ごす時間もたくさんあります。

地方移住のメリットをどう感じているのでしょうか。

「ワークライフバランスという言葉が近年盛んに言われますが、地方のように、職場と住居が近く、事業規模も自営業に近い規模の会社が多いと、それぞれが別物ではなくなってきます。つまり『ワーク』と『ライフ』が融合している暮らしです」

これをメリットと取るか、デメリットと取るかはその人次第だと言いますが「私個人としては、この融合に豊かさを感じています」。

移住の秘訣は「一人で頑張らない」

松嶋さんは完全に移住する前に、5年ほど準備期間を設け、定期的に島を訪れて事業や住居の下準備を進めました。移住後はできる限り地元の人と「会って」交渉をし、きちんと同意を得た上で物事を進め、信頼関係をつくっていきました。自身の利益に直接結びつかなくても、地域のためにできること(移住者を地域に受け入れる素地をつくる活動など)に率先して取り組んだと振り返ります。

周防大島を拠点に、大人・子どもを対象にしたキャリア教育プランのコンサルティングを行っている大野圭司さんは言います。「『どうせ田舎ではもうけられないんでしょ』を、『やっぱり田舎でも、稼げる。1億売れる』に変える。そういう事例を松嶋さんは作ってくれたといえますね」

松嶋さんとは家族ぐるみの付き合いで、出会いは12年前。松嶋さんのことを聞くと、最初は一人で頑張ろうとしていた部分があった、と話してくれました。「雰囲気もスタンスも違いました。でもだんだん変わっていった。柔軟になった。人と一緒にやっていかなければうまくいかないと気づいたのかもしれませんね。この島では一人でもうけようと考えたらまず無理です。過去にそういう移住者もおられましたが、1、2年でいなくなってしまった」

暮らしと仕事が重なった場だからこそ、人と助け合い、喜びも分かち合う。島暮らしを成功させるということは、「人と共に生きること」を真正面から理解していくことなのかもしれません。

最後に、移住に大切なことを大野さんにお聞きしました。それは「縁があること(地縁・血縁)」「力があること(諦めない力)」「愛があること(家族愛、土地への愛)」だそうです。

(ライター 大崎百紀)

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