もう戻れない着心地… 既製品価格オーダーシャツ3選
特集 秋にほしい最新ビジネスファッション 中編
まだまだ暑い日が続くが、衣替えシーズンを見据えて秋の身支度に取りかかりたい。ビジネスシーンでは昨今、オーダースーツの人気が高まっており、このトレンドはシャツにも波及しているという。そこで今回は、注目のオーダーシャツブランドを3つ紹介する。
スーツに続きシャツも「オーダー」が人気
前回の記事(「生地選びと採寸だけの簡易オーダースーツが人気」)で、スーツは体形に合っていることが大事だと説明した。これとまったく同じことがシャツにもいえる。パーソナルオーダースーツ&パターンオーダーシャツを手がける麻布テーラーのクリエイティブディレクター、上月剛氏は次のように話す。
「ビジネスウエアにおいて、スーツはもちろんですが、より体のラインの影響を受けやすいシャツもサイジングが重要です。スーツ、シャツともにオーダーすることで、正しいサイズバランスで着用でき、ビジネススタイルがより洗練されます」(上月氏)
正しいサイズがもたらすのは、見た目の良さだけではない。「スーツやシャツはサイズが大きいほうが動きやすい」と思っている人がいるかもしれないが、それは大きな間違い。たとえ細身であっても、自分の体形に合わせて仕立ててあるほうが動きやすく、体へのストレスが少ないのだ。
コストパフォーマンスの高いオーダースーツブランドが増えたことで、「オーダー」が注目されるようになった。その意識はシャツにも向く。
「従来のシャツは、スーツの下に合わせるインナーウエアとしての位置づけでしたが、クールビズの普及で、シャツにはアウターウエアとしての要素も加わりました。これによりシャツは、ビジネスパーソンのパーソナリティーをアピールする、重要なアイテムとして認識されたのではないでしょうか」(上月氏)
9月は気温が高い日も多く、ジャケットを脱ぐ機会が多い。体形にフィットしたオーダーシャツは、ジャケットを脱いだときの姿がサマになるのだ。
麻布テーラー/生地は約300種類を用意
麻布テーラーは、オーダースーツ&シャツをメインに、既製シャツや小物なども扱うビジネスウエアのセレクトショップ。オーダースーツがかつて持っていた古臭いイメージを払拭し、最新のビジネススタイルやドレスカジュアルスタイルを発信するブランドとして人気が高い。
麻布テーラーのパターンオーダーシャツは、肩幅や胴回りの調整など、一般的なパターンオーダーよりも多くのサイズ調整ができる。サイズデータを全店で共有しているため、一度作れば、出張や転勤時にも同じサイズでのオーダーが可能だ。
生地は約300種類と豊富に取りそろえている。兵庫県西脇市を中心とした地域で生産される綿織物「播州織」を用いたオリジナル生地や、形態安定生地、THOMAS MAISONやALBINIなどのインポート生地も多数取り扱っている。ボディースタイルも体形に合わせて選択でき、すべて本格的なドレスシャツ仕立て。スプリットヨークや、ガゼット、剣ボロの柄合わせなど、細部にもこだわった作りになっている。
「サイズはもちろん、ビジネスからカジュアルシーンまで、20代から60代まで、幅広い層からご好評いただいております。また生地やディティールを変えながらオーダーするという体験が気軽に楽しめると、リピーターのお客様が非常に多いのも特徴です。『一度作ると、もう既製品のシャツには戻れない』とのお声を多数いただいております」(上月氏)
KEI/コスパに優れたオーダーシャツ
普段使いの既製シャツと同程度の価格で手に入れることができる、KEI(けい)のオーダーシャツ。ハレの日ではない日常を指す「褻(け)の日」と、「衣(い)」を組み合わせたブランドネームが示すように、流通や生産に関わる中間コストを排除することで、ハードルの高かったオーダーシャツを4980円から提供している。
この価格設定にも関わらず、プラスチックより価格が5倍の「貝ボタン」採用。ボタンを留めやすくする「根巻き」や「鳥足掛け」、ゆとりや快適さをもたらす独自の「隠しタック」など、シャツをより丈夫で美しく見せるために細部や製法に徹底的にこだわっている。
約50種類から選べる生地はすべて綿100%で、なかにはめずらしいデニム生地などもラインアップしている。生地や襟、ボタンなど10箇所のディテールを選べ、900万通りのなかから自分好みの1着をオーダーすることができる。
実店舗をもうけておらず、初回からWebでオーダーする仕組み。採寸方法に従って行う「自己採寸」や、身長・体重など設問に答えるだけの「オート採寸」など、4種の採寸システムが用意されているのでデータ登録も簡単。約1カ月後に商品が届き、万が一サイズが合わない場合も、1度だけ無料交換してもらえるので安心だ。
「ビジネスパーソンに限らず、ファッション業界の方からもご支持いただいております。リピート率は毎月42~49%。2017年の6月には販売数量を大幅に超えてしまい、やむをえず約1カ月間の新規オーダーを停止させていただきました」(KEI 広報部 大石茂氏)
ラファブリック/オンライン発のオーダーブランド
ファッション×IT分野のスタートアップ企業、ライフスタイルデザインが展開するオンライン発のカスタムオーダーファッションレーベル「ラファブリック」。自社でデザイン・開発を行い、店舗をほとんど持たず、流通コストを最小限に抑えて、消費者に直接届ける「オンラインSPA(製造小売り)」と呼ばれる手法を採用し、適正価格の高品質なオーダーシャツを提供している。
オーダー初回は実店舗にて採寸。ラファブリックの店舗は商品を購入する場ではなく、サイズを採寸したり、商品に実際に触れたり試着したりすることを目的としているという。そして2着目以降はスマートフォン(スマホ)でもオーダー可能。一度店舗で採寸をして購入をすると、ラファブリックのクラウドデータ上にパーソナルサイズが登録され、2着目以降はオンラインで好みの生地やデザインを選ぶだけで、自分に合ったスーツやシャツを簡単にオーダーできる。
襟9種類、カフス6種類、ポケットやネーム刺しゅうのあり・なしなどが選べて、生地のバリエーションも豊富。綿100%の柔らかい着心地でありながら形態安定機能を持つノンアイロン生地や、吸水速乾性に優れたクールマックス生地など、機能素材のシャツも作れる点が魅力だ。
「売り上げは好調に推移しており、店舗数も秋ごろまでに6店舗ほどに拡大予定です。主な購買層は30代男性のビジネスパーソンで、『買い物に行く時間がない』『どこに買い物に行っていいか分からない』『買い物に行くのが面倒』『行ったお店で納得のいくシャツがない』といった方々に特にご好評いただいております」(ライフスタイルデザイン LaFabric PRチーム 谷崎拓哉氏)
前編 生地選びと採寸だけ 衝撃コスパの人気オーダースーツ
中編 もう戻れない着心地… 既製品価格オーダーシャツ3選
後編 休日もOK 伸びる、洗える、畳める高機能ジャケット
(ライター 津田昌宏、写真 野町修平=APT、スタイリング 宇田川雄一)
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