細かなサポートはIoTで 直販自動車保険の新潮流

日経マネー

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日本の損害保険は約9割が代理店を通じて契約され、保険会社が直接募集を行う直販は8%に満たない(保険会社が契約者から受け取る保険料から諸返戻金を差し引いた元受正味保険料ベースでの割合。下の円グラフ参照)。

代表的な直販であるダイレクト型自動車保険は認知度が高く、価格面でも優位。それでも、我が国でのシェアはまだわずかだ。

給与が伸び悩み、税金や社会保険料の増加で手取り収入が減少傾向にある昨今こそ、ダイレクト型保険は家計に好ましい選択肢。だが、対面でない(人の顔が見えない)ことからサービス面に不安を感じるとの声もある。「安かろう、悪かろう」では困るのだ。

ダイレクト型保険がより多くの人にとっての選択肢になるには、「価格+α」が必要。安さ以上に、どのような価値を契約者に提供できるかが問われている。

こうした中、「おとなの自動車保険」を販売するセゾン自動車火災保険が、IoT(モノのインターネット)を活用した新たな取り組みを2017年7月に開始した。ダイレクト型保険の今後の試金石にもなりそうなサービスであり、ここで取り上げてみたい。

ダイレクト型に持たれがちな事故発生時の不安を取り除き、日頃の安全運転にも役立つ機能を提供しようというもの。そこで用いられるのが「つながるボタン」だ。

契約申込時に希望すると配布される縦5×横3.5cmほどの小さなボタンをクルマに設置。併せて「つながるアプリ」をスマートフォン(スマホ)にダウンロードし、ボタンと連携させる。これで保険会社とつながり、サービスが受けられる。契約者本人だけでなく、被保険者に含まれる家族も無料でサービスを利用できる(ただしスマホを使っている人に限られる)。

事故時にすぐに『つながる』

事故が起きた際に冷静でいるのは難しい。しかし契約者は、慌てずにボタンを押せばいい。するとアプリ経由で位置・契約情報が保険会社に自動的に送られる。サービスセンターの担当者とスマホで話す時には証券番号や場所などが既に伝わっており、必要なサポートを素早く受けられるわけだ。

ボタンが衝撃を感知した場合には、契約者が押さなくてもアプリが立ち上がり、ワンプッシュで保険会社につながるようになっている。衝撃が一定程度より大きければ、保険会社側から連絡が来る。

またサービスセンターの担当者に依頼すると、事故現場に警備会社の隊員が駆け付ける(全国で利用可能)。24時間365日いつでも、安全確保や救急車の手配、事故状況の確認や現場写真の撮影、保険会社への記録連絡などで隊員のサポートが受けられる。

事故時に担当者とすぐにつながり、現場で受けられるこれらのサポートは、ダイレクト型保険に不安を持つ人にとって「価格+α」になり得るだろう。運転中の危険挙動などをチェックすることで、日頃の安全運転を支援するアプリ機能も利用できる。

安さだけではない、選ぶ意味のある付加価値を持ったダイレクト型保険の広がりに期待したい。

清水香
生活設計塾クルー。学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険に関するプロジェクトチーム」委員。

[日経マネー2017年10月号の記事を再構成]

日経マネー 2017年10月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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