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がん、医療保険の特約で備える 3大疾病に一時金 がん医療費に備える(下)医療保険の特約

2017/8/27

 土曜日の昼下がり、良男と幸子が近所のスーパーで買い物して帰宅すると、ダイニングテーブルで娘の恵がお茶を飲んでいました。くつろいでいるのかと思いきや、たくさんの保険のパンフレットを前に何度もため息をついています。思わず良男が声をかけました。

 良男 どのがん保険に入るか、候補は決まったかい?

  それがまだなの。厚生労働省によると、2015年の死因別の死亡数の割合は、がん(悪性新生物)が28.7%で一番多いけど、心疾患(15.2%)や肺炎(9.4%)、脳血管疾患(8.7%)という統計があるの。医療保険に入っている友人のことを思い出して……。

 幸子 医療保険は病気やけがで入院や手術をしたときの保障だから、がんで入院や手術をしたときも当然、給付金が受け取れるわ。そもそも医療保険のうち、がんのみを保障の対象にしたものが、がん保険だから、保険料は医療保険に比べて割安なの。一方、医療保険はいろいろな病気やけがを保障するから保障範囲は広いといえるわ。

 良男 そうなのか。私の医療保険の保障内容もどうなっているのか確認しないとな。

 幸子 医療保険の基本的な保障内容、つまり主契約は入院と手術よ。入院給付金は1日5000円や同1万円、手術給付金は入院日額の5倍、10倍といった額で加入するのが一般的ね。最近は日帰り入院でも入院給付金を受け取れる商品が多いけど、昔の医療保険は入院しても4日間は給付金がなく、5日目から受け取れるタイプが多かったの。10日間入院しても入院給付金は6日分ということね。

 良男 医療保険でがんに備えることもできるのかな。

 幸子 入院日数の短期化に伴い、入院給付金が出る日数の限度も30日、60日などと短くなっているの。とはいえ、厚労省の14年の統計では、がん患者の平均入院日数は約20日だから、医療保険の入院給付金でも対応できるとは思うわ。

  でも医療保険には、がん保険で一般的な、がんと診断されたら出る一時金「診断給付金」はないみたい。

 幸子 医療保険でがんに備える場合は、いくつか注意点があるわ。手術、放射線、抗がん剤を「がんの三大治療」と呼ぶけど、放射線や抗がん剤だけで手術をしない治療が増えているの。入院や手術をしないと給付金は出ないから、医療保険に特約をつけて備えておく必要があるわ。診断一時金や放射線治療、先進医療が代表的な特約ね。ただ、メディケア生命保険やメットライフ生命保険のように主契約で放射線治療を保障しているところもあるわ。

  医療保険のパンフレットでは「がん特約」っていう文字をあまり見かけないけど。

 幸子 最近は「がんのみ」の特約は少なく、がんに心疾患と脳血管疾患も加えた「3大疾病特約」が多いわ。「3大疾病診断給付金特約」であれば、がんと診断されたり、心疾患、脳血管疾患で入院したりした場合に一時金が受け取れるの。「延長入院特約」は主契約の入院給付金が30日限度でも、それを超えて長期入院した場合は、入院した日数に応じて給付金が受け取れるわ。ただ、入院日数が比較的長いのは脳血管疾患の約90日、慢性腎不全の約63日などだから、がんへの備えとして医療保険に延長入院の特約をつける必要は必ずしもないわね。

  ほかにはどんなところに気をつければいいの?

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

 幸子 がんとの診断が確定したり、心疾患や脳血管疾患で入院したりしたら、保険料の支払いが免除される「保険料支払い免除特約」はつけたほうが賢明ね。がん保険にもつけることが多いけど、医療保険はがん以外の病気も保障するから、保険料の支払いを免除された後、たとえば骨折で入院したようなときも給付金を受け取れるの。

 良男 がんになったうえにけがとは、あまり考えたくないな。ただ、がんになると以前と同じような働き方ができなくなり、収入が減ってしまう人もいるそうだから、保険料の免除後も病気やけがの保障が続くと、少しは気が安らぐだろうね。

 幸子 医療保険でがんに備えようとして特約を付け加えていくと、保険料負担は増すことになるけど、がん以外の病気やけがにも備えられるから安心感はあるわ。医療保険とがん保険の保障内容や保険料を比較検討して、納得できるかどうかが重要なポイントね。

  病気やけがで医療費がかかっても、高額療養費制度で自己負担額は限られるのよね。でも、がんの場合は保険適用外の治療を受けるかもしれないから、自己負担する治療費が高額になるイメージがあるわ。やっぱりがん保険にしようかな。

 幸子 最近の医療保険の傾向としては、がん保険と同じように、通院治療に保障の重点を置いた商品が出始めているの。厚労省の統計によると、がんを含むすべての病気の退院患者のうち、約8割が引き続き通院治療をしているわ。アフラックなどでは入院とその前後の通院を保障する医療保険を取り扱っているし、アクサ生命保険は9月から、外来手術と手術後の通院に保障を絞った医療保険を発売する予定よ。保障を絞ることで保険料も比較的割安になるから、こうした商品にがんに備えた特約をつける選択肢もあるわ。医療保険は今後も保障の重点が変わっていきそうだから、よく見極めることが大切ね。

 ■避けたい保険料の終身払い
 ファイナンシャルプランナー 松浦建二さん
 医療保険やがん保険でがんに備える際、最近はインターネットで契約すると保険料が割安な医療保険やがん保険がありますので、保障内容を比較検討して、よいところを選ぶのがポイントです。ただ、医療保険でがんに備えるには特約が必要です。放射線治療の一部には健康保険の適用外のものもあり、その場合の費用は全額自己負担になりますので、先進医療特約は付けておくといいでしょう。付加しても特約保険料は月額200円程度です。
 医療保険を選ぶ場合は保険料の払込期間に注意が必要です。保障が一生涯続く終身医療保険では、保険料の支払い期間も終身となる場合が多いのですが、老後の年金のみでの生活では、毎月の保険料支払いは負担になってきます。できれば65歳までに保険料の払い込みが終わるようにしたいものです。
(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞夕刊2017年8月23日付]

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