相続・税金

ぼくらのリアル相続

お墓は非課税財産 でも妻は一緒に入ってくれるのか 税理士 内藤 克

2017/8/25

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最近、あるクライアントの社長さんと雑談する中でお墓の話が出ました。その方は地方出身で次男。一人っ子である娘さんに最近お子さんが生まれました。

「社長、お孫さんのご誕生おめでとうございます」
「ありがとう、私もとうとうおじいちゃんだよ」
「何か実感はありますか?」
「そうだなあ。おじいちゃんになったら、急に墓のことを考えるようになっちゃって。先生も確か次男だったよね。墓は自分で建てるの?」
「はあ。子供の頃から毎年お盆に墓参りしているので、てっきりその墓に入るものと思っていましたが……。確かに分家なので、これから自分の墓を持つことになりますね」

というわけで、ちょうど墓参りを終えた方も多いであろう今回は、お墓と税金について考えてみましょう。

■相続税の計算上、お墓は非課税

まず知っておきたいのは、相続税の計算上は「お墓は非課税」だということです。相続税法第12条には、「次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない」として相続税の非課税財産が6項あげられています。

一 皇室経済法(昭和二十二年法律第4号)第7条(皇位に伴う由緒ある物)の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの
 ……といった形で六まで続きます。

最初に皇室の相続について述べられていますのでちょっと寄り道をしますと、皇室が所有する財産のすべてが非課税となるわけではなく、皇室経済法(聞きなれない法律ですが、相続税法の受験生であれば100%知っている名前です)に定義されている財産に限られています。したがって個人で所有されている別荘や有価証券などは相続税の対象となります。その結果、現在の天皇陛下は昭和天皇から約9億円の課税財産を相続し、麹町税務署に4億3000万円の申告納税をされたようです。

■先々まで考えないと墓はつくれない

さて、私たちに関係あるのは二の「墓所、霊廟、祭具」などの非課税です。

お墓は先祖代々継承するものであり、わざわざ相続対策としてお墓を購入するものではありません。しかし相続税法上の非課税財産として規定されている以上、現金で相続するよりも「お墓の形」で相続すれば節税になるのも事実です。もちろん、だからといっておいそれと建てられるものでもありません。

冒頭の会話のように、これまでの慣習から長男などの承継者が先祖代々のお墓に入り、次男はどちらかというと分家として自分でお墓を準備しなければならない場合が多いと思われます。この場合は理屈からするとお墓は増えていくことになります。一方、一人っ子同士が結婚した場合は両方がお墓の承継者に当たるため、片方のお墓には今後誰も入らないことになり、逆に「墓じまい」に至るケースも増えることでしょう。少子化の昨今では、割合としてはこちらの方が多いかもしれません。

また、最近は「夫と同じ墓に入りたくない」とか「夫の両親と同じ墓に入りたくない」という話もよく聞きます。当マネー研究所の「死んだ夫と『離婚』したい 義母の介護や遺族年金は?」の記事にもあるように、「死後離婚」の手続きをしたいというケースも増えています。こうなると単に「お墓をつくった方が相続で有利だから」だけではなく、将来にわたってその墓をどうしていくのかをよく考えてからでないと、墓はつくれないといえそうです。なにより「お墓は立派にでき上がったんだけど、カミさんはそこに一緒に入るのを拒んでいる」というのでは、笑い話にもなりません。

■純金の仏像は非課税になるのか

なお、相続税法で非課税となっているのはお墓に限らず、仏壇・仏具、神棚などの祭具も含まれます。国税庁のウェブサイトでは「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」と解説されています。ただしこれらは実際に購入したものに限られており、「時期が来たらいずれは購入するんだから、墓石屋さんや仏壇屋さんにその分を前払いしておこう」などというのは相続税の対象になります。これらは前払い金という財産(後でキャンセルすれば現金化できる財産)と考えられるからです。

そういえば最近、「純金の仏具を作りませんか?」という大手貴金属店の広告を見たことがあります。手のひらに収まるほどの純金の仏像が500万円ほどでした(仏像は金地金に比べて加工コストがかなり高いということですね)。この話題ではよく純金製のお鈴(おりん)も登場します。

相続税法には「純金製のものは祭具と認めない」とは書いてありませんので、理論上は非課税であり、これらを節税目的で購入している方も多いのかもしれません。ただ、問題は国税当局にどう見られるかです。日常的にそれを使って礼拝しているならまだしも、純金仏具をいくつも買って「高価だから」「盗難が怖い」と厳重に保管していたのでは国税当局も祭具とは認めてくれないでしょう。もし「転売目的である」と認定されたら、祭具ではなく骨董品として時価課税されるので注意が必要です。前述の国税庁のサイトにも「ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります」と明記されている通りです。

内藤克
税理士法人アーク&パートナーズ 代表・税理士。1962年生まれ、新潟県長岡市出身。97年に銀座で税理士・司法書士・社会保険労務士による共同事務所を開業。2010年に税理士法人アーク&パートナーズを設立。弁護士ら専門家と同族会社の事業承継を中心にコンサルティングを行っている。日本とハワイの税法に精通し、ハワイ税務のコンサルティングも行う。趣味はロックギター演奏。

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