マネー研究所

使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

iDeCoの金融機関選び 口座管理料だけで即決はダメ iDeCoで投資デビュー(6) オフィス・リベルタス 大江加代

2017/8/23

iDeCo(個人型確定拠出年金)の預け先の金融機関選びについては、多くの雑誌やコラムで「口座管理手数料が高いか安いか」が話題になっています。そのため、ややもすればこの口座管理料の額だけで金融機関を決めてしまいがちですが、60歳以降までつきあうパートナーですので、これから加入を考えるという方には「それ以外の条件」もしっかりチェックして決めていただきたいと思います。とりわけ意識していただきたいのは投資信託の運用管理費用(信託報酬)です。これも重要なコストであり、特に運用の結果に大きく影響するからです。

■信託報酬の差は長期になるほど拡大

投信というのは多くの人のお金を集め、それをファンドマネジャーなどの専門家が運用方針に従って株式や債券に投資し、収益を上げることを目指して運用するものです。われわれ投資家には自分の出した分に応じて、上がった収益が案分されます。

その運用に携わる人たちに支払うのが信託報酬です。運用をお願いしているわけですから支払うのは当然ですが、投信を保有している間、ずっとかかる費用ですから、投資家からすればその額は安い方がいいのは言うまでもありません。

例えば、国内株式に投資するインデックス型(パッシブ型)の投信で信託報酬が一番安いものは年0.1674%ですから、10万円の残高に対して投資家は年167円の信託報酬を負担することになります。ところが、iDeCoの商品の中には同じ国内株式のインデックス型投信なのに、年0.864%と5倍以上高い信託報酬を取る商品もあります。残高10万円なら864円で、その差は約700円ですね。iDeCoの場合、残高は徐々に増えていきますから、10万円のときには年間700円の差でも100万円なら7000円の差と、影響は徐々に大きくなっていきます。

ここで仮に、今30歳の人が月2万3000円を30年間拠出し続けたとして、信託報酬が0.1674%と0.864%の2つの商品で30年分のコスト負担がどれだけ違うかを試算してみましょう。全く運用益がない場合でも前者は約20万円、後者は約99万円となり、その差は実に79万円という大きさです。実際はこれに運用益によって残高が増える要素が加わりますので、差はさらに大きくなるはずです。コンマ以下の数字の差でも、長期だと影響が大きくなることがお分かりいただけたかと思います。

iDeCoナビ「手数料のランキングを見る」の画面

一方、口座管理料の差は年間4000円程度ですから、30年間でも最大12万円の差でしかありません。信託報酬は投信の財産の中から日々差し引かれるため気づきにくいのですが、iDeCoのように期間が長く、また金額が大きくなる場合には決して見過ごしてはいけない要素です。目に見え、違いが分かりやすい口座管理料だけで判断するのは禁物で、その金融機関が信託報酬の安い投信を扱っているかどうかも重要だということです。

筆者が関わっているiDeCoナビ(http://www.dcnenkin.jp/)の「手数料のランキングを見る」では、「国内株式」「外国債券」など運用対象ごとにコストの安い投信ベスト3と、それが買える金融機関を公表していますので参考にしてみてください(右上)。

ちなみに市場の値動きを上回ることを目指すアクティブ型の投信では、市場と同じ値動きを目指すインデックス型よりも信託報酬が高くなっています。アクティブ型は銘柄選びから最適な投資タイミングの調査分析まで、高いパフォーマンスをあげることを目的として動いており、そのためには人手もかかるからです。こちらはコスト以上に実際のパフォーマンスや、その背景にある運用方針・態勢などが重要になりますから、交付目論見書などを読み込んで判断できる上級者向け商品だと私は考えます。

■対面で相談できるか、資料は見やすいか

また、金融機関選びの判断基準としては口座管理料・商品の他にも、ウェブサイトやコールセンターなど様々なサービスの質があります。金融機関によって提供されるサービスはかなり異なりますが、主なポイントとしては、

(1) 店頭でも相談・対応が可能か
(2) パンフレット類が分かりやすいか
(3) コールセンターは聞きたいことを的確に説明してくれるか
(4) ウェブサイトが使いやすいか
――といった項目になります。

店頭でのサービスは、まだ全ての金融機関、全ての窓口で対応してもらえる状況にはなっていませんが、制度の簡単な説明や書類の受け付けなどであれば、各社とも徐々に対応できる支店を増やしつつあるようです。ちょっと分からないときに、対面で説明を受けられるというのは大変心強いサービスだといっていいでしょう。対面が安心という方は、お近くの金融機関の窓口が対応しているかどうかをまず確認してみましょう。

店頭でのサービスがない場合、困ったときに助けてくれるのはやはりコールセンターということになります。ところが平日夜や土・日にもコールセンターが稼働している金融機関は、現状では46社と限られます。平日にフルタイムで働いているという方にとっては、この辺りも重要なポイントになると思います(iDeCoナビの「お近くの金融機関を比較」にも関連情報があります)。

また、コールセンターやウェブサイトでのサービスを強みとしている金融機関は、それらのサービスを評価している「ヘルプデスク協会」(HDI)という機関の格付けを取得していますので、それも参考になります。

では今回のまとめです。口座管理料はそれなりに大事な選択基準ですが、比較しやすいがゆえにそれだけで選んでしまいがちな傾向があります。しかし、信託報酬などそれ以外の要素も重要ですし、人によって優先すべき判断基準は異なります。金融取引が初めての人にとって、いきなり1社に決めるのは相当ハードルが高いので、私は以下のような2段構えで金融機関を選ぶのがいいと思います。

まず、iDeCoナビのような比較サイトで数社に絞り込み、資料請求をします。そのやりとりの際に「他社よりも反応が速い」など金融機関の対応も分かりますし、届いた書類を全部見れば、どこが初心者にも易しいパンフレットを作っているかも分かります(A社よりB社の方が見やすくて好きだな、といったフィーリングも意外に重要です)。そのうえで、並んでいる商品を再度じっくり見て、買いたいものがそろっている会社に決めるのがいいのではないでしょうか。

いずれにしても、60歳までの長期にわたってお付き合いすることになるのがiDeCoの金融機関です。いろんな面を総合的に考えることが重要だろうと思います。

大江加代
大手証券会社で22年間勤務し、一貫して勤労者の資産形成に携わる。確定拠出年金については法の成立前から10年以上企業型の現場で関わり、のべ25万人に対する投資教育の企画・運営にも携わった。現在はオフィス・リベルタス取締役で、NPO確定拠出年金教育協会理事として情報サイト「iDeCoナビ」も創設。http://www.dcnenkin.jp/

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL