初心者の調理家電選び 大切なのは作業の「見える化」
「家事をまったくやったことがない男性でも、正しく家電製品を選べば必ず家事ができるようになる」。家電コーディネーターの戸井田園子さんはそう断言する。家事を家族に任せっきりだった男性は家事メンになれるのか。「掃除」「洗濯」「アイロン」に続き、今回取り上げるテーマは「炊事」。料理初心者が陥りがちなのは「メインとそのほかの料理が同時に作れない」という事態だが、戸井田さんによると、この問題はプロジェクト管理と家電選びで解決できるという。
料理には「プロジェクト管理能力」が必要
秋葉けんた(以下、けんた) 掃除・洗濯はうまくできるようになったので、いよいよ炊事にチャレンジしてみました。
戸井田園子(以下、戸井田) いよいよプラス家事(掃除や洗濯のように「元に戻す家事」ではなく、何かを作り出す家事のこと。記事「雑巾がけロボット掃除機の実力 部屋も片付く一石二鳥」参照)にチャレンジですね。
けんた ただレシピ共有サイトなどにあるレシピを作っているのですが、なかなかうまくいかなくて……。
戸井田 なにがうまくいかないのでしょうか?
けんた たとえば、「今日は豚の生姜焼きを作ろう!」とレシピを探し、それを料理します。説明通りにやっていけば、たしかに豚の生姜焼きは完成しますが、ごはんと生姜焼きだけでは物足りません。かといって、味噌汁やサラダを作り始めると、完成したころには生姜焼きが冷めてしまいます。すべての料理を同時に完成させたいんです。でも、それをやるにはどうすればいいかが、よくわからなくて。
戸井田 同じタイミングで料理を完成させるには、「プロジェクト管理」能力が必要になります。
けんた まるでビジネスですね。
戸井田 そう、「夕食作り」をプロジェクトだと考えるんです。まず必要な要素(主食、主菜、副菜、汁物)をリストアップします。次に、それぞれに必要な行為(準備、下ごしらえ、調理)を書き出して、それらをタイムテーブルの上に並べていく。そうすれば、どのタイミングで何をすればいいかが明確になります。図を作ってみると、わかりやすくなると思いますよ。
けんた なるほど。準備の後ですぐに調理を始めると、盛り付けのタイミングがあわないんですね。しかし、こうやってグラフにして「見える化」すると、僕にはごはんを土鍋で炊くなんてとてもできないなあ。俳優の向井理さんはごはんを土鍋で炊いているそうで、かっこいいなと思ったんですが(記事「向井理、モノは大事に ペンケース13年、マグ30年」参照)。
戸井田 プロジェクト管理になれていない人は、炊飯は炊飯器に任せたほうがいいですね(笑)。副菜は冷ややっこや漬物にすれば、調理の手間がかかりません。
家電を使い、作る料理は1つだけに
けんた そうなると、問題はお味噌汁と生姜焼きですね。
戸井田 そうです。お味噌汁と生姜焼きは同時に調理することになり、段取りが複雑になります。そこで、どちらかを家電に任せ、1つだけ作ればいいことにしてしまうんです。たとえば、(1)主菜を「オーブンレンジ」で作り、汁物をコンロで作る、(2)カレーやシチューなど、コンロ1つで済むものを作る――というように。
けんた なるほど……。でもオーブンレンジで主菜を作るとなると……グラタンとか、グリルチキンですかね。それはちょっと、ハードルが高いな。
戸井田 そんな料理初心者におすすめなのが「ぎゅうぎゅう焼き」です。準備は野菜やお肉、魚などを切り、角皿に並べ、オリーブオイルと塩コショウで味付けするだけ。これなら複雑な作業はないので、料理初心者でも安心です。後は、オーブンで焼けば完成。
けんた それは簡単そう。
戸井田 オリーブオイルの代わりに和ダシを使えば和風、ごま油を使えば中華風の味付けになります。
けんた 具材と味付けを変えれば、毎日、ぎゅうぎゅう焼きでもいけそうですね!
戸井田 さすがに毎日はちょっと……(笑)。週2~3回程度でしょうか。
ボタン一つ、細かな設定不要のヘルシオ
けんた ぎゅうぎゅう焼きを作るのにおすすめのオーブンレンジってありますか?
戸井田 「ビストロ」(パナソニック)は、同時メニューや時短メニューが豊富なのでおすすめ。「ぎゅうぎゅう焼き」もできます。ただ加熱時間(分数)を指定しなければなりません。
けんた 加熱時間ってよくわからないんですよね。
戸井田 だったら、その点が簡単なのは「ヘルシオ」(シャープ)。「カンタン焼き」機能を使えば、ボタン1つで調理スタート。食材に合わせて焼き加減を調整するので、分数を指定しなくてもバランス良く火が通り、失敗もありません。
けんた 今回は家電を買わなくて良さそう! じつは我が家のオーブンレンジは「ヘルシオ」なんです。うちに帰ったら、さっそくやってみますね。
ボタンひとつで豪華なおもてなし料理が完成!
けんた ヘルシオでぎゅうぎゅう焼きを作ってみました!
戸井田 どうでした?
けんた 調理が簡単だし、時間は準備を合わせて30分ほど。出来上がりもきれいで、妻は「お客様のおもてなしにも使えそう」と大喜びでした。ヘルシオが焼いている間にお味噌汁を作れば、ちょうど同じタイミングで完成。これで僕の悩みは解消できました。
戸井田 今回推薦したのはオーブンレンジでしたが、もし汁物を家電に任せたいのであれば、「オートクッキングブレンダー」(クイジナート)がおすすめ。材料を入れるだけで、ミネストローネやビシソワーズなどさまざまなスープが作れます。もちろん加熱なしモードで、フレッシュジュースやグリーンスムージー、フローズンドリンクなども作れるので、幅広く活用できますよ。
けんた 僕はカレーが好きなんですけど、カレーが作れる調理家電ってありますか?
戸井田 カレーなら、「ヘルシオ ホットクック」(シャープ)や「sirocaマイコン電気圧力鍋SPC-101」(シロカ)がおすすめ。これを使えば、カレーやシチュー、煮物などの汁物も作ることができます。
けんた なるほど、初心者は料理ごとに最適な調理家電を利用するのがポイントなんですね。
戸井田 その通り。土鍋一つでいろいろできるようになるのは、プロジェクト管理の達人になってからです。
けんた 仕事も料理もマルチタスクの道は険しいなあ。
(ライター 秋葉けんた=マイカ、監修 戸井田園子、イラスト 岡崎進矢)
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