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「君が1番」には反発 デンマークで学んだ幸せのコツ レア共同代表 大本綾氏(上)

2017/8/24

レアの共同代表の大本綾氏

 国連が実施する世界幸福度ランキングで上位に位置し、「幸福大国」といわれるデンマーク。国際通貨基金(IMF)が発表する1人あたりGDP(国内総生産)も日本より高く、人口約570万人の小国でありながら、玩具メーカーの「レゴ」やビール会社の「カールスバーグ」など、世界的に活躍している企業もある。そんなデンマークに「カオスパイロット」という名前の、ユニークなハイブリッド・ビジネスデザインスクールがあるという。「教育デザインファーム」を掲げるレア(埼玉県越谷市)の共同代表、大本綾氏は開校以来初の日本人留学生。彼女はなぜデンマークに渡り、そこで何を学んだのだろうか。(後編「リーダーは助けを求めよ デンマーク流の指導者研修」)

 私が友人と共同経営している「レア」は、教育デザインの会社です。レアとはデンマーク語で「学ぶ、教える」という意味。耳慣れない言葉かもしれませんが、デンマークには「文脈が異なると、教える人は学び、学ぶ人は教える。教育とは双方向で成り立つもの」という考え方があり、そこからとっています。

 勤務していた外資系広告代理店を辞め、デンマーク第二の都市、オーフスにある「カオスパイロット」に留学したのは2012年のことでした。カオスパイロットというのは、1991年に設立されたビジネスデザインスクールで、デンマーク国内で起業家を輩出し、08年には「ビジネスウィーク」誌で世界のベストデザインスクールの一つにも選ばれています。

■社会変革のためのデザイン思考を学べる場所

 大学時代、米国に留学していた私は当初、ビジネススクールといえば米国という先入観があり、スタンフォードなど西海岸にあるスクールを中心にキャンパスを訪ね、授業を見学させてもらったり、学生にインタビューしたりしていました。

 学びたかったのは経営に必要なメソッドというよりも、ビジネスを構築するために必要なデザイン思考のほう。いくつかデザインスクールも見学させてもらったのですが、学べる期間が短かったり、競争率が高すぎたり、作品集の提出を求められることが多かったりして、なかなかこれはと思うところが見つかりませんでした。

 そんなとき、デンマークにあるカオスパイロットのことを知りました。デザイン思考を3年間、みっちり学べる。しかも、それがビジネスや社会的課題の解決にも役に立つ。音楽家やスポーツ選手、NPO関係者、アーティストなど多種多様な人たちが集まっていて、在学生や卒業生たちが皆、家族のように温かい人たちである点も、魅力的だと思いました。

 カオスパイロットはその成り立ちもユニークです。背景には、1989年に起きた「ベルリンの壁崩壊」の影響があったといわれています。また、当時スウェーデン、ノルウェー、デンマークの北欧諸国は不況に見舞われ、若年失業率も高くなり、仕事を作り出すことが大きな社会的課題の一つになりました。そこで、いつ、何が起こるかわからないカオスな状態でも、自ら仕事を生み出し、パイロットとなってナビゲートできる人材を育てようと作られました。

 3年制で、1学年36人の少人数制が特徴。800人を超える卒業生のうち、約4割が起業家になっていて、約5割はなんらかの責任ある地位に就いています。起業家といっても米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏のような人物を思い浮かべると、少しイメージが違うかもしれません。傾向としては社会起業家が多い。たとえばリサイクルの素材でドレスを作り、収益の一部をマサイ族の女の子の教育に役立てるなど。様々な利害関係者と協働しながら、ビジネスを通じて社会的課題を解決していくことを志向する人が多く、どれだけ多く稼げるかに興味を持つ人はほとんどいません。デンマークで多種多様な起業家と接し、正解は一つじゃない、と知りました。

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