早稲田大学、合格者急減の怪 忍び寄る定員規制

早稲田大学の大隈銅像と大隈講堂(東京都新宿区)
早稲田大学の大隈銅像と大隈講堂(東京都新宿区)

若い人たちにおたずねします。あなたは「地元に残りたい派」ですか? それとも「都会に行きたい派」ですか? 都会派と答えた人には、耳に入れておきたいニュースがあります。政府が「東京23区の大学は、もう定員を増やさない」と決めたのです。

もともとは全国知事会から「東京一極集中を変えるため、大学の定員を規制してほしい」という声があがったのが始まりです。これを受けて政府は6月に閣議決定した「骨太の方針2017」に盛り込みました。来年にも文部科学省は規制する方針です。

首都圏には全国の学生の4割が集まっています。東京23区の大学の学生数は2010年から16年の間に約3万人増えました。志願者が10万人を超える私立大学も増えてきています。このまま若者が都心に流れては地方はたまらない、と知事らや政府は考えたのです。

実はすでに政府は、定員より多くの学生を入学させている大学の補助金を減らす、という手を打ち始めています。こうした動きを受けて、早稲田大学は17年度入試で合格者数を例年より約2000人減らしました。学生の立場から見れば、突然、入学が難しくなったといえます。

政府の姿勢には疑問の声もあります。「消えゆく限界大学」という本を書いた元教員の小川洋さんは「東京では土地の確保も難しいし、18歳人口が減っていく18年を前に、大幅に定員を増やそうという大学は少ない」と指摘します。さらに「東京23区の定員を規制しても、おこぼれが来るのは首都圏の大学だろう」と見ています。

私立大学も反発し、日本私立大学連盟は「必要なのは地方の雇用創出」という趣旨のコメントを出しました。学生を確保したいという経営上の本音もあるでしょうが、実際に首都圏に若者が転入するのは、10代後半が約5万人なのに対し、20代前半は約22万人。進学時よりも就職の時のほうが、地方からの流出は多いのです。

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『消えゆく限界大学』著者の小川洋さん「地域にファン