業界活性化へ「国産認証」 課題は知名度
よくわかる 国産ファッション(4)
人々が袖を通す服のほとんどが輸入品という現状に、百貨店や大手アパレルも手をこまぬいているわけではない(第1回「衣料品の国産率わずか3% 工程分散、産地の疲弊進む」参照)。業界団体の日本ファッション産業協議会は2015年から、国内アパレル・繊維産業の活性化のために「Jクオリティー」という認証制度を始めた。消費者に国産をアピールするだけでなく、国内の製造業を守る狙いがある。
第3回「下請け脱却へ工場直販 ファクトリーブランドに活路」、第5回「靴も眼鏡も国内回帰 機能・品質高め、価値を訴求」もあわせてお読みください。
4月26日に高島屋日本橋店(東京・中央)1階で始まったクールビズの特設イベント。目玉は「ハイブリッドシルク混ジャケット」。通気性が良く、1着290グラムと軽い。シルク50%、ポリエステル50%の生地だが、特殊加工を施すことで自宅で洗えるようにした。
高島屋が企画したこのジャケット。京都市で染色した絹糸を群馬県桐生市で織り上げ、山形県で消臭加工し、秋田県で縫製した。昨年企画した美濃和紙のジャケットと同様、Jクオリティーの認証を取得した商品だ。
素材から染色、縫製まで国内
Jクオリティーは素材、染色、縫製の3工程を国内で手掛ける商品を対象に認定する制度だ。業界活性化のために、日本ファッション産業協議会が15年2月に始めた。衣料品のほか靴下や寝具など、4月末時点で787社、約1250点が認定されている。16年10月に初めて開かれたJクオリティーアワードでは、三陽商会の「100年コート」がグランプリを受賞している。
Jクオリティーのタグがつけば国産をアピールしやすくなるが、審査は厳しい。冒頭の高島屋のジャケットも一度、細部に注文が入って差し戻された。秋田の工場と協力し、糸や針を変え、縫うスピードを遅くするなどして品質を上げ、ようやく取得できたという。
バブル崩壊、長引くデフレで消費者は低価格の衣料品を求めた。アパレル業界はより安い服を作るために中国や東南アジアに生産を移した。その結果発注が減り、より安い工賃を求められて疲弊したのは国内工場だ。経済産業省はこうした国内産業の衰退を懸念し、Jクオリティーを後押ししている。
認知度の向上が課題
課題は認知度だ。高島屋のセントラルバイヤー、藤井卓郎さんは「一般消費者にはまだ浸透していない。あと3年ほどすれば裾野が広がり、Jクオリティー商品の価値も上がってくるだろう」と話す。
消費者が服の産地やストーリーを大切にする傾向が強まってきた今は、認知度を高めるチャンスだ。世界的にも認められる国内工場の高い技術や雇用を守るためには、業界団体や国が一丸となってアピールをする必要があるだろう。
[日経産業新聞 2017年5月9日付を再構成]
第3回「下請け脱却へ工場直販 ファクトリーブランドに活路」、第5回「靴も眼鏡も国内回帰 機能・品質高め、価値を訴求」もあわせてお読みください。
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