下請け脱却へ工場直販 ファクトリーブランドに活路
よくわかる 国産ファッション(3)
縫製工場や織物工場が自ら衣料品ブランドを立ち上げる「ファクトリーブランド」が増えている。アパレルが立ち上げたブランドの生産を請け負うだけでは、工場の取り分は小さい。国産衣料品の販売不振が続くなか、自ら消費者を開拓し生き残りを図る。ネット通販の普及も追い風に、高い技術力と品質の良さが消費者に浸透してきた。
第2回「世界めざし生産改革 ベンチャー企業がIT活用」、第4回「業界活性化へ「国産認証」 課題は知名度」もあわせてお読みください。
日本のファクトリーブランドの先駆けの1つとされるのが、紡績・ニットメーカーの佐藤繊維(山形県寒河江市)が2001年に立ち上げた「M.&KYOKO」だ。米国の展示会に出展したところ日本のバイヤーから引き合いがあった。テレビ通販の「ショップチャンネル」で品質や開発のストーリーについて説明したところ、販売量が急増したという。
ネットビジネスが工場と消費者を直結
創業1936年の絹織物の老舗、クスカ(京都府与謝野町)。着物の販売不振を受け、2010年に絹の素材を生かしたネクタイづくりにかじを切った。価格は1本1万5000円前後。木製の機織りで織る生地の風合いが特徴だ。東京のセレクトショップ、百貨店、航空機の機内販売などで扱われて知名度が上がっている。
インターネットビジネスの発達で地方の工場と消費者が直結したことも、ファクトリーブランドを後押ししている。
ライフスタイルアクセント(熊本市)が運営する国産衣料品に特化した通販サイト「ファクトリエ」は、約45社の工場の商品を扱う。山田敏夫社長が自ら国内の工場を訪ね歩き、品質を認めた工場とのみ提携。スーツやカーディガン、シャツ、パンツ、服飾雑貨を企画し、それぞれの商品には「ファクトリエ・バイ・〇〇(工場名)」と記す。サイト上で工場の特徴や歴史、作業風景なども紹介して商品のストーリーを消費者に伝える。
品質と価格のバランスが強み
工場からの直販のため卸などを介さず、価格を低く抑えられる。百貨店に卸売りするアパレルメーカーのブランドの原価率は一般的に2割程度とされるのに対し、ファクトリーブランドは3~4割まで高められるという。品質と価格のバランスが強みとなっている。
ファクトリーブランドはデザインや価格設定もアパレルからの請け負いに比べて自由なため、工場の技術を思う存分、生かせる利点もある。
ワールドの製造子会社、ワールドインダストリー富山(富山県小矢部市)のファクトリーブランドは、徐々に色味を変える「グラデーション」の染色技術を使った商品を展開している。ファクトリーブランドのものづくりを通じて「積極的に若手社員に技術を伝えられる」(同社)という。
[日経産業新聞 2017年5月5日付を再構成]
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