売り上げじゃ、誰も納得しないね フローレンス駒崎氏
NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事(上)
NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事
地域や社会の課題解決を目指す「ソーシャルビジネス」への関心が年々高まっている。なかでも2004年に設立された訪問型の病児保育に取り組む認定NPO法人「フローレンス」(東京・千代田)は、10年以上その第一線を走る先駆的組織だ。「僕たちは、経営の未来を描いている」という代表理事の駒崎弘樹氏。「説明責任」「多様性」といった、今の働き方のキーワードをまじえて語ってもらった。
ソーシャルビジネスはマネジメントの未来
――フローレンスを立ち上げて13年です。株式会社に代表される営利団体と、非営利団体の違いはどこにありますか。
「ソーシャルビジネスと、一般のビジネスの一番大きな違いは、組織における『理念』の強度です。もちろん、企業にも理念はありますが、我々の場合はより強い。社会人になってから、酒の席ではなくパブリックな場所で『僕たちは何のために仕事をしているのか』と会話することは少ないと思う。そんな話を振ったら、『まあ大人になれよ、まず来月の売り上げを考えろ』といわれるのがおちでしょう。しかし、我々は仕事の意味や、その仕事をやることで何人助けられるのか、というのが価値の指標になります」
フローレンスは病児保育を手掛けている(フローレンス提供)
「働いている人たちは、金銭が働く動機になりづらい人が多いから、逆に非営利団体のマネジメントが難しいのです。給与やボーナスをあげるから働いてくれ、というようなコミュニケーションが一切できません。経営者が『事業の意味』をきちんと説明できなければ、モチベーションがあがりません。リーダーの説明責任が今まで以上に問われる時代ですが、我々はずっと、この点を強く問われてきました」
――売り上げの目標はあるのですか。
「ありません。目標は、どれだけの人を助けるか、です。結果的にそれが売り上げにつながるので、経営者は『売り上げはこのくらいになるな』とわかります。しかし、職員がその数字で一切動機づけされません。僕が『100億円のNPOになろう』と言った瞬間、みんなが『なぜですか、100億円の意味はどこにあるんですか、99億円との違いはなんですか』と質問ぜめにあいます」