――装いに気を配るようになったのはいつごろからですか。
「大学卒業後、1971年に渡米し、カリフォルニアにある現地の合弁会社に入社しました。アメリカでまず、東部の大手自動車メーカーから堀場グループの同社に移って来た幹部に『エグゼクティブたるもの、まずは身だしなみだ』と言われました。『まずカフス(カフリンクス)は絶対にしないとダメだ。袖をボタンで留める普通のシャツはブルーカラーの労働者が選ぶものだ』と」
「帰国後、渡米して彼らについてトップのお客さんを訪問するときにはまず普通のカッターシャツは着ていかない。『ちゃんと、カフスのシャツを着ろ』といわれました。それが20歳代後半、30歳代前半ですね。でも、カフス(をするドレスシャツ)というのは日本には当時売っていなかったため、無理してオーダーシャツをつくっていました」
――装いの中でも気をつけているのはやはりスーツですか。
「スーツは好きですね。気が引き締まるというか。着物でいうと帯をピシッと締めると、気が引き締まるということとよく似ていると思います。やはり朝、スーツをきちんと着ると、すぐ仕事モードに立ち上がるという感じがしますね」
「基本的にブランドは気にしていません。ただ、メーカーによって基本の体形が微妙に違うんですよね。英国やフランス系のものなども色々と試したのですが、私にはアルマーニ系がぴったり合います。私は日本人の平均よりちょっと手が長いんです。もちろん日本にも良いものがありますが、袖丈が私には短いんですよ。それと、少し胸幅があるので、日本製では胸回りがきつい。胸回りに合わせると今度はダボっとしたデザインになってしまう。やはり、イタリア製の方が私のサイズに合い、ピシッと締まってみえるデザインが気に入っています」
「体形は中学生の時に水泳をしていたからでしょうか。小学生の頃は背の順で並ぶと、前から何番目かというくらい小さかったですが、成長期に水泳をして急に大きくなりました。父(堀場製作所創業者の故堀場雅夫氏)も中学高校時代にラグビーをしていて体格がよかったですね」
「スーツは30着から40着くらいあります。ただスーツもはやりがあって、最近困っていることはズボンが細くなってきていることです。持っているズボンはみんな今のトレンドに比べるとちょっと幅広なんですよね。スーツは今までもある程度のピッチで買っていましたが、ここにきてちょっとピッチを上げています」
(聞き手は平片均也)
後編「服装もマネージできずに、人をマネージできますか?」もあわせてお読みください。
「リーダーが語る 仕事の装い」は随時掲載です。
SUITS OF THE YEAR 2021
アフターコロナを見据え、チャレンジ精神に富んだ7人を表彰。情熱と創意工夫、明るく前向きに物事に取り組む姿勢が、スーツスタイルを一層引き立てる。