「下流老人」「老後貧乏」「老後破産」。そんな言葉をタイトルにした書籍や雑誌を書店などでよく見かける。様々な要因から悲惨な老後を送る人が増えており、その状況を反映したものだ。これらは現役時代に安定した収入を得ていた人でも、一歩間違えば下流に転落する可能性を示唆している。自分らしい老後に備えて準備するのが「終活」であるなら、元気なうちからこうした状況に陥らない術を考えておくのもその活動の一つだろう。
夫婦仲良く、経済的にメリット
下流転落を防ぐ最初の手立ては、ありきたりだが「夫婦仲良く」だ。長年生活を共にしてきた配偶者とは夫婦関係を維持することが重要だ。DV(ドメスティックバイオレンス)などの被害があれば別だが、基本は離婚しないこと。「離婚すると多くのケースで男女ともそれ以前より生活水準が下がる」と指摘するのは、離婚問題に詳しい行政書士の藤原文氏。
近年はともにフルタイムで働く夫婦は増えているが、中高年世代では妻が専業主婦やパート主婦というケースも少なくないだろう。別れたからといって生活費が半分になるわけではなく、水道・光熱費などはそれぞれかかるのでコストは割高になる。「特に女性にとっては経済的なデメリットは大きく、生活保護などの公的援助がないと生活していけないケースもある」と藤原氏は続ける。
一般に離婚の際の金銭的な取り決め事項は、(1)財産分与、(2)慰謝料、(3)養育費、(4)年金分割――の4つ。財産分与は結婚期間中に築き上げた財産を分配する。(2)の慰謝料は離婚理由で最も多い「性格の不一致」などでは通常発生しない。(3)は子どもが小さければきちんと決める。
問題は(4)の年金分割。配偶者の年金すべてを折半してもらえると勘違いしている人が多い。だが分割されるのは厚生年金のみ。国民年金や企業年金は対象外なので、ずっと自営業で会社勤めをしたことがない配偶者などには分割する年金がない。しかも分けるのは全体のうちの婚姻期間の部分だけ。厚生労働省の統計では年金分割でもらった額の平均は月に約2万7000円。当てにしていた人にとっては決して多くない金額だろう。
会話を通じて関係の再構築を
第一生命経済研究所が60歳以上79歳以下の男女600人に、「現在の配偶者と離婚したいと思ったことがあるか」をたずねたところ、男性では60.4%が「考えたことはない」と答えたが、女性では29.4%にとどまり、7割以上の女性が離婚を考えたことがあるという結果になった。男性にとってはショッキングなデータだろう。