老後の「下流」転落防ぐ 夫婦で無理なくできる対策は終活見聞録(11)

また、「配偶者を信頼しているか」との問いに対して「信頼している」と答えた人の割合が、男性では68.4%に上ったが、女性では39.2%にとどまり、30ポイント近い開きがあった。このギャップについて同研究所の小谷みどり主席研究員は「夫婦間のコミュニケーション不足が原因」と分析する。夫婦仲良くを維持するためには、会話を通じた関係の再構築が必要になってきそうだ。

第一生命経済研究所

行政書士の藤原氏は「熟年世代ではモラルハラスメントが離婚理由になることもよくある。夫から妻に対するケースが多い」と話す。モラルハラスメントは言葉や態度などで相手を傷つける精神的な暴力や虐待をいう。「稼ぎもないくせに」「何もできないくせに」「俺の言うことを聞いていればいいんだ」などが典型例。料理について「まずくて食えない」とか、相手がミスした際にする舌打ちも該当するという。

ちなみに妻から夫へは「稼ぎが少ない」「私の人生こんなはずじゃなかった」など。言い返せずに心を病んでしまう人もいる。会話の体をなしていないので、心当たりのある人は注意したい。一般に女性に比べて孤独に弱く、コミュニティーをつくるのが苦手とされる男性にとっては、夫婦仲良くは精神面でも効果が大きい。

その一方で、夫婦には適度な距離感も必要になる。現役時代に家事全般を妻に頼っていた夫は身の回りのことを自分でできるようにすることも必要だろう。年をとれば円満夫婦もいずれは1人になるときがやって来る。核家族化が進んだ今は、夫婦2人だけの世帯が多く、どちらかが亡くなれば1人ぼっちになってしまう。一般に男性の方が先に亡くなる傾向があるが、もちろん逆のパターンもある。どちらにしても生活力がなければ下流に転落してしまうリスクがある。周囲には、助けてもらったり、相談したりできる人間関係を築いておきたい。「老後は『金持ちよりも人持ち』になることが必要」と第一生命経済研究所の小谷氏は話す。

長く働くために健康面にも配慮

2つ目は「長く働く」ことだ。夫も妻も、フルタイムでもパートタイムでも仕事を持っているなら、長く働くことが経済的な安定につながる。「フルタイムの場合、現在は60歳で定年という勤め先が多いだろうが、60歳以降も雇用延長や再就職で働き続けたい」とファイナンシャルプランナー(FP)の八ツ井慶子氏は話す。

厚生労働省の「高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」(2012年)では、何歳まで働きたいかについて、「65歳まで」とする人が男性で28.8%、女性で25.9%と最も多く、次いで男性は「70歳まで」(21.4%)、女性は「60歳まで」(21.6%)となっている。老後に必要な蓄えは2000万円とも3000万円ともいわれるが、長く働いて収入を得ることで、この蓄えの取り崩しの額やスピードを減らすことができる。さらに勤め先の厚生年金に加入して働くことができれば、年金の受取額を増やせるほか、会社の健康保険にも加入することになり、様々なメリットを受けることができる。

厚生労働省「高齢期における社会保障に関する意識等調査報告書」

「長く働くにはまずは健康が重要」と話すのはエッセイストの岸本葉子氏。健康や老後の問題をはじめ、日常生活の様々なテーマで文章を綴る岸本氏は40歳でがんを患ってから、生活習慣の改善に取り組んだ。食生活では肉や脂ものを減らし、魚や野菜中心に切り替えた。食材選びでは添加物にも注意する。「購入する際は表示を見て、カタカナやアルファベットが多いものは選ばない。表示が多く長いものも避ける。産地もチェックして国産を選ぶようにしている」と言う。これまで摂ってしまった食べ物については仕方ないが、これからでも食生活には気を配りたい。運動も適宜必要だろう。こうした生活習慣の改善で将来、認知症や要介護状態になるリスクを減らしたい。

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