どんぶり一面の唐辛子 台湾ラーメンは名古屋の名物?
辛いもん(1)
今回からテーマは「辛いモン」になった。が、いただいたメールの大半は前回のテーマ「冷たいモン」関連である。いつものことだから仕方ないか。
あと、市販のカップの豚汁には一味(七味かな)がついていることがあるため、普段の我が家の食事でも味噌汁には七味をかけませんが、豚汁だけにはかけます(キューブ@愛知さん)
あの店に限らず、台湾にはない台湾ラーメンは真っ赤っかの唐辛子が付き物である。現代日本の明るく正しい日本人なら「口の中や唇がヒリヒリして、少しの間会話をする気もおきません」という状態になるのである。私は名古屋に行った折、あの店の前を通ったが鼻と口をハンカチで覆っていたにもかかわらず、店から漏れてくる刺激性のガスのために目が涙で濡れたのである。
もっともあのときは赤味噌ところてんを食べに行く途中だったので、最初からちょっとうるうるになっていたという事情もあったが…。
カップ豚汁の七味で思いだした。「サッポロ一番みそラーメン」にはどうして七味の小袋が入っているのだろうか。ラーメンならコショウのような気がする。味噌だから七味?
デスク乱入 味噌だから七味!
私は辛いものが得意じゃないんですが、その時は多少は酔っ払っていてその食べ物がオクラに見えたんでしょうね、味噌をつけてかじると辛い辛い。最初は味噌が辛いと思って、味噌をつけずにそのオクラもどきを思いっきりかぶり! その直後はなんともないんですけど、しばらくしたらやってくる何とも言えない辛さと渋柿を食べたときに口の中に広がる不気味な感覚の合わせ技で酔いも吹っ飛びました。
いったいあの食べ物はなんだったんだろ? 辛いもの大好きなデスクさんならこの正体が何であるかわかり、また食されたこともあろうかと思いますが、私にはきつすぎました。その後、30分くらいは辛くて辛くて、せっかくの焼肉の味も忘れてしまうくらい強烈でした(明渡@奈良県さん)
オクラみたいな緑の殺意の正体は知りたくもないが、このように不必要に辛いものを食べさせると何の罪もない善良な市民がひどい目に遭うことは、以上のメールを読んでいただければ明白であろう。
明渡さん、かわいそかー。
デスク回答 それは「青トウガラシ」ですね。焼肉屋さんでは焼肉のつまとして出てくるケースがあります。ツマミとして味噌をつけて出すお店もあります。注文するとたいがい「辛いけど大丈夫?」って聞かれますが、確かに辛いです。ちょこっとかじって、ハヒハヒで、酒をぶわーーーーっと飲むという食い方になると思います。酔いが覚めるのではなく、悪酔いするツマミです。
野瀬 これから緑の刺客と呼ぶ。
配られてしばらくすると、社内の各所から「ぬおー」とか「うがー」とか、断末魔のような悲鳴が聞こえてきます。そう、そのあめ玉の中にはトウガラシがしこたま内蔵されていたのでした。
それまでの人生でも、それからの人生でも、これだけ辛いモンに出合ったことはございません。万が一このあめ玉が日本の流通ルートにのるような事態が生じたなら、ここは食品衛生法ではなく、薬事法か毒物及び劇物取締法の監視下に置かれるべきです(みなみ@神奈川さん)
テロ? 違う? 国際刑事警察機構(インターポール)案件?
デスク反論 いえ、「愛」です。
のどあめと間違えてこれをなめた場面を想像しただけで倒れそうである。
有名になって今でこそ食堂らしい店になりましたが、十数年以上前に店開きした直後は、数人座ると一杯になる小さなカウンターのみの店で、四川スープを作る際のすごい唐辛子の香りが客席に流れ込み、空気に当たるだけで顔が火照るような感覚を味わいました。
そのころ、取材に行った大阪松竹芸能の若手お笑いさん数人が食べて、一人がお腹を壊して寝込んだという伝説付きです(大阪の原さん)
文末に「私は好きです」と書いてあったが、犠牲者まで出ているのでその部分は削除した。原さんは、麺をすするとガスでせき込むようなものをなぜ好きなのであろうか。どうして? なぜなの?
以上、おわかりのように、大多数の日本人は身の回りに意味もなく存在する辛いモンの暴力と生存を賭けた戦いを日夜繰り広げているのである。ジエーケンの行使である。
デスク反論 いや、それは過剰ボーエイである! ジエーケンはあくまで攻撃に対するジエーであって、先制コーゲキは許されないのである。そもそも辛いモノを食べない野瀬さんにはジエーケンはないのだ!
辛いモンが好きというメールは見事に1通も…デスク黙ってなさい…いいから、そのメールは来なかったことにするんだから…そのメールも気が付かなかったことに…だって紹介したくないんだもん…いいじゃん…わー、何するの。
わかったよ。そこまで言うのなら仕方がない。いやいやながら紹介する。
私は呉名物「冷麺」を食べる時はたっぷりコショウをかけてこの酢をひたひたになるまで加えてます。飲みにくい皿ですが、三々九度の盃の様に飲み干しています。ちなみに通年メニューです(うえぽんさん)
ああ酢漬けの唐辛子ですね。あれは私も大丈夫。酢の力によって殺意が無力化され、香りだけが残っている。牛ばらご飯にはこれ。デスク、銀座のあの店に連れてってあげるね。
デスクうふふん僕はいつもおかゆにたっぷりあれをかけて食します。ちなみにそのお店、父の代から通っております。
朝っぱらから、やや舌ヒリヒリですが、気持ち好く清々しく1日をスタート出来ます!
むしってる時はグリーンで可愛い、しかしNo Mercyに小粒でピリリな実山椒の辛さ。赤い殺意に弱い野瀬さんは、この辺いかがなもんでしょうか? やっぱり苦手ですか?
ちなみに画像の容器は人気駅弁『越前かにめし』のを日常再利用(中林20系中林52さん)
実山椒はOKよ。山椒ちりめん大好きよ。
私が敵対しているのは赤いヤツ。次いで黄色いヤツ。緑のヤツは例の刺客を除くとまあまあ友好的なのである。ワサビ大丈夫、実山椒大丈夫、柚子コショウも少量なら大丈夫。
デスク再反論赤いヤツ、を差別するな! 僕は赤いシャツを着るぞ! ゴルフクラブのヘッドカバーはタバスコ型を通すぞ! タバスコはハバネロ倍辛を愛用するぞ!
いずれにせよ京都人はうどん、そばは言うに及ばず、お漬けもん、菜っぱの炊いたん、味噌汁、焼餅と何にでも七味をかけてたべます。
町なかには老舗の七味やさんが何軒もあり、中には原料をバラ売りしてマイ七味をブレンドしてくれるお店も残っております。
そして、七味で物足りない人のためには一味(要は唐辛子の粉だけ、ってことですね)も、カレーのように各段階の辛さが充実しているのです。
ということで、「日本一辛い黄金一味」その他を送らせていただきますが、どうぞ死なないようにくれぐれもご注意ください(いけずな京女44歳さん)
うどんで思いだした。富士宮やきそば学会の渡辺会長が久留米に見えたとき、いっしょにうどんの店に行った。渡辺さんはテーブルにあった赤いヤツをどっさり丼に入れて食べ始めたが、間もなく「辛くてだめ」と言いつつギブアップした。
特に意味はないが、うどんやそばに赤いヤツを用いる場合は十分に注意したいものである。
(特任編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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