住まいの土地選び、思わぬ落とし穴があちこちに建築家・一級建築士 米田耕司

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市街地で通勤に便利な土地を探したいと思っています。メディアでは、公共の用地に廃棄物などが埋設されていて、契約や売買価格などにも不透明な経緯があったとされる問題が報じられています。また、更地を買ったら、以前の建物の基礎や浄化槽の残骸があったという話も聞きます。あとで思わぬ出費が出ないようにするためには、どのようなことに注意して土地を探したらよいのでしょうか。

書面と現地の両面から確認

「マイホームを建てるために、住みたいエリアを想定し、よい環境の便利な土地を探す」。理想的な家づくりのスタートです。しかし、現実は既成の市街地での更地の売却物件は限られます。また、必要な住まいのスペースを確保できる土地と建物の予算配分を考え、自身で適切な計画をつくれる人はまれかもしれません。生活のために土地と建物を購入することは大きな投資でありながら、様々な難しい問題も潜んでいます。

住みたいエリアを決めたら、インターネットなどで不動産物件の概要や、地図などでそのエリアの概要をつかみます。ただ、気に入った土地に飛びつく前に、その場所の安全性についても考えてみる必要があります。たとえば「中古物件は人が住んでいたのだから、土地も安心だろう」と思っていると、以前の住居の基礎や付属物が残っていて除去費用がかかったり、海や川の河口付近を埋め立てた土地であれば、軟弱な地盤のために地盤改良や杭(くい)を打たないとコンクリート構造や木造の3階建てが建てられなかったりします。のみならず、地震時に液状化の恐れがある場合もあります。

また、新しくつくられた造成地では、山を削って谷を埋めたために固い地盤と軟らかい地盤が隠れていて、上記と同様に地盤の対策費用をかけないと建物が傾くこともあります。ほかにも、坂の下で道路が冠水しないか、水害の履歴がないかなどに注意が必要です。役所のウェブサイトで周辺の地盤調査のデータやハザードマップなどを閲覧することもできます。このように物理的な視点から土地を見ることは重要です。

これから土地探しを始めようとする人は、書面と現地の両面から調べていく必要があります。その具体的な方法は後述するとして、まずは身近なトラブルの例を紹介します。

■事例1 アパートへの建て替えが難しい
自宅を取り壊して収入源としてアパートに建て替えようと思ったところ、路地状の敷地部分の幅や長さに制限があり、2階までしか建てられないうえ、私道なので給水管やガス管の取り換えに地主の同意がいることもわかりました。

この事例は、土地購入の際、将来の土地利用について道路や土地の形状などから建築の用途や階数などが制限されることや、私道であるために面倒な制約があることを考慮していなかったことが原因です。法律による規制やデメリットなどは購入前に納得できるまで遠慮せずに説明を受けましょう。

■事例2 地中埋設物が発見された
中古住宅付きの土地を買って解体して更地にしたところ、以前の建物の基礎や浄化槽と思われるコンクリートの地中障害物が出てきました。これが分かったときにはすでにハウスメーカーと請負契約を結んでいました。見積書には地中障害物について「除去費用は別途」という特記事項があるため、追加費用を請求されました。

これは意外によくある事例です。既存の建物の解体工事を必要とする場合は、購入前に売り主に前の建物の基礎の構造や付属物が何であったかを確認するとともに、契約前に数カ所の地盤調査をするか、解体業者が確実に撤去を行っているかを現地で立ち合ってチェックすることが必要です。

■事例3 ドアが自然に開いてしまう
建売住宅を購入したところ、しばらくしたらドアが自動ドアでもないのに勝手に開いたり、ひとりでに閉まったりする部屋があることに気づきました。おかしいと思って床にゴルフボールを置いたところ、コロコロと転がります。

この事例ではその後、専門家に調べてもらったところ、床や壁に許容限度を超える傾きがありました。また、土地の地盤調査のデータによると、軟弱な土地のため地盤改良の対策をしていたにもかかわらず傾いています。結局、売り主の瑕疵(かし)担保保険で地盤改良をやり直し、傾きを直すことができましたが、解決までに大変な時間がかかり、精神的な不安も被りました。購入前に地盤調査のデータを見せてもらい、どのような対策が講じられているか、床や壁の傾きがないか調べてみることも必要です。

■事例4 擁壁のある住宅が傾く
傾斜地の途中の擁壁付きの土地を購入して家を建てました。ところが、完成してしばらくすると庭の一部が陥没し、擁壁の方向へ建物が傾いていることが分かりました。
盛り土の部分が崩れるのを防ぐために設ける擁壁。写真のコンクリート部分=PIXTA

現地調査の結果、原因は斜面地を造成して平らにする場合に盛り土の部分が崩れるのを防ぐために設ける「擁壁」(写真参照)をつくる際、土を掘った後の埋め戻しを考慮せずに家を建てたためと分かりました。杭または地盤改良が必要であった例です。購入前に地盤調査を行い確認することが大切です。

以上の2~4の事例では、地形や見えない地面の中に原因が隠れていて、後で思わぬお金がかかった場合や生活に支障が生じた事例です。契約の前に売り主や役所のウェブサイトなどで確認するほか、地盤調査のデータを第三者の建築士に見てもらってアドバイスをもらうと良いでしょう。

■事例5 大雨が降るとトイレがあふれる
丘陵地の坂下の道路の交差点に隣接する場所に半地下で3階建ての住宅を購入しました。集中豪雨の時に半地下の床上に雨水が浸入し、トイレからも水があふれ出ました。

原因は公道の排水管の容量を超える雨水が谷の交差点に集中したために敷地からの排水ができなくなり、逆流してあふれ出したものでした。ポンプを設置するなどの対策は施したものの、不安が完全になくなるわけではありません。雨水が集中した場合、傾斜は緩やかでも、谷下の土地では冠水や排水の逆流が起こりうることを頭に入れておく必要があります。

■事例6 床下に水がたまる
3階建て建売住宅を購入したところ、洗面所がかび臭く、壁のクロスが黒ずんできたので、売り主に連絡を取ったところ、半地下の床下の基礎の上に水がたまっていることが分かりました。原因の一つであった基礎の穴を塞ぎ、床を張り替えましたが、しばらくしてまた洗面所とトイレの下に水がたまりました。第三者の専門家に依頼して調べてもらったところ、海に近くて地下水位が高く、これを見越したコンクリートの継ぎ目の防水対策をしていないことなどが原因と分かりました。

第三者の専門家のアドバイスを受けながらコンクリートの継ぎ目に止水工事を行い、床下への浸水は抑えることはできましたが、地下水位が高い場所に半地下を設けることは不安要素です。河川、海、湖沼など水の近くは警戒しましょう。

宅建業者による重要事項説明は契約の基本事項ですが、建築に関する具体的、技術的なことは自分でネットや役所に出かけて調べる方法のほか、住宅を設計する人が決まっていれば依頼して調べてもらうのが安心です。できれば第三者の設計の専門家(建築家)に地質や地盤の概要の調査と併せて、どのくらいの規模の住宅が建てられるか、法令による制限の確認とライフライン設備など総合的な敷地調査を依頼されることをお勧めします。その際、確認すべき項目を下の表にまとめました。参考にしてください。

米田耕司
建築家(日本建築家協会登録)。一級建築士事務所米田耕司建築研究室主催。建築相談委員として長年、市民の建築相談を受ける。紛争解決にも取り組むようになり、弁護士会などで講演経験も多く、法曹界との親交も深い。私的鑑定書作成や公的機関の紛争処理専門委員などの経験が豊富。東京都世田谷生区生まれ。趣味は、音楽、フライフィッシングや卓球など。
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