伊藤:グローバル人材を育てるのはすごく難しい。研修だけでは育たない。例えば、業績の悪い小規模な会社のトップを任せるなどして、経営人材に育成するという方法もあると思うが。

西井:確かに研修だけではダメで、ビジネススクールのMBA(経営学修士)ホルダーだからといってその人材が優秀なのか確信は持てない。その場合はプロジェクトを任せるのがいいと思う。考え方や価値観の違う人たちをうまくまとめて、事業を進められるかどうか、そこを見ると、経営人材としてやっていけるかどうか分かる。

一橋大学大学院の伊藤邦雄特任教授

伊藤:経営人材は、グローバルな市場、環境をよく理解して、成長のためにM&A(買収・合併)など様々な提携戦略も駆使しなくてはならない。さらに新たな要素として人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)などをうまく活用しなくてはいけない。具体的にどう育成しているのか。

事業部長80人とヘトヘトになるまで討論

西井:味の素グループには執行役員が40人おり、加えて約80人の事業部長クラスの「タレント」と呼ばれるリーダーが存在する。彼らの視点や意識を引き上げるように育成している。まず40人の役員とは毎年、合宿をやっている。イノベーティブなテーマを対象に、チームを編成してみんなで討論し合い、将来の事業につなげてゆく。その前提となるAIやICTに関しては専門家をその都度招いて、役員と情報を共有している。

次に約80人の事業部長クラスの幹部に対して3月に3日間連続のプレゼンテーションのイベントを開いている。新規事業とか、様々なテーマを決めて各個人に20分程度、プレゼンしてもらい、私をはじめとした経営メンバーが多くの質問を投げかける。3日間缶詰めで討議し、こちらもヘトヘトになるまでやる。

伊藤:西井社長の考える経営人材の要件とは何か。

西井:冷凍食品分野の役員をやっていたときに120人ぐらいの部下がいた。その時の研修で、リーダーの役割というのは、ハシゴを登るのではなく、どこにハシゴをかけるのかだと教わり、腹に落ちた。そして誰に早くハシゴを登ってもらうか、そのハシゴを誰に支えてもらうのか、それを決めるのがリーダーの仕事だと考えた。評価して改善する。それをとにかく回すことが重要だと認識し、組織を整備した。42~43歳の頃から15年間、そんな役割を担ってきた。

トップの360度評価、まずブラジルで挑戦

私はブラジル法人で2年間トップをやったが、実はその時に新たな試みもやった。ブラジルの現地法人の社員と、日本の本社の経営メンバーなどを対象に私の360度評価をしてもらった。ここはいいけど、ここはわかりにくいとか、本音の声を教えてもらった。

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