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「民泊」先進地、大阪の熱気と不安 外国人2割が利用 住民から騒音など苦情、円滑な対応がカギに

2017/9/26 日経MJ

SEKAI HOTELは共通のフロントを設置し近隣住民の信頼を得ている(大阪市此花区)

一般の住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」の先進地の一つ、大阪市。2016年10月に国家戦略特区として先行解禁され、いまや関西を訪れる外国人旅行者の2割が利用しているといわれる。一方で近隣住民とのトラブルは絶えず、違法な民泊に対する取り締まりも強まっている。民泊は18年に全面解禁される予定だが、自宅の提供をやめる人も出てきそうだ。

今年6月に大阪・西九条に開業した「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」。近隣に点在する空き家5棟を改装して宿泊を受け付けており、8月はほぼ満室。今秋も予約は埋まってきており、8~9割の稼働率になる見通しだ。近隣の住民の不安を解消するため共通のフロント施設を設けているのが特徴で、将来は住民向けに英語や中国語の語学教室を開くことも計画している。

民泊予約サイト運営の百戦錬磨(仙台市)は7月、自社運営としては初の民泊専用マンション「SJ大阪セントラル」(大阪市西区)を開業した。1棟丸ごと借り上げて、44室を特区民泊に申請。1部屋1泊1万円から。稼働率は8割と順調な滑り出しを見せている。

大阪市は民泊の先進地だ。大阪府(独自の保健所を持つ大阪市などを除く)では16年4月、大阪市では同10月に特区民泊が解禁されたが、府への申請は17年の8月1日時点で6件、市への申請は235件。いかに市内に集中しているかが分かる。

大阪市で民泊が活発なのは訪日外国人客が多いためだ。大阪観光局が17年に実施した調査によると、関西国際空港から入国した外国人旅行者で民泊を利用すると回答した割合は約2割だった。訪日旅行で利用した韓国人男性(31)は「住民と話せるリビングがある民泊に泊まった。現地の生活も垣間見え、料金も安く満足」と魅力を話す。

だが民泊に対する近隣住民の不安は根強い。大阪市には特区開始から今年3月末までに、部屋でばか騒ぎする騒音などを理由に、2817施設から苦情が寄せられた。同市は特区を利用して民泊を提供する場合、地域住民への説明を求めているが、説明会が紛糾することもある。

セカイホテルが開業前の今年1月に開いた住民向け説明会では「宿泊客が騒いで眠れなくなったら責任は取れるのか」「火事が起きたらどうするのか」と質問が相次いだ。24時間の電話対応やフロントの設置などを確約したものの、「理解を得るにはかなり丁寧な説明を求められた」と運営責任者の山岡啓一朗氏は振り返る。

苦情への対応は、個人の手に余る。土日や海外出張に行く時のみ自宅で民泊を行ってきたという女性会社員(29)は「苦情対応までやる時間はない」と継続に否定的だ。一方で民泊の利用者の間からは「企業が運営するホテルのようなものばかりになると面白くない」(韓国人男性)との声があがる。

旅館業法上の許可や特区の認定を受けていない「違法民泊」も横行している。厚生労働省が昨年末に政令指定都市などで無作為に物件を抽出して実施した調査では、違法民泊の割合は98%に達した。大阪市は取り締まりを強化しており、今年3月末までに違法な722施設に対して営業停止を指導した。

民泊は18年に全面解禁される予定だが、住宅民泊事業法(民泊法)では営業日数は年180日以内と定められている。それを踏まえ、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」は営業日数が180日を超える民泊の掲載を拒否する方針だ。

「彼女との同居をきっかけに自宅のマンションを民泊として貸し出し始めた」という違法民泊を運営する男性会社員(27)は、マンションの賃貸契約が切れるタイミングで引き払いを決めた。「宿泊人数にもよるが、月20日は稼働しないと赤字になる」と説明する。

運営者、利用者、住民それぞれの立場の理解がどこまで深まるか、まだ課題は多い。

(菊地悠祐)

[日経MJ2017年8月11日付を再構成]

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