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私の履歴書復刻版

「献金は個人で」 政治オンチとの批判も 第4代経団連会長 土光敏夫(30)

2017/8/24

清貧ぶりと無私の姿勢で「メザシの土光さん」と慕われ、1980年代の行政改革の先頭に立った土光敏夫氏(どこう・としお、1896-1988)の「私の履歴書復刻版」。石油ショックで低成長時代に突入し、土光経団連には様々な問題が降りかかってきます。政治献金問題、商社批判、公害問題……。中でも土光氏が取り組んだのはエネルギーと資源の問題でした。

■エネルギー問題――石油節約、待ったなし “突貫作業”で政府に意見書

石油ショックの不況は、各企業の努力によってなんとかのりきったが、その他にもまだまだ並行して、問題は次々にやってきた。まずはじめは、昭和49年(1974年)8月、「経団連は、政治献金の金集めの代理業はやらない。そもそも献金は個人レベルでやるべきである」との私の発言をめぐって事態が紛糾した。「土光は、財界の金をバックに自民党を恐喝している」「あいつは政治オンチだ」などときめつけられたりした。私は、保守党が正道を歩んでもらいたいがために、正論を吐いたつもりで、いささかも私心はない。この問題は、結局いろいろ悶着はあったが、窓口の再編成によって決着した。

その他、商社批判、公害問題、消費者運動など、対処すべき問題は山ほどあった。が、この時代、私が一貫してとり組んだのは、エネルギー、資源問題である。

エネルギーといえば、なんといっても石油である。石油危機の到来に遭遇したのであるから、これが最大関心事になるのは、当然の理であろう。しかも、エネルギーは、経済にとっても、国民生活にとっても、最重要問題だ。

またエネルギーを考えれば、しぜん、資源をいかに確保するかの問題にも突き当たり、技術開発、原子力、それに貿易、産業構造、社会構造のあり方にまで波及する。極端にいえば、国の施策すべてが、エネルギー問題に関連するといっていい。

51年(1976年)12月、三木内閣が福田内閣に変わった。ひとつここで、福田内閣に、わが国のエネルギー問題に関して、思うところを吐露し、進言してみようという気になった。そこで、エネルギー関連の3団体で意見書をまとめ、52年(1977年)1月11日、提出、3月にこれを推進するためのエネルギー関連業界トップ会議を設けた。

意見書作成にあたっては、資源エネルギー庁が示した長期ビジョンをもとに、対策はいかにあるべきかを検討した。かなり短期間であったが、経団連事務局を中心に関係団体の協力を得て調査、研究した。かつて事務局がこれほど“燃えた”ことはないであろう。

当時の長期ビジョンによれば、わが国の第一次エネルギー消費量は、昭和60年(1985年)には石油換算7億トン、同75年(2000年)には11億トンということであった。ただし、失業が出ない程度の経済成長率(5~6%)を維持し、節約を全産業7~11%実施すればという条件が付いていた。

仮にこのビジョンを実現するとして、節約について、どのように新しい技術を開発し、設備を導入するのか、また当時は、210億ドルという外貨(全輸入額の36%に当たる)を石油のために払っていたが、輸出面での摩擦をどう解決してこの外貨を獲得するのか、60年になって7億トンもの石油を確保できるのかどうか、脱石油への対策はどうするのか――等々、不備や疑問点が多々あった。そこで、総合的なエネルギー対策を早急に立てるよう、政府に進言したのである。

ところで、現在、その結果をみれば、石油危機後、民間企業がなし遂げたことは、奇跡でさえある。たとえば、エネルギー節約の号令がかかった翌年から、大ざっぱにいえば年約10%ずつ石油消費量を節減していった。50年に3億キロリットル以上だったのが、53年に約2億6000万、55年は2億4000に減じている。

鉄の生産でいえば、従来1トン作るのに37リットルの重油を使っていたのが、石炭への転換によって、トン当たり半分以下の14リットルに下げ、現在は高炉も8割は重油を使わない。セメント産業に至っては、ほとんど重油を使用しないようになった。消費財にしても、テレビ、冷蔵庫など、驚くほどの省エネルギー型を工夫した。

省エネルギーについては、産業ばかりでなく、むろん、国民一般もそれに協力した。ちょっと、このような国民社会は、世界に類がないであろう。私は、日本国民の勤勉性と合わせて、改めて称賛と敬意を表し、その一員であることを誇りに思うものである。

この連載は、昭和57年(1982年)1月に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」および「私の履歴書 経済人 第20巻」(日本経済新聞出版社)の「土光敏夫」の章を再掲したものです。毎週月曜日と木曜日に更新します。2012年、日経Bizアカデミーで公開した記事を再構成しました。文中には今日では不適切とされる表現や行為の記述などがありますが、作者が故人であり、作品の発表された時代的・社会的背景も考慮して、原文のまま掲載しました。

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