急成長のハンドメード市場 リアル充実で次ステージへ

「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より
「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より

出店したクリエーターは約5000人、来場者は発表になっていないが昨年並みの約5万4千人。2017年7月22~23日、東京・お台場の東京ビッグサイトで開かれた「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」は、熱心に作品を探すグループ、出店者と楽しそうにおしゃべりする人、屋上でランチしながら音楽ライブを楽しむ家族連れなどで終日にぎわった。このイベントを主催したのが、日本でのハンドメード・マーケットプレイスをけん引してきたCreema(クリーマ)だ。09年3月に設立、資本金約9.74億円、従業員数50人の注目成長企業だ。

「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より

この5年で急成長を遂げたインターネット上のハンドメード市場だが、現在は次の段階に進み始めたようだ。ポイントは「リアルとの融合」と「プロの優遇」だ。

「ハンドメード・マーケットプレイス」とは?

なじみのない読者のために解説をすると、ハンドメード・マーケットプレイスとはインターネット上で個人が直接、手作りの作品を売り買いできるシステム。やり取りされる作品は、アクセサリーのような小物からテーブルなど家具のような大物、服、パンやケーキなどの食べ物など多岐にわたる。

2005年に米国ニューヨークでEtsy(エッツィー)が誕生し、日本では2010年にクリーマが登場した。その後、博報堂グループのiichi(イイチ)やGMOグループが運営するminne(ミンネ)などが誕生している。日本における市場規模は8906億円(ホビー白書2015年版)との推定もあり、近年急速に伸びた市場だ。

クリーマのサイト

ここまでハンドメード・マーケットプレイスが大きくなった背景には、受け手と送り手双方の意識の変化がある。みんなが知る人気ブランドよりも手作りの一点ものが「すてき」と考える価値観の変化、同時に趣味でモノを作っていた人たちが送り手になれるとわかった意識改革だ。こだわりのものを大切に使おうという人と、一生懸命つくった作品を知ってもらいたい人がつながった。受け手と送り手の境目、アマとプロの境界があいまいになっているネット時代の象徴ともいえるビジネスだ。

現在では数十万人がクリエーターとして自分の作品を出店し、出品されている作品数は数百万にのぼるといわれる。作品はアクセサリーやファッション雑貨、家具やインテリア雑貨などが多い。クリエーターは無料で出品でき、売買が成立すると手数料が運営企業に入る仕組みが多い。

急速に伸びたハンドメード・マーケットプレイスだが、その将来性を危惧する声も出ている。参入企業は一時20社以上あったが、現在は10社ほどに減っている。淘汰が進んでいる上に、最近ではメルカリなどのフリマアプリの急伸で、取り巻く環境も変化しているからだ。その中で、日本最大級のハンドメード・マーケットプレイス企業クリーマはすでに新しい事業に取り組み始めている。そこを見ると、ネットビジネスの将来も見えてくる。

クリーマが取り組む「リアルとの融合」

クリーマが現在力を入れているのが、リアルな売り場の開拓だ。

17年に5回目を迎えたのが、冒頭で紹介した「ハンドメイドインジャパンフェス」。ビッグサイトの西ホールすべてを使い、全国のクリエーター約5000人が出店していた。入場料は前売り1200円、当日1500円。

「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より

会場で感想を聞くと、出店者からは「せっかく来たからにはたくさん売りたい」、来場者からは「実際に作品を手に取れるのがいい」という声があった。その一方、「ネットで知っていたクリエーターさんに会えるのがうれしい」「1年に一度会えるのを楽しみに来た」という感想も聞こえた。商品のやり取りを超えて、人と人のつながりの「場」が生まれているのを感じた。屋外スペースではキッチンカーが並んで飲食が楽しめたり、ステージでは「コトリンゴ」や「トクマルシューゴ」らの音楽のライブが楽しめたりするなどフェス気分を盛り上げていた。

クリエーターとのふれあいも楽しみの一つ。「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より
ライブも楽しめてフェス気分。「ハンドメイドインジャパンフェス 2017」より

同様に、関西ではインテックス大阪で約2万人を集める「クリーマクラフトパーティー」を毎年1月に開催している。ほかにも、東京・丸の内では三菱地所と組んで「丸の内ストリートマーケット」をほぼ毎月実施、ハンドメード作品から産地直送の野菜まで70店舗以上が並ぶイベントを実施している。さらに、東京・新宿のルミネ新宿店にセレクトショップ「クリーマストア」を常設し、2週間ごとに約25名のクリエーターが入れ替わりで作品を売っている。店舗はクリーマの社員によって企画運営がなされている。

「丸の内ストリートマーケット」より

インターネットの特性を生かしたからこそ成長したトップ企業が、リアルとの接点を持つことで次のステージを開拓しようとしている。米国でアマゾンがリアルの書店をオープンさせ、高級スーパー「ホールフーズ」を買収した姿がかぶって見える。ネットとリアルの融合は時代の必然のように感じる。

戦略その2は「プロの育成強化」

初めは主婦のお小遣い稼ぎ感覚で広がったハンドメード・ネットビジネスが、プロの自立を支える方向に進み始めている。

クリーマでは、16年11月からプロもしくはプロを目指すクリエーターを対象にセミナーを始めている。内容は販売拡大につながる出品方法やプロモーション施策、人気作品の売れ筋データの紹介などだ。参加費は1000円。このセミナーを通して、持続的な活躍を後押ししたいという。また、すでに実績あるクリエーターのモチベーションをアップさせるために、売り上げが大きくなるにつれ成約手数料を下げるという仕組みも導入した。通常は12%の手数料が3カ月合計で9万円を超えると9.5%、さらに21万円以上になると8%に下がる。

この動きはアマチュア向けだけではない。昨年から全国各地で「逸品」と称される工芸品などを作るクリエーターや職人を応援しようと「全国いいもの発見プロジェクト」をスタートさせた。第1弾は長野県岡谷市の「岡谷シルク」、第2弾は岡山県倉敷市の「岡山畳縁」。昔からあった伝統の素材と技術を現代的にアレンジして製品化、クリーマが積極的にプロモーションしていく。

さらに、17年9月9~10日には福岡県糸島市で「クリーマクラフトキャラバン」の第1弾を開催する。東京にいて待つのではなく、各地のすてきなものを見つけるために“旅”に出て新しい作り手と出会うのだという。ものづくりを通じて地方創生を支援するものだが、全国の作り手を直接応援する姿勢を明確に打ち出している。

流通業の基本は「安く仕入れて高く売る」こと。だが、競争相手が増えると独自性が薄れ価格競争に陥りかねない。米国の映像配信ビジネスが、ネットフリックス、アマゾン、Huluらがこぞってオリジナル作品制作に注力しているのも、そうした背景があるからだ。クリーマの取り組みは合理的な挑戦であると同時に、競争激化を予感させるものでもある。

クリーマは「本当にいいものが埋もれてしまうことのないフェアな世界を創ろう」という理念が始まった会社だ。売り上げや利益などが明らかにされておらず、実態は見えない部分もあるが、その取り組みにはネットビジネスからコミュニティー作りまで、参考になることが多い。今、注目すべき企業だ。

品田英雄
日経BP総研マーケティング戦略研究所上席研究員。学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当する。87年日経BP社に入社。記者としてエンターテインメント産業を担当する。97年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任する。発行人等を経て現職。著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。
マーケティング戦略研究所

日経BP総研マーケティング戦略研究所(http://bpmsi.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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