月額1000円の子供向けスマホ 夜間は自動で操作禁止
MVNOで格安スマホを手がけるトーンモバイルは2017年7月25日、子どもをメインターゲットとしたAndroidスマホの新製品「TONE m17」を発表した。「子どもにスマホを持たせたいが、使える時間やアプリを制限したい」と考える保護者の要望を受け、あらかじめ設定した時間帯はスマホを使えなくする機能を標準で盛り込んだ。
料金プランは、月1000円でデータ通信が無制限で利用できる「シンプル1プラン」のみ用意する。データ通信の速度は500k~600kbpsと遅いが、2年目以降も同じ料金で使い続けられる。初期設定などの店頭サポートや電話サポート、コールセンターによる遠隔サポートなどのサポートサービスは無料で提供する。
TONE m17の価格は3万4800円で、17年8月1日に発売した。
親と子が話し合って「契約書」を作成
トーンモバイルの石田宏樹社長は「昨今のスマホ市場を見ると、契約者の純増数はMVNOがMNO(大手キャリア)を上回る状況となっている。MVNO自体も、2016年だけで実に400社以上も増えた。だが、過剰な競争で業者ごとの違いが見えづらくなってきている。明確な差異化の戦略が必要だ」と危機感を示した。そこでトーンモバイルは、スマホの普及率がまだ30%台と低い小学生の子どもにターゲットを当てることにした。
30代の子育て世代の読者が多い女性誌「VERY」(光文社)と手を組み、「中学生になるまでは夜10時から朝6時までスマホは使えないようにする」という基本ポリシーを設定。端末の利用者設定で入力した生年月日から利用者が12歳以下だと判断した場合、毎日夜10時から朝6時まではスマホが使えなくなるよう自動で設定される(登録した保護者への発信は可能)。そのうえで、保護者の了承のもとに曜日やアプリごとに使えない時間を変更できるようにした。
ユニークなのが、利用制限の変更に「親子スマホの約束」という契約書を模した専用の用紙を用いること。用紙を前に親子で相談しながら、利用を許可するアプリの種類や使える時間を書いていけばよい。記入が済んだ用紙をスマホカメラで撮影すると、記載した内容を読み取ってスマホの設定に自動で反映する仕組み。利用を許可したアプリは、スマホに導入できるようになる。設定が終わった用紙は廃棄せず、ふだん目に付くところに掲示することで、「一緒に決めたルールだから不満を言わず守ろうね」という啓蒙効果も狙う。
子どもの行動を保護者がチェックする機能が充実
利用時間制限以外にも、保護者が子どもの行動やスマホの利用をチェックする機能を充実させた。学校や塾、友だちの家など、よく行く場所に出入りした際に保護者のスマホに通知を送る「ジオフェンス」機能や、学校や塾などスマホを使うのが好ましくない場所ではスマホをロックして使えなくする派生機能「ジオロック」機能だ。
今後は、NFCタグを内蔵したシールを用いた「お知らせシール」機能も導入する。自宅の玄関などに貼ったシールにスマホをかざすと、保護者のスマホに通知を送ったり電話をかけたりできる。子どもが帰宅したことを手間なく通知する、といった用途を見込む。お知らせシールのサービス開始時期は未定。
子どもの1日の行動やスマホの利用状況をまとめたレポートを毎日送信する機能も用意する。子どもが移動した経路や歩数が参照できるほか、利用したアプリの種類や時間、インターネットの閲覧履歴などが1~2分で閲覧できるよう見やすくまとめられている。
タフネススマホ並みの「TONE m17」
TONE m17は、富士通と共同開発したオリジナル端末。取り扱いが荒くなりがちな子どもが使うことを見込み、1.5mの高さからコンクリートに落としても画面の破損を防げる堅ろう設計を採用した。液晶パネルや背面パネルにはキズが付きにくい素材を用いた。水深1.5mの水中に沈めても浸水を防げる防水性能を備えたほか、スマホが汚れてもハンドソープや洗剤で洗い流せるようにした。格安スマホでは珍しく、おサイフケータイやワンセグ放送の受信に対応する。液晶パネルは5型、1280×720ドット。
今回発表したTONE m17は小学生を対象としたモデルだが、同じハードウエアでシニア層を対象とした派生モデルを投入する計画があるという。「通信速度は遅いが月額1000円で使いたい放題」は、外出先でスマホを使い込むことがそれほど多くはない小学生やシニアに響きそうだ。
(日経トレンディネット 磯修)
[日経トレンディネット 2017年7月27日付の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界