『ワンダーウーマン』 美女戦士、ブームを呼ぶ理由
2017年夏映画のラストを飾り、8月25日に日本公開される『ワンダーウーマン』。日本での人気が拡大しているアメコミ映画のなかでも、 異例ともいえる、女性スーパーヒーローを主役に据えた作品だ。米国では今夏最大のヒット作となり、一大ブームを呼んでいる。人気の理由は大きく2つ。華麗なアクションとコミカルな要素だ。
米国では、スーパーマン、バットマンに次ぐ人気を誇るとされる、DCコミックの美女戦士・ワンダーウーマン。コミック初登場は1941年ながら、単体での実写映画化は本作が初めて。彼女の生い立ちや原点が描かれる。
人間社会から隔離されたパラダイス島で、女性だけのアマゾン族が暮らしていた。彼女たちは外部からの敵に備え、弓矢や剣の訓練を日々積んでおり、プリンセスのダイアナ(ガル・ガドット)もその1人だった。ある日、飛行機が島周辺の海に不時着。ダイアナはパイロットのスティーブ(クリス・パイン)を救出する。時は第一次世界大戦末期、スティーブはイギリス軍のスパイで、ドイツ軍が開発した毒ガス爆弾の製造法が書かれたノートを入手していた。世界を救うため、ダイアナはスティーブとともにロンドンへ向かう…。
一足早く公開された米国では、興行収入が4億ドルを超え、17年の夏映画最大のヒット作に。13年の『マン・オブ・スティール』から始まった「DCエクステンデッド・ユニバース」(同じ世界観を有するDCキャラクターの映像作品)でも最大のヒットとなった。また、アメコミでは珍しい女性スーパーヒーローものである上に、監督も女性のパティ・ジェンキンスが務めており、女性監督による実写版映画の歴代興収記録も更新した。
ダイアナを演じるガル・ガドットは、イスラエルでモデルとして活躍した後、『ワイルド・スピード MAX』(09年)のジゼル役でハリウッドデビューした。ジェンキンス監督はガル・ガドットをこう評する。「私はガルに会ったことがなく、ザック・スナイダー監督が『バットマンVSスーパーマン』(16年)でワンダーウーマン役に起用したと聞いたときには不安でした。でもガルの演技を見始め、実際に彼女に会ったら、チャーミングさや心の温かさ、そして強さに圧倒されました。私はキャスティングにとてもこだわるのですが、私が加わる前に決まっていたのが、ガルであることが信じられないくらい幸運だと思っています」
本作の大ヒットのポイントは大きく2つ挙げられる。1つは、華麗かつ迫力のあるアクションシーン。普段はチャーミングだが、ひとたび戦闘モードに入れば剣や縄を巧みに操って敵をなぎ倒し、ブレスレットをかざすことで弾丸を弾き飛ばすなど防御にもたける。
「世の中で正しいことをしたい」と願う女性に育てられたダイアナ。彼女は、人々と触れあいながら徐々にリーダーシップを発揮し成長していく。彼女の純粋さが表れているのが、ドイツ軍とこう着状態になっているベルギーの前線をダイアナたちが訪れた場面だ。大勢の兵士が傷つき、街を破壊された人々は途方に暮れていたが、スティーブは「全ての命は救えない」と前線を去ろうとする。だがダイアナは「見て見ぬふりはできない」と単身ドイツ軍へ向かっていく。「一番こだわったのは、ブレスレットで弾丸を防ぎながら、戦場を突き進むこの戦闘シーンです。彼女にとって最も重要な瞬間の1つで、自分にどんな力が備わっているかに気づきますから」(パティ・ジェンキンス監督)
もう1つのポイントは「笑い」だ。これまでの「DCエクステンデッド・ユニバース」の作品はややダークな印象があった。だが、『ワンダーウーマン』は笑えるシーンも多く、映画にメリハリをもたらしている。ダイアナにとって初めての人間世界、ロンドンでは数々の失敗を繰り広げ、スティーブとのコミカルなやりとりも多い。「クリスのユーモア感覚は、ダイアナとスティーブの関係の大きな部分を占めています」(ガドット)
11月に公開される『ジャスティス・リーグ』にも登場するワンダーウーマン。まずは彼女の原点を見ておきたい。
(ライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント! 2017年9月号の記事を再構成]
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