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ナショジオスペシャル

動物たちを記録して守る「写真の箱舟」 絶滅する前に

2017/8/20

ナショジオスペシャル

ナショナルジオグラフィック日本版

危急種のジャイアントパンダ。米国アトランタ動物園で撮影。中国政府の調査によると、野生のパンダは2013年末時点でわずか1864頭だった(JOEL SARTORE/NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

世界の人口が倍増した1970年から2012年の間に、大型の野生動物の個体数は半減した。生物資源の量を数値化した「生物量」という指標で見ると、現在、陸上の脊椎動物の生物量の90%以上は人間と家畜で占められている。野生の哺乳類では大型のものほど絶滅のリスクが高まり、体重15キロ以上の肉食動物の59%、100キロ以上の草食動物の60%が現在、国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト」に名を連ねている。IUCNでは、特に絶滅の危険度が高い生物種を「近絶滅種(Critically Endangered)」「絶滅危惧種(Endangered)」「危急種(Vulnerable)」の3つに分類しているが、これらに加えられる数は年々増えており、実際に絶滅する生物も後を絶たない。

ナショナル ジオグラフィック協会の写真家として長く活動してきたジョエル・サートレイは子供のころ、絶滅したリョコウバトの最後の1羽だった「マーサ」の写真を見て、深く心を動かされたという。シンシナティ動物園で飼育されていたマーサは、1914年に29歳で死んだ。かつて何十億羽も北米の空を飛んでいたリョコウバトの歴史にピリオドが打たれたのだ。4年後、同じ檻の中で今度はカロライナインコの最後の1羽が死んだ。

絶滅危惧種のゴールデンラングール。インドのアッサム州立動物園・植物園で撮影。ほかに2匹飼育されているが、それで最後。全部で4匹しかいない(JOEL SARTORE/NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

それから80年後、サートレイはコロンビア盆地のピグミーウサギや中米のパナマヒダアシキノボリガエルなど、消え去ろうとしている動物たちの写真を撮りながら考えていた。どんな写真を撮れば、かつての自分のように、どこかの子供が不思議そうに繰り返し写真を眺めて、「この動物に何があったの? どうしていなくなっちゃったの?」と母親に尋ねてくれるだろうか。

やがて彼の頭の中で構想が形になり始めた。動物たちを撮影した1匹ずつ、2匹ずつ、あるいは集団の写真を美しく並べれば、私たちが受け継ぐ生きた惑星の豊かさとすばらしさを表現できるのではないか。まずは見てほしい。創造の神秘に出会えるはずだ。これを私たちは失おうとしている……。

こうしてサートレイが立ち上げたのが、「PHOTO ARK(フォト・アーク)」というプロジェクトだ。「ARK(アーク)」は「箱舟」という意味。いわば「写真版ノアの箱舟」である。PHOTO ARKは無名の生物も引き上げ、人々の無関心から救い出すために生まれた。

世界中の生物種を、それぞれの核心をとらえながら撮影するには、サートレイに与えられた時間は十分とはいえない。また、野生ではすでに絶滅した種もいる。そこで彼が選んだ方法は、動物園などで飼育されている動物たちを撮影することだった。

絶滅危惧種のクロアシイタチ。カナダのトロント動物園で撮影。1979年まで、絶滅したと考えられていた。人工繁殖で増やした個体を野生に戻す取り組みを続けたおかげで、現在は数百匹が野生で暮らしている(JOEL SARTORE/NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

被写体を飼育動物としたため、サートレイは色を統一した背景と照明によって、動物の姿を細部までくっきりと浮かび上がらせることができた。背景に余計なものがないおかげで、人々の目は動物に集中する。さらに、大きくて強い動物もおとなしい動物も、写真では同じくらいの大きさに撮影し、等しい力を持つ存在として表現した。これは、生態系ではそれぞれの生物の役割が等しく重要であるという事実を反映している。

すべての動物園にいる動物の種を合計すると1万2000種以上にのぼる(この数字は統計によって異なる)。そのうちの約6000種を、10年以上かけて撮り終えた成果をまとめた写真集が、『PHOTO ARK 動物の箱舟 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト』だ。ここで、私たちが守るべき、いとおしい動物たちの一部を紹介しよう。

(次ページで「PHOTO ARK」プロジェクトで撮影された動物写真8点を紹介)

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