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談笑師匠に弟子入り志願の手紙 届いていたら大惨事に

立川笑二

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NIKKEI STYLE

師匠と兄弟子の吉笑とともにリレー形式で連載させていただいている、まくら投げ企画。26周目。今回の師匠からのお題は「手紙」。

私は2011年の5月3日に師匠談笑の下に弟子入りを志願し、これが許されたことで今日があるのだが、その半年ほど前。10年の12月に、師匠ではない、ある落語家に弟子入り志願をしようと手紙を書いたことがある。

今回はそんな、運命を分けた手紙のお話。26周目、えいっ!

私は09年に同級生の友だちとともに地元沖縄から大阪に出て、よしもとクリエイティブエージェンシーの養成所に通っていた。しかし、一緒に漫才で天下を取ろうと誓ったはずの相方が早々に沖縄に帰ってしまったことでピン芸人となり、ピン芸人でやるなら元々漫才と同じぐらい好きだった落語をやりたいと、落語家になることを決意した。

ピン芸人として活動をしながら、1年ほど誰に弟子入りすべきかを考えて過ごし、東京の落語家(仮にA師匠とする)に入門することを決めた。

A師匠は「もっともチケットの取れない落語家」といわれている超売れっ子で、私はその師匠が出されているCDの「紺屋高尾」という演目の落語を聴いて心をわしづかみにされてしまっていた。

そんな10年の12月にA師匠が大阪で独演会をやられると知った私は、そこで弟子入り志願に行くことにした。

しかし、弟子入り志願に際しての正しい手続きがどういうものなのかが、よく分からない。グーグルで「落語家 弟子入り 方法」と検索しても、「ツイッターで弟子入り志願をするのは好ましくない」という情報くらいしか得られなかった。

当時の私には、一度でも落語家に弟子入り志願をすると「その人以外の落語家に弟子入り志願をするのは許されない」という考えがあった。「あなたの芸にほれました。生涯ついていきます。弟子にしてください」と口にして、断られたら他に行く。これは駄目だろうと。何度断られようが、その人以外の所へは行ってはいけないだろうと思っていた。

それだけに、たとえ1度目の弟子入り志願で断られたとしても、嫌な印象を与えてはいけないと、ベストな弟子入り志願を考えに考えた。その結果、終演後に楽屋口で出待ちをして手紙を渡すという無難な方法に落ち着いた。

失礼のないようにと細心の注意を払い、何度も書き直しながら思いの丈を手紙に込めた。そうして書き上げた手紙を、当時お世話になっていた関西の大御所漫才コンビの台本を書いている作家の先生に、読んでいただくことにした。

我ながら「よく書けているのではないか」と思っていたのだが、手紙を読んだ作家の先生からは「こんなやつ、弟子に取るわけないやろ」と一蹴されてしまった。

そのころの私はピン芸人としての仕事の都合上、11年の3月末まで大阪にいなくてはいけなかったので、4月に上京し、それから入門させていただこうと考えていて、その旨を手紙に記していたが、それがいけないのだという。「お前が東京に出てくるまで、なんで師匠が待たなあかんねん。何様のつもりや」との指摘を受けて、ようやく自分の至らなさを思い知った。

弟子入り志願をするからには、その日からでも下働きをできる状態で臨まなければならない。コネもツテもなしに上京して、それから志願をするべきだということを教えていただいた。

そんな経緯で、私はA師匠の独演会後に出待ちをすることもなく、手紙も渡さずじまいとなった。

 つくづく、縁というものは不思議だと思う。その10年12月の時点で、私は立川談笑の落語を一度も聴いたことがなかったのだ。

それから年が明けて4月に上京するまでの間に、たまたま近所のTSUTAYAで立川談笑の落語のCDをみつけた。CDには「ジーンズ屋ようこたん」という「紺屋高尾」の時代設定を江戸から現代へと改作した演目が収められていて、それを聴き終えたころにはもう、弟子入りすると決めた相手がA師匠から立川談笑へと変わっていた。

A師匠の「紺屋高尾」に心をわしづかみされたのに対し、「ジーンズ屋ようこたん」は心を突き刺してくるような、撃ち抜いてくるような、押しつぶしてくるような……。とにかく私の知っている言葉では表せない、何かすごいものを感じ「この人以外にはありえない」と、心に決めたのだった。

原稿をここまで書いてみて、もしA師匠の大阪の独演会で、終演後に出待ちをしていたらどうなっていただろうか考えてみた。だが談笑へ弟子入り志願をした時の私の状態からみても、結局、私はA師匠に手紙を渡せなかったかもしれない。

実際、11年4月に上京し、立川談笑の出る落語会を追いかけては楽屋口で出待ちしていたが、「弟子にして下さい」と口に出して言うまで、私は1カ月もかかっている。会場から出てくる姿をみつけても緊張し、なかなか声をかけられないでいたのだ。

それなので、私が師匠の弟子になれたのは不思議な縁ではなく、必然だったのかもしれない。

ちなみに、談笑師匠に弟子入り志願したときも手紙を書いていた。だが「帰る方向が同じだから」と一緒に電車に乗って移動中、師匠に私の話を聞いていただき、新宿駅で別れる際に「事務所にメールで、履歴書を送っておいて」と言われたので、手紙は渡しそびれたまま、今も手元に置いてある。

6年ぶりにその手紙を読んでみて、書き出しに驚いた。

立川談笑師匠

この手紙を読んでくださりありがとうございます。

私は、談春師匠の落語が大好きです。

本文2行目にして名前を間違えるという恐ろしい失態。何度も何度も読み返したはずなのに。

震えが止まらない。

これを渡していたらたぶん、弟子にはなれていないだろう。

(次回8月20日は立川吉笑さんの予定です)

立川笑二
 
1990年11月26日生まれ。沖縄県読谷村出身。2011年6月に立川談笑に入門。前座時代から観客を爆笑させ評判に。14年6月、二つ目に昇進。出囃子は「てぃんさぐぬ花」。立川談笑一門会のほかにも、立川吉笑、立川笑坊ら一門、立川流の若手といっしょに頻繁に落語会を開いて研さんを積んでいる。

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