調査対象者の平均年齢は36.5歳であったが、先進国の調査では同年代における睡眠時間は約7時間である。つまり30分以上短かった。ちなみに、ここでの睡眠時間とは正味の眠れている時間のことで、寝床にいる時間ではない。
彼らの寝つく時刻は早く、日没から3時間後の21時過ぎであった。そして、明け方5時頃、日の出近くになって目を覚ます。寝床にいる時間は8時間前後で、かなりの早寝早起き生活である。すっかり夜型生活に染まった現代人でも、人工照明がなく太陽光のみの環境下で生活させられると体内時計の時刻が早まり、睡眠時間帯が早まることが実験でも明らかになっている。
予想外だった中途覚醒の増加
ここまでは想定内であったが、寝ついてから朝の目覚めまでグッスリ眠っていたかと言えばそうではなく、夜中に合計で1時間半近く目を覚ましていた(中途覚醒)。先述の先進国の調査では同年代の中途覚醒は約20分であるので、この3部族の人々の中途覚醒が非常に長いことが分かる。つまり、狩猟民族の睡眠時間が短かったのは、主に中途覚醒が長いことが原因であった。
6時間半程度の睡眠で彼らが睡眠不足にならないのか、この調査では分からない。しかし、昼寝もごく短く20分程度で、全く昼寝をしない日の方が多い。不眠も少なく、寝つきが悪いことがあると答えたのは5%、中途覚醒で困ると訴えたのは9%だったとのこと。現代人でのそれらの頻度は20~40%であることを考えると、睡眠時間の短さも中途覚醒も彼らにとっては苦痛ではないようだ。
これらの部族では乳児死亡率が高いが、いったん成人すれば60代、70代、80代以上まで長生きする人も多く、睡眠時間が短いことが健康に大きく影響している様子もない。
ごく最近も、マダガスカル南部のマンデナ(Mandena)にある非電化で小規模の農業コミュニティーで睡眠調査が行われた。この地域はGoogleマップにも載っていないような小集落だが、約4000人が1平方キロメートル内に暮らし、人口密度は東京都内並みとのことである。
非電化とはいえ家屋をはじめ先の狩猟民族よりも近代化された生活を送っているが、睡眠についてはやはり狩猟民族と同様な結果であった。調査時期の日没が17:30頃、日の出が6:20頃と夜間帯は13時間にも及んだが、睡眠時間は約6時間30分で、中途覚醒が2時間以上あった。