米CIAの陰謀で消えた? 油田の利権握る「幻の島」

日経ナショナル ジオグラフィック社

タルデューによる『北部アメリカ』の地図(1809年)

2009年には、メキシコ国立自治大学の専門家を集め、ジュスト・シエラ号でメキシコ湾に送り出した。メキシコ国立自治大学のチームは地図に記録されている地点にたどり着き、その海域を徹底的に調査した。飛行機で上空から一帯の様子も調べられた。しかし、発見されたのは堆積物で覆われた海底ばかりだった。

島はCIAの手で消されたのか

ベルメハの「消失」をめぐっては、気候変動に伴う海面上昇や海底地震など様々な説が浮上している。広く信じられている説の一つが、米国が油田の権利を手中に収めるために、中央情報局(CIA)の手で島全体を破壊させたとする陰謀説だ。

2000年11月には、メキシコの政党である国民行動党(PAN)の上院議員6人が、島が意図的に消滅させられた可能性について「濃厚な疑い」があると議場で発言した。1998年、PAN党の議長ホセ・アンヘル・コンチェロは、ベルメハ島が実在する可能性を追求するためにさらなる調査を要求した。その直後、車で連れ去られたうえに殺害され、犯人が捕まらなかったため、陰謀説はさらに広まった。コンチェロは、当時のセディージョ政権が試掘権を米国企業に譲り渡そうと秘密の計画を立てているとも警告していた。

タルデューの地図に描かれたベルメハ(Vermeja)島(赤い四角で囲んだ部分)

結局、島はどうなったのだろうか。メキシコ国立自治大学のハイメ・ウルティアとメキシコ国立工科大学のサウル・ミランは、ベルメハほど大きい島を消し去るには水素爆弾が必要という結論を出した。ミランは、島が破壊されたのではなく、海の下に隠された可能性を指摘した。米国政府が何らかの方法でこっそりと海面下まで島を削ったのではないかというわけだ。

メキシコ国立自治大学の地理学者イラセマ・アルカンタラは、ベルメハ島の存在を熱心に擁護し、取材陣にこう語った。「私たちはベルメハの存在について非常に正確な記述がある文書をいくつも見てきました。(中略)ですから、場所は違うかもしれませんが、私たちは島が存在することを固く信じています」

一方、ドイツのアルフレッド・ウェゲナー研究所に所属するハンス=ウェルナー・シェンケは、『デア・シュピーゲル』誌の取材に対し、メキシコ人の希望を完全に打ち砕くこんな発言をしている。「最新の海図と地球のデータを見ればわかるように、この地域にかつて島があったことを示す痕跡はまったくありません」

[書籍『世界をまどわせた地図』を再構成]

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