3週間後でも抜きたてワイン 風味落ちない魔法の道具

窒素でもアルゴンでも酸化防止の効果はほぼ同じだというが、窒素はアルゴンと違い空気より軽いので、針をさしっぱなしにしていると、その針とコルクの隙間から窒素が漏れ出てしまうので、使い終わったらすぐにニードルを外す必要がある。

三つ星レストランでもグラスワインに利用

日本のワインの現場でも早速利用が始まっている。ミシュラン三つ星レストラン「ロオジエ」シェフソムリエであり日本ソムリエ協会の副会長をつとめる中本聡文さんは、コラヴァンを率先して店に導入した一人だ。

コース料理に合わせてグラスワインを多くそろえる「ロオジエ」では、熟成ワインや高級ワインなどデリケートなワインを扱うため、昼に抜栓したワインが夜には味わいが変わっていることもある。複数のグラスワインを用意する必要性から、コラヴァンの導入を心待ちにしていたという。

高級ワインをグラスサービスすることでワイン愛好家に根強い人気を誇るワインバー「IZAKAYA VIN」の分店「ゴーディショ」でも早速コラヴァンを導入した。ソムリエールの榎本裕子さんは、「今までは予約状況や来店するお客様の好みによって抜栓するワインを考えていましたが、今はもっと自由にワインを開けられるようになった。次の日がお休みの場合でも、コラヴァンがあれば気にせず開けちゃいます」と話してくれた。「グラスでいいワインを1杯だけ飲みたい」というお客様にも好評だという。

「ゴーディショ」では早速コラヴァンを導入した

また、ボトルを寝かせて保管できるのも筆者にとってはうれしいポイント。コルクを抜栓してしまったワインは、たとえ栓をしても横にするとワインが漏れてしまう可能性があるため、ワインセラーや冷蔵庫内で立てて保管する必要がある。コラヴァンの場合、それまでワインセラーに保管してあったのと同じ状態に戻せるので、場所を取らずに済む。

だが、魔法の道具はメリットばかりではないようだ。

まずは、コストの問題。本体が6万5000円(税抜き、以下同)もする[注]。17年8月10日には3万9880円の「コラヴァン モデル1」が追加で発売され、だいぶ安く使えるようになったが、どちらにしても安価な商品ではない。

[注]機種名は「モデル2」で色は黒のみ。赤とシルバー、限定のローズゴールドの機種は「モデル2エリート」で6万8000円。機能に違いはない。

「コラヴァン モデル1」。モデル2が金属製なのに対して、こちらは本体がプラスチック製。ワインの保存機能に違いはない

これにプラスして、ランニングコストがかかる。窒素ガスのカートリッジは1本1500円。ガス1本でボトル約2~3本に使用可能ということなので、ボトル当たり500~750円程度のガス代がプラスされる。

ガス代を考えると、使用するワインも選んだ方が良さそうだ。カジュアルなワインではメリットが少なくなるし、若いワインで2、3日で飲んでしまうならコラヴァンを使う必要性もない。実際、美食の町として知られるスペインバスク地方・ビルバオのバルのソムリエは「ワインに力を入れているレストランやバーでは利用が進んでいるが、カジュアルなバルではあまり使われていない」と話していた。人の回転もワインの消費量も多いバーでは、コラヴァンを使って保存するまでもなく、ワインが売り切れることも多いからだ。

コストをかけてもいい状態をキープしたい高級ワインがコスト的には向くが、一方で熟成した赤ワインにコラヴァンを使用する場合、下に説明するような注意が必要だ。

(1)澱(おり)に注意

まず、熟成した赤ワインは、ボトルの底に澱がたまっている。通常、澱が舞わないようワインはできるだけ動かさずにそっと扱い、グラスを傾けて静かに注ぎたいところ。だが、コラヴァンではワインを注ぐときには、ニードルの先がワインにつかるようにボトルをしっかり横に傾ける必要があるので、澱が舞いやすく、ワインが濁る可能性もある。「古いワインだと澱ができるだけ入らないよう傾ける角度などにも気を使うため、サービスに時間がかかる」(榎本さん)

(2)古いコルクに注意

熟成したワインは天然コルクがもろくなっている。ロオジエの中本さんが、1989年の熟成赤ワイン(ロマネサンヴィヴァン)に使用したところ、瓶口とコルクの間からガスが漏れ出てきてしまったそうだ。年月がたちコルクが弱くなってきたワインには、ガス圧に耐えられず、そこからワインも噴き出してしまう可能性もある。

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