世界株高に感じる黄信号 乱気流に備えよ(藤田勉)一橋大学大学院客員教授

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「筆者は証券業界で35年以上のキャリアを持つが、現在の世界の株式相場は黄信号がともっていると感じる」

筆者は証券業界で35年以上のキャリアを持つ。その経験から現在の世界の株式相場は、赤信号ではないが、黄信号がともっていると感じる。言い換えると、バブルとは断言できないが、そろそろ乱気流に注意するタイミングになりつつあるという状況だろうか。緊迫化する北朝鮮情勢だけではない。筆者の肌感覚ではリスクは3つある。

第1に、世界の株価の上昇期間が長く、かつ上昇率が高いことである。世界の株式相場(MSCI世界株価指数)は、リーマン・ショックの半年後である2009年3月を起点として、上昇相場が17年7月まで8年5カ月続いている。この間、米国株(S&P500種)は3.7倍になった(17年7月末時点)。東日本大震災があった日本株(日経平均株価)の上昇率は低いものの、それでも09年の安値から2.8倍の水準だ。

株高は歴史的に見ても長期

歴史的に、米国株の上昇期間は1990年の安値から2000年の高値まで9年5カ月で5.2倍になったのが最長、かつ最大である。比較的最近では02年の安値から07年の高値まで5年で2.0倍になった例がある。これらと比較して、現在の相場は十分に長く、上昇率も高い。

株価は景気サイクルに連動して波動がある。現在の米国景気拡大期間は8年を超える。これは歴代3位の長さである。

第2に、中国バブル崩壊の恐れである。中国の大都市部の住宅価格が高騰している。過去5年間(17年6月まで)の上昇率は、深圳が115%、上海が67%である。こうした高騰が、広州、南京などに拡大している。住宅バブルが株価バブルに転換しつつあり、アリババ集団、テンセントなどの株価は急上昇している。

中国株(上海総合指数)は一方向に動くことがある。下落率は07年の高値から08年安値までが72.0%、15年の高値から16年の安値までは48.6%と大きかった。当時よりも中国株の時価総額は巨大化しているため、急落すれば世界の株式市場に対する影響は大きい。

第3に、原油価格急落のリスクである。石油輸出国機構(OPEC)とロシアが合意した減産幅は、日産180万バレル(サウジアラビア49万バレル、ロシア30万バレル)にとどまる。これに対し、シェール革命の恩恵が大きい米国は18年に120万~150万バレル増産するとみられる(シティグループ予想)。OPECが減産を維持できなければ、原油価格急落のリスクがある。

原油急落でダメージ受ける米株

減産によって、原油価格は実態よりも割高に維持されている。このため、比較的生産コストが高い米国、ブラジル、カナダの生産が順調に増加している。つまり、サウジアラビアやロシアが身を削って減産しているおかげで、米大陸の原油生産が増えているのである。

仮に、原油価格が急落した場合、最も大きなダメージを受けるのは米国である。株式市場においても、エネルギーの構成比が高いので、株価も大きく崩れるリスクがある。

ただし、マーケットに黄信号がともっているときは、株価はまだまだ上がると思った方がいい。それは、歴史的に上昇相場の最終局面では、株価はオーバーシュートするからである。バブルは最終局面こそ、株価が急激に上がり、そして熱狂の中で相場は大反転する。バブルは最後の局面こそ、最もエキサイティングなのである。

米市場の現在のIT(情報技術)株はバブルのにおいがする。過去1年間(17年7月末時点)の株価上昇率は、アリババ集団が88%、マイクロソフトが37%、アマゾン・ドット・コムが30%、フェイスブックが28%、アルファベット(グーグルの持ち株会社)が20%である。16年度の純利益が約2600億円しかないアマゾンの時価総額は52兆円もある(1ドル110円換算)。ちなみに、日立製作所やパナソニックの時価総額は3兆円台である。

バブルに関しては、いくつかの格言がある。代表的なものに「10年に1度バブルはやってくる」「バブルは形を変えてやってくる」「はじけないバブルはない」がある。これらが当てはまるのが、1980年代の日本のバブル、1990年代のITバブル、そして2000年代の米国住宅バブルであった。

相場の最終局面には乱高下が待つ

03年に、当時のグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は「バブルは、はじけて初めてバブルとわかる」という名言を残した。要は、バブルの最中にバブルとは認識できないということだ。よって、バブルのピークで持ち株を売り切るというのは、ほとんど不可能に近い。そこで、今後は保有株を徐々に売り上がるのがベストではないか。例えば、値上がりした金額に相当する株式を売るなどの戦術が考えられる。

一方で、相場の上昇は続くとしても、今から株式保有額を増やすのは避けることが望ましい。今ごろ株を買い増すのは、リスクの割にリターンがそれほど見込めない。この水準から強気に転じるのは、手遅れといわざるを得ない。

筆者が最もいいたいことは、(1)永遠に上げ続ける相場はない (2)最後にはバブルとその崩壊が待っている (3)しかし、バブルを恐れていてはチャンスがない――というものだ。相場の最終局面は乱高下が待っている。

折しも北朝鮮情勢が緊張の度合いを強めている。北朝鮮は10日に米グアムに向けて弾道ミサイルを発射する計画を発表した。一方、米トランプ大統領は同国への警告を繰り返し、市場は動揺している。

緊迫は長期化し、今後もマーケットに影響を与え続けることであろう(筆者の北朝鮮情勢についての基本的な考え方は6月12日付コラム「北朝鮮情勢 地政学で市場の耐性を考える」を参照)。株価が大きく動く「高値波乱」に向けて今から準備をしておきたい。

藤田勉
一橋大学大学院客員教授、シティグループ証券顧問、SBI大学院大学金融研究所所長。2010年まで日経ヴェリタスアナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、北京大学日本研究センター特約研究員、慶応義塾大学講師を歴任。一橋大学大学院修了、経営法博士。1960年生まれ。
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