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土星の衛星タイタンに生命の1条件 細胞膜作れる物質

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ナショナルジオグラフィック日本版

土星の衛星タイタンの極地では、冬になると有毒の分子が激しい雨となって降り注ぐ。そして条件が整えば、この分子が集まって、地球上の生命が持つ細胞膜のような、膜状の構造を形成する可能性がある。

この有毒分子はシアン化ビニル(アクリロニトリル)と呼ばれるもので、タイタンの大気圏上部で形成される。2017年7月28日付で学術誌『Science Advances』に発表された論文によると、タイタンのオレンジ色をしたもやの中には、このシアン化ビニルが大量に存在し、氷のように冷たい星の表面に降り注いでいると考えられるという。

タイタンの北極で2番目に大きな湖であるリゲイア海の中には、100億トンを超えるシアン化ビニルが含まれていると推測される。

湖の中に入ったシアン化ビニルがどうなるのか、またこの分子が本当に自己組織化するのかについては、まだはっきりしたことはわかっていない。しかしシアン化ビニルに膜を形成する力があると仮定した場合、タイタンの湖においては、生命の存在に必要な重要条件のひとつが容易に達成できるのではないかという推測が成り立つ。

「タイタンは、奇妙かつ独特な化学現象が見られる星です。現在までにわかっている証拠はすべて、この星で生命が存在するための作用が起きている可能性を示しています」と、米ジョンズ・ホプキンス大学のサラ・ホルスト氏は言う。

炭化水素の湖を持つ星

土星最大の衛星タイタンは、何十年もの間、宇宙生物学者たちを魅了してきた。地球によく似ているところがある一方で、その化学的性質は劇的に異なる。たとえばタイタンは、地球を除く太陽系で唯一、その表面を液体が川となって流れ、湖を形成している星であり、また発達した窒素の大気圏を持ち、複雑な有機化合物に全体を覆われている。(参考記事:「まるで地球、衛星タイタンの驚くべき写真」)

しかしタイタンの気温は極めて低いため(マイナス180℃)、氷は石のように硬く、湖に流れ込むのは水ではなく液体のエタンやメタンだ。赤道付近の砂丘を形成するのは砂ではなく凍ったプラスチックで、地球では化学処理工場で合成されるような化合物が雨となって降り注いでいる。

つまり、もしタイタンで生命が進化を遂げているとすれば、その分子機構は水ではなく、炭化水素を効率よく循環させるために最適化されているだろうと考えられる。

「太陽系のどこを探しても、こうした炭化水素の湖を持っている星はありません」と、論文の共著者であるNASAゴダード宇宙飛行センターのコナー・ニクソン氏は言う。「この湖の仕組みを理解するには、まったく新しい生物学を用いる必要があります」

完全な分子構造を発見

2004年以降、NASAの探査機カッシーニは土星の周囲をまわりながら、大きくて奇妙な衛星タイタンの研究に貢献してきた。10年以上前、カッシーニは、シアン化ビニルを構成する原子――炭素原子3つ、水素原子3つ、窒素原子1つ――を含む分子がある証拠を見つけたが、カッシーニのデータからは、これらの原子がシアン化ビニルを構成する配列になっていると断定することはできなかった。

今回の論文で、現在はNASAに勤める研究リーダー、モーリーン・パーマー氏のチームが、チリにあるアルマ望遠鏡が集めたデータを精査した。

その結果、シアン化ビニルが存在するという確実な証拠、つまり原子だけでなく完全な分子構造が、2014年2月から5月のあいだに観測されたデータの中から見つかった。

こうして発見されたデータを基に、研究者らは、タイタンの大気中には大量のシアン化ビニルが含まれていると結論づけた。シアン化ビニルは、主に高度200キロを超える高さで検出されている。これは太陽光やその他の粒子が、窒素を主成分とするタイタンの大気の上部にぶつかり、そこにあるメタンや窒素を「レゴブロックのように」破壊する際に、シアン化ビニルが形成されるためだとニクソン氏は言う。

バラバラにされた原子は、再度集まって多様な物質を形成するが、その中のひとつであるシアン化ビニルは、ゆっくりと凝縮されつつ大気の中を沈んでいき、ついには雨粒のようになって落ちていく。タイタンの季節と大気の循環パターンのせいで、これらの分子が最も濃縮された状態で降り注ぐのは、冬が到来した極地方になるが、この星の全域にある程度は降っている。

ニクソン氏は言う。「シアン化ビニルはタイタン全体に降り注ぎ、その表面に留まったり、そこで化学反応を起こして長いポリマーの鎖を作ったりすると考えられます。あるいは湖に落下し、水中で自己組織化する可能性もあります」

ダイオウイカ360億匹分?

シアン化ビニルが、地球の生命が持つ細胞に似た構造を作る可能性があるというアイデアは元々、コーネル大学の研究グループが提唱したものだ。彼らはタイタンの大気に含まれる分子のうち10種類ほどを精査し、コンピューターモデルを用いて、そのうちのどれが自己組織化して、アゾトソームと呼ばれる膜のような構造を作る能力を持っているかを調べた。

当時大学院生だったジェームズ・スティーブンソン氏率いる研究チームは、極めて温度が低いタイタンの液体メタンの海において、そうした膜を作る可能性がもっとも高いのはシアン化ビニルであると結論づけた。

シミュレーションによりできたその膜は、地球の細胞膜と同様、強くて柔軟性があり、また生命に必要なその他の成分を中に閉じ込める空洞を持つ可能性を秘めていた。

「(分子は)互いの間にまったく隙間を持てないほどには密集せず、かつ鎖を形成する程度にはくっつきやすい傾向があり、そして鎖の端同士が近くに来たときには『よし、繋がろう!』となる性質を持っている必要があります」と、コーネル大学のポーレット・クランシー氏は言う。

現在までのところ、シアン化ビニルが膜を作れることを証明する実験は行われていない。低温メタンや毒性のあるシアン化物は扱いが難しいほか、タイタンで起きていることを地球上で再現しようとしても、できることはごく限られているからだ。

それでも、シアン化ビニルが理論上、膜に覆われたボールを形成する力を持つという事実は、タイタンにこの物質が大量にあることがわかった今、さらに注目度を増している。量だけを考えた場合、リゲイア海には少なくとも360億匹のダイオウイカを作れるだけのシアン化ビニルが存在する。今回の発見は、新たな探査機をタイタンに向かわせる大きなきっかけとなるかもしれない。

「今はまだ、タイタンの湖を理解するために必要な実験が始まったばかりです」とホルスト氏は言う。「しかし、もう一度タイタンに探査機を送り込むまでは、そこで本当に何が起こっているのかを根本的に理解することはできないでしょう」

(文 Nadia Drake、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年8月1日付]

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