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定年楽園への扉

シニア起業族 定年後だからよく働き、よく遊べる 経済コラムニスト 大江英樹

2017/8/24

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 会社を定年になってから起業する「シニア起業族」には、一つの特徴があります。それは仕事もよくやっているけれど、それに負けないぐらい遊んでいるということです。私と同年代で起業した友人を見ていても、非常に活発に活動しています。

 かくいう私も、セミナーの講演で全国各地を飛び回っているせいで、昨年はたった4日しか完全休業日がありませんでした。それでも、好きな音楽ライブには何度も出かけましたし、昔の友人を訪ねて旅をすることもちょくちょくありました。

 もちろん、仕事はやっています。はっきりいって現役の会社員時代とは比べものにならないぐらい仕事の量も質も拡大していて、一方では結構好きなこともやって遊べている。一体これはどういうわけなのでしょうか。

■全ての時間を自分のために使える

 会社員を辞めて1人で仕事をするようになり、あることに気付きました。それは全ての時間を自分のために使える、ということです。会社員の場合は、なかなかそういうわけにはいきません。

 自分の仕事は自分で決められるわけではなく、上司など他人に決められる部分が大きいのです。若手社員のうちは上司の指示通り動かなければなりません。

 管理職になったらなったで、チーム全体の動向と経営の方向を考慮しながら仕事の段取りを決めなければなりません。会議の資料作りと上司への説明、部下からの報告を受けた上での業務指示、部下の人事評価、トラブル処理など、管理職は自分自身の仕事ができる時間がかなり少なくなります。

 自分の仕事をやり始めたところへトラブルの電話がかかってきたり、部下が泣きついてきたりすることもしょっちゅうあるでしょう。

 実際に私は管理職時代、自分の時間を確保するために午前6時半に出社して、正規の始業時間である8時40分までの2時間ほどを、誰にも邪魔されない自分自身の仕事の時間と決めていました。そうしなければいつまでたっても自分がやりたい仕事とその成果を出すことができなかったからです。

 管理職とはそういうものだといってしまえばその通りです。でも、組織の仕事の調整とクレーム対応だけでは、さすがにその仕事を好きになれないものです。管理職に限らず、一般社員であっても意に反した仕事ばかりではストレスがたまっていきます。何らかの形でクリエイティブな仕事をしないといけません。

 組織に所属していると、そういうストレスを抱えながら、さらに自分なりの納得感と落としどころを見つけて折り合いをつけながら、仕事を進めていかざるを得ないのです。つまり、会社員は非常に制約が多い中で仕事をしなければならないから大変なのです。

 これに対して、自営業であれば、百パーセント自分で時間とやることをコントロールすることが可能です。今の私がやっているコラムニストという仕事でいえば、もちろん原稿の締め切りはありますから、全くプレッシャーがないわけではありませんが、少なくとも自分で優先順位と体調を考えて段取りを組むことができます。だからこそ、スケジュールをうまく調整すれば遊びの時間も確保できるのです。全ての時間を百パーセント自分のために使えるというのは会社員時代からすると夢のようなことなのです。

■定年後なら退職金も年金もある

 もちろん、起業はそれほど甘いものではありません。人を雇って手広く事業展開する場合は、借金する必要もあるでしょう。一つ間違えると、会社員時代とは比較にならないぐらい大きな悩みやリスクを抱えることにもなりかねません。いわば究極の自己責任の世界です。

 しかしながら、いつも私が主張しているように、リタイア後に独立するというのは、それほど大規模にやろうと思いさえしなければ決して困難なわけではありません。定年後のシニアには退職金も年金もありますから、それほど稼ぐ必要がないからです。

 やり方によっては若い人の起業と違って、リスクはさほど大きくないのです。会社員時代には考えてもみなかったような喜びを味わえるというのもまた、シニア起業族の大きな楽しみといっていいでしょう。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は9月7日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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