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中高年に異変 卒婚や死後離婚、家族より個人を重視 ダイバーシティ進化論(水無田気流)

2017/8/12 日本経済新聞 朝刊

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近年、中高年の結婚のあり方に静かな異変が起きている。気になる事例その1は、「卒婚」への注目の高まり。仕事や子育てが一段落した夫婦が、ともに夫や妻といった役割から解放され、独立した自由な生き方を尊重し合うため、結婚を「卒業」するというものだ。別居する場合も、同居のままの場合もあるという。

ポイントは離婚とは異なり、家族関係を解消するのではなく、個人として自由な生活スタイルを優先させるため「結婚」というパッケージから自由になろうとする点だ。評論家の杉山由美子氏が2004年に『卒婚のススメ』を書き先鞭(せんべん)をつけたが、注目されるようになったのはここ数年のことである。提案はほとんどが妻からであり、夫の定年退職を機にしたケースが多いという。

2つめは「死後離婚」の増加だ。この造語は、正式には配偶者の死後「姻族関係終了届」を提出することで、配偶者の親族との法的関係を断つことを指す。15年度は2800件近い申請があり、過去10年で1.5倍に増加した。こちらも圧倒的に女性からの申請だ。

法的には、夫の親族は「姻族」であり、夫の死後も関係が続く。姻族に対しては、特別な事情がない限り扶養義務は生じないが、慣習により姻族の介護を求められることを懸念するケースや、確執のある義母や生前不仲だった夫と同じ墓に入りたくないなどのケースが多いという。手続きに姻族の承認は不要で、通知されることもない。また、離婚と異なり配偶者の遺産の相続権や遺族年金の受給には問題がない。「配偶者の親族との縁切り」を眼目とした制度ともいえる。

これらの現象の背景にあるのは、法律に基づく家族関係と、慣習としての家族役割、現実の人間関係や「個人としての幸福」との乖離(かいり)だ。80年代以降「家族の個人化」が言われ、旧来の家族役割より個人の志向性を重視する傾向も指摘されてきたが、他方で古い家制度に基づく家族の役割への期待は今なお重い。とりわけ団塊世代より下の女性たちは家制度から自由な結婚像を模索してきたにもかかわらず、結局は「嫁による義父母の介護」を当然視されてしまう結婚のあり方に、疑問や負担感を覚える人も多い。静かな「異変」は、これまで女性に一方的に忍耐を強いることで済まされてきた問題が、すでに限界に達していることの証左ともいえよう。

水無田気流
1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

[日本経済新聞朝刊2017年8月7日付]

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