絶叫コースター、スリルどんどん加速 前へ後ろへ回転
大絶叫必至の新ジェットコースターが相次ぎ開業している。富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)では、2001年登場の旧ドドンパをスピードアップして"加速度世界一"にした「ド・ドドンパ」が7月15日に開業。ナガシマスパーランド(三重県桑名市)では、座席が前後に急回転しながら疾走する「嵐」が3月10日にオープンした。
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絶叫コースターのトレンドを振り返ると、近年大きく2つの変化があった。1980年代後半から2000年代初頭までは、車両の最高到達高度、最高速度、全長の距離の長さを追求した時代だ。富士急の「FUJIYAMA」や、ナガシマの「スチールドラゴン2000」が次々と当時の世界記録をたたき出した。
だがその後、10年にアラブ首長国連邦のアブダビに世界最高の時速240キロメートルの「フォーミュラ・ロッサ」が登場するなど、日本の記録は大半が塗り替えられた。
高さや速さ、長さの追求には建設用地、コスト、身体負担などから限界もあった。そこで、遊園地やメーカーは高スペック化路線からかじを切り、「奇抜な動き、乗り方」を売りにした機種が00年代半ばから目立ち始めた。
走行中に座席が回転する富士急の「ええじゃないか」や、体をつられてうつぶせで乗るフライングコースターとして名をはせるナガシマの「アクロバット」、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「ザ・フライング・ダイナソー」が代表格だ。
発射直後に時速180キロ
その奇抜系コースターの最新作が、ナガシマの嵐。自ら打ち立てた世界一の加速度を更新し、昔の輝きを取り戻したのが富士急のド・ドドンパだ。これらの絶叫度はいかほどなのか。中年記者(47)が体験乗車した。胸部計測で精度の高い心拍計を使い、試乗時にどれだけ心拍数が上がるかを計測した。
まずは、ド・ドドンパ。実際に乗車すると、発射から1.56秒で180キロメートルに達する未知の猛スピードに度肝を抜かれ、心拍数は一気に180に急上昇した。安静時の心拍数は65程度だから、約3倍のすさまじさだ。
猛烈な加速度(G)で頭が座席に張り付き、轟音(ごうおん)が耳をつんざく。容赦なく顔面を襲う風圧に、思わず出る大声。今回の大きな改良点はコース終盤に世界最大級のループを取り入れた点で、垂直にそそり立つループを駆け上っていく迫力に再び大絶叫してしまった。
一方の嵐は、レールが折り返して縦に積み重なる独特のコースを、これでもかと前回り、後ろ回りに回転する座席に乗って疾走する。しかも座席はカバーも床もなく足が宙ぶらりん状態。試乗すると、走行直後に突然座席が前方に1回転したかと思えば、すぐ後方に回転するなど、予測不能な動きだ。
勢いよく回転するため、遠心力で体が空中に放り出されそうになり、固定バーから手が離せなかったほど。最大心拍数も115と安静時の2倍近くに上昇。"不意打ち"の回転の連続で恐怖を何度も呼び起こされ、絶叫を繰り返した。
毎年のように新機種が投入される絶叫コースターだが、来年以降はリニアモーター技術を使った新展開もありそうだ。「日本のコースターは大半が海外メーカー製で、本場の米国で流行した機種が上陸するパターンがほとんど。今、海外の主流はリニアコースターであり、今後日本でも普及することは間違いない」(絶叫マシンに詳しい市川尚孝氏)。従来は最高部から落下させるか、空気圧などで射出する"最初の一押し"だけが動力で、後は徐々に減速するのが宿命だった。だが、超電導磁石の力を使うリニアなら、コース中盤や終盤で再加速させ、絶叫の山場をいくつもつくれる。
VR新技術使い新機軸が続々
今年はVR(仮想現実)技術を使った新機軸のアトラクション施設も、東京都内で続々とオープン。特に怖さを感じたのが、バンダイナムコエンターテインメントが7月14日に開業したVR ZONE SHINJUKUの「極限度胸試し 高所恐怖SHOW」だ。これはVRゴーグルを装着し、仮想ビルの高層階から張り出した一枚の板の上を歩くアトラクションだ。
8月1日には"史上最恐"のVRコースターがハウステンボス(長崎県佐世保市)に登場。絶叫マシン好きなら、VRアトラクションも試す価値がある。
(4日発売の日経トレンディ9月号より再構成 文・高橋 学 写真・古立 康三)
[日本経済新聞夕刊2017年8月5日付]
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