給与天引きの雇用保険料 失業時以外も使える給付制度
知って得するお金のギモン
社会保険労務士の望月厚子です。中学生の娘のワーキングママとして、日々格闘中……。子育てにだいぶ手がかからなくなった一方、お金がかかるようになったと実感しています(笑)。
さて、働く女性のほとんどが、毎月の給与から雇用保険料を払っていますよね。実は、2017年の4月から、雇用保険料率は毎月の給与総額の0.4%から0.3%に引き下げられました(労働者負担分)。月収20万円の人なら、これまでより月200円安い、月600円となります。
ちなみに、雇用保険というと、失業手当をすぐ思い浮かべますが、使わないと損なのが、「教育訓練給付制度」です。
資格を取得する前に必ずチェックすべき制度
スキルアップのために資格を取りたい、勉強したいと思っても、「お金がかかるから」とちゅうちょしてしまう人もいるのでは?
雇用保険には、資格や技術を身に付けてキャリアアップできるようにサポートする「教育訓練給付制度」があります。
この制度は、厚生労働大臣が指定する講座を受講し、修了すると自分が支払った受講料の20%(上限額10万円)が戻ってくる仕組み。指定講座にはTOEICや簿記検定、インテリアコーディネーターなどがあり、通学講座だけでなく、通信講座も含まれます。例えば、30万円の受講費用がかかった場合、6万円も戻ってくるので、とってもお得です。
また、保育士や介護福祉士、看護師など、より専門的な資格が対象の「専門実践教育訓練給付」もあり、支給額は受講費用の40%(年間上限額32万円)。さらに、受講修了後、1年以内に資格取得して就職した場合は、20%の追加給付が! この追加分を合わせた支給額は、受講費用の60%(年間上限額48万円、最大3年間で144万円)にもなります。ただし、被保険者期間など、一定の受給要件があるので、興味のある人は受講開始前に厚生労働省や各スクールのホームページをチェックしてみてください。
育休中にもらえるお金も雇用保険から!
ちなみに、育児休業中の強い味方「育児休業給付」も雇用保険の制度のひとつなんです。
育休中の人は、原則子供が1歳になるまで雇用保険から育児休業給付金がもらえます(育休期間中に月額賃金の80%以上を受け取っている場合は支給なし)。月収20万円の人なら、育休開始から6カ月間は13万4000円(月額賃金の67%)、その後は10万円(同50%)が受け取れるのです。
また、保育園に入れない場合は、育休と育児休業給付金を6カ月間、延長できます。さらに、今年10月からは、子供が2歳になるまで育休の延長が可能になり、延長期間中も育児休業給付金が受け取れることに。
「育児と仕事を両立できるか不安……」「保育園に入れなかったら、仕事を辞めるしかない?」とマイナス思考に陥り、会社を辞めてしまったら損。たとえ保育園に入れなかったとしても、育休の延長&給付金をもらい、なんとか乗り切ってほしいものです。
このように、雇用保険は失業中のときだけでなく、キャリアアップのために勉強したいとき、育休中のときも金銭面でサポートしてくれる存在。上手に利用してくださいね。
今月の回答者
社会保険労務士・FP。望月FP社会保険労務士事務所代表。大学卒業後、生命保険会社、独立系FP会社を経て独立。公的年金や保険、住宅ローン、ライフプランニングなどの個人相談ほか、セミナー講師としても活躍。
[日経ウーマン 2017年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。