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仕事でも活躍する障害者を「すごい」と言わない社会に マセソン美季さんのパラフレーズ

2017/8/11 日本経済新聞 朝刊

 7月21日、私の住むカナダの政府が、次世代のスポーツ選手への投資計画を発表した。身体的、精神的、医科学的、戦術的など、あらゆる面での強化を目指し、2020年東京大会や、それ以降でのメダル増を狙う。

 この計画を発表したのがカーラ・クワルトロー・スポーツ障害者大臣。就任した15年11月から、スポーツや障害者の環境に大きな影響を与えている。実は彼女自身、パラリンピックの水泳で3つの銅メダルを獲得したアスリート。私が目標とするパラリンピアンの一人でもある。

 東京大会では日本選手が大活躍し、国民全体が盛り上がる大会になってほしい。さらにカナダと同様にパラリンピアンが、様々な立場で決定権を持つ役職に登用されることが当たり前になる日が来るのを願う。パラアスリートが競技を離れ、社会の中でも活躍するには、世の中の認識も変える必要がある。

 例えば日本のオフィスビルの会議室やセミナー会場では車椅子でも使えるお手洗いが、別の階にしかないことがよくある。ビジネスホテルでも、車椅子が利用できる部屋は付き添いがいることを前提にツインで2人利用のため、普通の部屋より割高になってしまうところが多いし、一定期間滞在ができる短期賃貸マンションには、バリアフリーの部屋がない。

 自立した障害者が仕事で利用することが想定されていないのだ。障害のある人たちがビジネスの世界に普通にいることを考えたインフラの整備も、東京大会に向け、徐々に進むことを期待している。

 クワルトロー大臣は4人の子供の母親でもある。パラリンピアンでもある私のカナダ人の夫をよく知る彼女と会った時、「うちの夫と同じでお宅のショーンも、お父さん業をしているだけで過大評価を受けてるんじゃない?」と笑っていた。妻が不在の間、子供の面倒を見ているだけで「すごいね、偉いね」と夫が言われているうちは、働く女性への世間の認知や理解が得られていない証拠よね、と。

 障害者が要職で働くのも同じこと。それが、「すごいね、偉いね」と言われないような社会になってほしい。

マセソン美季
 1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジスピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。

[日本経済新聞朝刊2017年8月10日付]

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