機能を絞れば、上質なサービスを提供できる

――それが「日本的」と評される理由になったのはおもしろいですね。

「オープン前は、本当に泊まってくれるかなという不安もあったんです。ナインアワーズのデザインに関しては評価もされましたが、それまでにないくらい、痛烈な批判もされましたから」

アメニティーのシンプルなデザインにも柴田氏の目配りが行き届いている

「試泊したときから、カプセルユニットの考え方自体はおもしろいと思っていました。10部屋くらいの小単位から、1000部屋くらいの大規模まで自由自在に対応できますし、空いた場所に期間限定でオープンすることもできる。ナインアワーズの場合、狭くても、肌に直接触れるタオルやアメニティー、眠りの質にはこだわっています。単機能だけれど、高性能なマシンのイメージです」

「1泊数千円の宿泊施設が1泊4万円のホテルと同じフルコースで勝負しようと思うと、どうしても一つひとつの品質が下がってしまう。けれど、おいしいクロワッサンとオレンジジュースだけに絞れば、1泊数千円でも上質なものを提供できる。圧倒的なものにするためには、どうしても機能を絞り込む必要があったのです」

内部の人間になったつもりで、今も事業に参加している

――現在はどのような形でナインアワーズに関わっていますか。

「引き続き新規店のディレクションを担当していますし、ナインアワーズのデザインチームとは定期的にミーティングを開いています。1号店の頃に比べるとカプセルユニットも進化していますし、場所によってはインテリアの考え方も変えています。このプロジェクトに関してはもともと一緒に事業をする気持ちで参加するのがいいと思っていましたし、今もその気持ちは変わっていません」

「デザインの仕事といえば、かつては家電・自動車メーカーからの依頼がほとんどでしたが、最近は化学・医療機器メーカーからの依頼が増えています。彼らの多くは世界規模でものづくりをしていますが、技術は豊富でも、デザイン力が不足しています。技術を生活に取り入れるためにはデザインが必要ですし、生活に取り入れられない技術は長続きしません。デザインは技術と生活をつなぐのが得意ですから、経済活動のなかでそれが必要とされる場面は今後も広がっていく、と考えています」

(ライター 曲沼 美恵)