映画「マトリックス」の影響もあった

――カプセルホテルは今や女性にも人気です。79年当時と比べて、何が大きく変わったと思いますか。

「豊かさの価値観だと思います。例えば100万円するロレックスの時計と1万円で買えるスウォッチがあったとして、私たちはロレックスの時計が豊かでスウォッチは貧しいとは思いません。1人の人間が時と場合に応じて、両方を同じように楽しむことができます。以前は高価なものをたくさん持つことが豊かでしたけれど、今はむしろ、持たないことを豊かだと感じる人もいます。つまり、豊かさを感じるベクトルがそれだけ多様になったということです」

ナインアワーズを手掛けたプロダクトデザイナーの柴田文江氏

「コンセプトを作る過程では、従来のカプセルホテルに試泊もしてみました。重要だと感じたのは清潔感とわかりやすさです。1号店を白と黒で統一したのもそのため。それと、従来のカプセルホテルとは一線を画す圧倒的な印象にしたかった。映画『マトリックス』に、登場人物が『銃が欲しい』と言うと無数の銃が出てくるシーンがあるのをご存じですか?」

――言われてみれば、そんなシーンがあったような……。

「私はあのシーンを見て、子どもの頃に映画『スター・ウォーズ』を見たとき以来の衝撃を受けたのですが、あんな感じでカプセルユニットをつくりたいなと思ったんです。それが一番よく出ているのが成田空港のナインアワーズ。あれは『カプセルをくれ』と言ったら、一斉に並んでわっと出てきたようなイメージで作りました」

「隙間のない、シームレスな空間。壁がえぐられてそこがカプセルになっているような感じです。サインやグラフィックも、床や壁、カプセルと連続し一体化しています」

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