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旧来のカプセルホテルより格段にスタイリッシュなナインアワーズの宿泊スペース

旧来のカプセルホテルより格段にスタイリッシュなナインアワーズの宿泊スペース

「私にとって、ナインアワーズは大きな転機となるプロジェクトでした」と、プロダクトデザイナーの柴田文江氏は語る。大手家電メーカーのインハウス(社内)デザイナーを経て1994年に独立。国内外で数多くの賞を受賞している、日本で最も成功した女性デザイナーの一人だ。武蔵野美術大学教授として後進の育成にもあたっている柴田氏に、海外からの評価も高いカプセルホテルを展開する、ナインアワーズ(東京・港)の発想の原点を聞いた。

◇   ◇   ◇

転機になったナインアワーズプロジェクト

――ナインアワーズ創業者の油井啓祐氏からディレクションを依頼されたとき、最初は断ったと聞きました。

「あのプロジェクトには前任者がいて、私はその人に紹介されてカプセルユニットのデザインを担当することになっていました。ですから、いったんは『できません』とお断りしたのです」

「できるかなという不安も、多少はありました。ホテルのトータルディレクションは経験がなかったですから。ただ、やると決めてからは腹をくくりました。これはやらなければならない仕事だと、自分自身に言い聞かせた。結果的には非常に大きな転機になったと思います」

「ナインアワーズを手がけてから、モノはもちろんのこと、その周辺を含めたデザインを依頼されるケースが増えました。現在は事務所で受けている8割が、そうした総合的な仕事です」

1号店には世界中のメディアから取材が殺到した

――カプセルホテルは建築家の故・黒川紀章氏がデザインし、1979年に完成したものが最初です。どのようにしてナインアワーズのコンセプトを作っていったのでしょうか。

「黒川さんがデザインした頃とは、カプセルホテルを取り巻く環境が大きく変化しました。それに合わせて事業全体をどうデザインし直すか。しかたがないからカプセルホテルに泊まろうではなく、宿泊の選択肢として普通に考えてもらえるものにしたかった」

「コンセプトを作っている2年間、油井さんとは1、2週間に1度は会って話をしていました。午後2時に始まった打ち合わせが午後6時、7時まで続くこともありました」

「アイデアの源はすべて油井さんの言葉です。打ち合わせの席で、出張者の平均滞在時間は9時間から10時間で、そのうち寝ているのが7時間だという話をうかがい、そこからデザインチームがナインアワーズ(9時間)という名前を提案しました。都市をアクティブに楽しみたい人のためのトランジットサービスというコンセプトも、彼の言葉から発想しています」

「京都に開いた1号店は、間口5メートルほどの小さな建物。それでも、世界中のメディアから取材を受けました。雑誌の表紙も飾りましたし、ドイツの放送局からインタビューも受けました。プロダクトデザイナーとしては建築が世界へと伝わっていく情報の速さに驚きましたし、メディアとしての建築の力を再認識しました」

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