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人生を変えるマネーハック

人生100年の計 ライフ「3.0」で考えるマネープラン 人生100年時代をマネーハック(1)

2017/8/7

PIXTA

 8月といえば、夏休みの自由研究を思い出す人もいるでしょう。そこで、今月のマネーハックはファイナンシャルプランナーとして、少しアカデミックなテーマを取り上げたいと思います。それは未来のマネープランについてです。

 皆さんは書店で「LIFE SHIFT」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)という書籍を見たことはないでしょうか。14万部を超えたベストセラーです。タイトルには「100年時代の人生戦略」とあるように、来たるべき人生100年時代を生き抜く考え方を紹介しています。

 興味のある方は同書を読んでいただくとして、筆者は今回、人生100年時代のマネープランについて意見を述べたいと思います。

■人生100年時代のライフ「3.0」

 本書に連動する形で、千葉商科大学教授・日本FP協会専務理事の伊藤宏一先生は、「ライフプラン3.0」という概念を提唱しています。筆者の解釈を加えつつ、少し紹介してみましょう。

 まず、「ライフプラン1.0」というのは、団塊世代とそれ以前のライフプランのイメージです。男性は就職したらひとつの会社に勤め続けて、仕事に専念。女性は専業主婦として家事育児に専念という「家庭内分業体制」を取ります。人生は70~80年が標準で、「老後」は10~20年程度なので退職金を1年あたり10%ずつ取り崩せばなんとかやりくりできます。

 「ライフプラン2.0」というのは、バブル世代から団塊ジュニア世代がこれから歩むであろうライフスタイルです。人生は80~90年を標準とする時代になります。老後は20~25年程度を考える必要があり、退職金は1年あたり5~4%しか取り崩せません。そのため自助努力での老後資金の上積みが必要になります。

 女性も働くことが一般的になったものの、子育てを機にやむなく退職して家計維持が大変になったり、共働きを続けても旧来のモデルに引きずられて男女の家事育児のシェアがうまくいかなくなったりなど、あつれきが生じています。おひとりさまの人生やDINKS(共働きで子どもはいない)というライフスタイルも認められるようになりましたが、社会のセーフティーネットやマネープランは十分に応えられていない状態です。

 つまり、ライフプラン2.0はライフプラン1.0から脱皮を試みているものの、限界も露呈しているのです。ある意味、人生100年時代への過渡期ともいえます。

 そして、ライフプラン3.0というのはまさに人生100年時代の生き方や考え方になります。

■ライフ「3.0」で時計が変わる

 ライフプラン3.0が提示するのは、人生の「時計」が大きく変わる世界です。人生を24時間として時計の針に例えてみましょう。人生70年で社会人になる年齢が22歳、定年が55歳だとしたら、私たちは「午前7時半に社会人になり、午後7時ころに定年を迎え、残りの5時間程度が老後」になります。これがライフプラン1.0の生き方です。

 同じようにライフプラン2.0で、人生85年、65歳で定年を迎えるとすれば、私たちは「午前6時すぎに社会人になり、午後6時すぎに定年を迎え、残りの6時間程度が老後」です。

 ライフプラン3.0で定年は65歳で変わらず、人生100年を生きるとすれば、私たちの世界は「午前5時すぎに社会人になり、午後3時半ぐらいに定年を迎え、残りの8時間超が老後」に変わります。つまり、人生100年時代は3分の1が老後ということです。

 このように、老後は長期化します。35年の老後がもしあったとすれば、退職金は年あたり3%も取り崩すことができません。ライフプラン3.0では、ライフプラン1.0と同じ意識で老後の資産形成はできないのです。

 一方で現役時代の長期化も予想されます。人生100年時代に70歳まで、22歳から数えておよそ50年働くことはおかしな話ではありません。ところが、50年働くとすれば、同じスキルやキャリアは通用しません。

■これまでと異なるスキルが必要

 電子メールやエクセル、パワーポイントを覚えるというレベルではなく、人工知能(AI)の発達で仕事そのものが存在しなくなったり、低賃金化したりする可能性があります。ライフプラン3.0を生き抜くためには、新しい次元の事象への対応などこれまでとは異なるスキルが求められます。

 こういう話を聞いて、「いや、それは先のことでしょう」と思っている人は、必ず未来にそのツケを払うことになるでしょう。それはあなたの老後にも現実化する可能性が高いからです。

 厚生労働省の統計が7月27日に公表されましたが、2016年の日本人の平均寿命は男性は81歳、女性は87歳に達しています。今や女性の半数は90歳、男性の半数は84歳を迎えられるようになっています。今現役で働いている世代が老後を迎えるころ、平均寿命はさらに延びていることでしょう。

 「人生100年時代」への対応ができていないままセカンドライフに突入し、老後の35年を歩むというのは無謀というより絶望になってしまいます。筆者はこれまで何度も何度も、長すぎる老後への備えを急ぐようアドバイスをしてきました。これを機に、100歳の人生を意識してマネープランを組み立てましょう。次回はライフプランにおける具体的な提言を行いたいと思います。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
 AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)など。http://financialwisdom.jp

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