2大女子アイドルフェスが新機軸 スター発掘に注力
夏休みになると、活動が活発になるのが女子アイドルシーン。2016年は毎夏開催の2大アイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」(TIF)、「@JAM EXPO」はともに規模拡大を図ったが、今年は様子が異なる。ブームの先行きを懸念して、シーンの底上げを強く意識。アイドルの素顔を発信したり、スターの発掘に力を注ぐ。
AKB48が5月発売の最新シングル「願いごとの持ち腐れ」で初週130万枚以上売り上げ、乃木坂46は今夏、大規模な全国ツアーを開催と、アイドルシーンは右肩上がりが続くように見える。だが、フェスの運営者は「幅広く知られる、新しいアイドルが生まれづらい」(TIF2017総合プロデューサー菊竹龍氏)、「好きなアイドルだけを深く追い、他には興味を持たない『タコつぼ型』のファンが増えている」(@JAM総合プロデューサー橋元恵一氏)と、ブームの先行きに危機感を抱く。
こうした危惧から、今年は両フェスともに新たな人気者を生み出すためのきっかけ作りに力を入れている。TIFはチェアマンにHKT48兼STU48の指原莉乃を起用。毎回異なるアイドルをゲストに迎え、司会の指原が舞台裏の様子や本音を引き出すバラエティ番組「この指と~まれ!」(フジ系)を放映している。番組の狙いを菊竹氏は「指原さんと様々なアイドルの出会いのストーリーを生み出したい」と話す。でんぱ組.incとその妹分、妄想キャリブレーションが出演した回では、ステージ上だけでは分からない厳しい上下関係のエピソードを指原が引き出した。アイドルの素顔を発信していくことで、TIFは番組を通して視聴者が親近感を抱いたアイドルのパフォーマンスを初めて楽しむ場となるだろう。
さらにTIFが力を入れているのが地方発アイドルの発掘だ。日本全国を8ブロックに分け、最終選考ライブ来場者らの投票により各ブロックの優勝者を決定。TIFへの出場権を与えた。
@JAM EXPOのコンセプトは「『推し』以外のアイドルにも興味を持つきっかけ作り」(橋元氏)。2年ぶりとなる会場の横浜アリーナには計7ステージを設置。お目当て以外のアイドルのステージも目に触れやすい構成とした。イベントの盛り上げ役として、メジャーとインディーズ混成の期間限定ユニット「サクラノユメ。」を結成。加えて、@JAM EXPO限定で東京女子流とsora tob sakanaなどメジャーとインディーズアイドルが競演するステージを複数展開するという。
両運営が先々に意識しているのが2020年の東京五輪。「パワフルなアイドルシーンを世界に向けて発信できるように市場を拡大していければ」(菊竹氏)、「外国の方が日本文化を体験する場としての、アイドルのステージを立ち上げたい」(橋元氏)とそれぞれの構想を明かす。シーンの底上げを強く意識する今夏の2大フェスから、AKB48グループや坂道シリーズに続く将来のスターが生まれる可能性もあるだろう。
(「日経エンタテインメント!」8月号の記事を再構成。敬称略。文/伊藤哲郎)
[日経MJ2017年8月4日付]
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