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キリンビール社長の布施孝之氏

キリンビール社長の布施孝之氏

2017年夏。キリンビール社長、布施孝之の耳に8年前、定年間近の社員が発したあの言葉が蘇(よみがえ)ってきた。「まさかこの年齢になってこんな素晴らしい仕事ができるとは。定年後の残りの人生を誇りをもって生きられます」――。この社員の言葉に布施はゆるむ涙腺を引き締めるのに懸命だった。

アサヒの牙城、大阪でシェア拡大

09年の年末のあの日。キリンビールの大阪支社は盛り上がっていた。会社は9年ぶりにビール系飲料市場でトップの座を奪還、布施が率いる大阪支社は会社のシェアアップに貢献したとして「キリンビール大賞」を受賞したのだ。それが祝勝会での年配社員の言葉に会場は一瞬、静まりかえった。

布施が大阪支社の支社長として赴任したのは08年。大阪支社は全国の支社の中でも「とにかく運営が難しい」とされていた。成績が目立って悪いわけではない。ただ、活気がないのだ。関西はアサヒビールの牙城でベテランを中心に「遮二無二やっても、できることは限られている」といった雰囲気が支配的だった。

さぼるわけではない。必要以上には頑張らない。それぞれの営業担当者が目標値に達したらそれで終わり。それ以上は決してやらない。「義務を果たしたらそれでいい」という感じだった。

代わりに不満は山ほどあった。布施が支社のメンバー60人全員と面接するとどんどんと不満が噴き出してきた。「戦略が悪い」「販促金が全然足りない」などなど。とどまるところを知らなかった。

ラガー路線を転換

「それなら」――。布施はある秘策を繰り出した。これまで大阪支社で常識とされてきた「大阪は『ラガー』」という路線を切り替え、「一番搾り」一本で攻勢をかけることを指示した。

「大阪はお好み焼きやたこ焼きみたいに、こってりした料理が多い。ビールも『ラガー』のようにしっかりした味のものがウケる」といった固定観念にどっぷりはまり「一番搾り」にそれほど力を入れてこなかった。

ちょうどこの年、「一番搾り」は大幅なリニューアルを実施、布施はそれを攻めどころと見たのだった。「ワインなど他の成果指標はやらなくてもいい。本社から文句があっても自分が責任をとる」

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