年金・老後

定年楽園への扉

退職後だからこそ楽しめる 生涯学習というぜいたく 経済コラムニスト 大江英樹

2017/8/10

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 会社を定年退職した後の過ごし方は人さまざまです。最近では定年後も会社に残って再雇用制度で働く人が多いようですが、私のように会社を辞めて独立して仕事をしている人も増えてきています。

 一方で、全く仕事はせずにボランティア活動などに精を出している人もいます。お金に余裕がある人の中には、趣味三昧の暮らしを送っている人もいます。

 どれがいいとか悪いということはありません。少なくとも一定の年齢まで一生懸命働いてきたのですから、その後どのように過ごそうが、全くの自由です。

 やりたいことがなくてこれから探す人もいるでしょう。そこでお勧めしたいのが「生涯学習活動」です。私の先輩は定年後に大学の聴講生になっています。実をいうと、私も会社を辞めた後の一時期、生涯学習に少し携わったことがあります。ある大学の研究機関で特別客員研究員として自分の研究テーマを持って活動していたのです。

■勉強自体が目的なら楽しい

 でも、「勉強」というと多くの人にとって、あまり良い思い出はないかもしれません。学生時代は勉強嫌いで、試験の前日に気が重くなるといった経験を持つ人は少なくないようです。

 社会人になってからの勉強も大変です。学生時代は勉強嫌いで済ませられるかもしれませんが、社会人の勉強は業務上必要な資格を取得するためだったり、昇格のための試験だったりの、死活問題です。これらもなかなか憂鬱なものでしょう。

 学生にしろ社会人にしろ、共通しているのは勉強が目的ではないことです。「試験に合格する」「資格を取る」といったように、何かを得るための手段として「仕方なく」勉強しなければならないのです。そんなものが面白いはずはありません。

 ところが、勉強が手段ではなく、それ自体が目的ならどうでしょうか? 実はこんなに楽しいことはないのです。これは経験のある人でないとわからないと思います。

 私がテーマを持って研究をしていたのは、古都の歴史、文化、習俗についてで、全くの個人の興味に基づくだけのものでした。多くは実生活には何の役にも立たない知識であり、時間と手間をかけて行うのは最高のぜいたくといえます。経済効率という言葉とは最も遠いところにある行動ですから、リタイアした人ぐらいしかできないでしょうし、逆にそういう人だから楽しくやれるのです。

 それに生涯学習活動はやり方にもよりますが、お金はあまりかかりません。フィールドワークで海外に出かけるとか、全国を旅して回るといったようなかなり専門的な活動でもしない限りは、お金は要らないのです。私も文献を調べるために図書館に行ったり、ネットに載っている論文集を閲覧したりということを熱心にやりました。お金はかかりませんが、時間だけはやたらかかりました。だからこそリタイアした人にピッタリなのです。

■若者との交流という利点も

 また、若さを保つ上でも学習活動は役に立ちます。大学にもリタイアしたシニア層の人たちがたくさん授業に出ていますが、面白いことにとても勉強熱心です。毎回必ず出席して若い学生のためにノートをコピーしてやったりしています。

 私も自分がシニアの年齢になってわかりましたが、若い人たちとの交流はとても楽しいものです。「あ、〇〇さん、すみません。いつもノート見せてもらって」といったようなことをいわれたら、ついつい張り切ってしまうでしょう(それをすることが若い人のためになるかどうかは別問題ですが)。

 これまでも述べてきたように、老後は現役時代には考えもしなかった「孤独」に襲われるリスクがあります。老後資金をしっかりつくっていても、このリスクからは逃れられません。

 大事なことはいつまでも知的好奇心を持ち続けることです。そういう意味で生涯学習は、若者との交流などさまざまなメリットがあるということを知っておいたほうが良いでしょう。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は8月24日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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