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転ばぬ先の生前整理 放っておけば遺品の山に 終活見聞録(10)

2017/8/4

外資系の保険会社であるPGF生命(プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険)が昨年実施した「人生の満足度に関する調査2016」によれば、人生の総括として「“元気でいられるうちに是非これはやっておきたい・やってみたい”ということ」(複数回答)を聞いたところ、「相続や遺品整理の段取りをしておく」と答えた人は18.4%だった。「行きたかった場所へ旅行する」「お世話になった人に感謝の気持ちを伝える」などに比べると少ないが、年齢が高いほど多くなる。特に50代女性と60.70代女性は他の層より高く、「片付けをしたい」との思いがうかがえる。サマンサネットの杉之原社長も「講演すると本人である親たちが多く聞きにくる。片付けしたいという意欲の表れだろう」と話す。そんな思いをどう実現に結び付けるかがカギだ。

PGF生命調べ(2016年)

■整理業者、比較して選ぶ

同居家族がいれば一緒に片付けられるかもしれない。だが、ひとりでは難しい。子どもや親戚がいても離れていたり、仕事が忙しかったりでは頼めない。かといって放置して自分が死ねば整理はそんな家族にまかせることになる。物が多いほど残された家族の負担は増える。賃貸物件なら、早急に片付けないと家賃が加算されてしまう……。近年の終活や片付け人気もあって生前整理の需要は増している。事業者は6000社に上るともいわれる。

生前整理や遺品整理をするのに資格は特に必要なく、だれでも参入できる。業者は玉石混交。ヤマトホームコンビニエンスのような大手もあれば、個人の事業者もある。中には「最初に頼んだ業者と違う会社が何の説明もなくやってきた」「マナーやモラルが低く、作業が粗くて不安になった」というクレームもある。また「産業廃棄物処理業者の資格を持っていないケースもあり、引き取った物を違法に捨てて、あとで問題になることもある。事前に確認したい」と第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は注意する。葬儀などと同様に、まずは見積もりをとって内容をしっかり確認したい。できれば見積もりも複数の業者からとり、比較して選ぶことも重要だ。実際の作業には可能な限り立ち会いたい。

ワンポイント:生前整理に立ち会った

千葉県内の一戸建てで実施した生前整理作業のひとこま

5月下旬にリリーフが手掛けた生前整理に同行した。1年半前に夫を亡くした千葉県在住の78歳の女性の家だ。築40年近い一戸建ての家には夫婦だけではなく、独立した息子たちの荷物も多く残っていた。「このままじゃいけないと思っていた。でもなかなか踏ん切りがつかなくて」。息子たちの勧めもあって片付けを同社に依頼した。

前もって見積もりは終えており、主な不用品などがすでに雑然と置いてあった。整理作業はメンバー6人で朝9時に始まった。女性や息子たちも立ち会った。室内ではそろいのポロシャツを着た同社のメンバーが所狭しと動き回る。ある者は履物を箱に詰め、またある者は台所から戸棚を運び出す。途中で写真や手紙などが出てくると女性に捨てるか、保存するか確認を求めた。お金や通帳などの貴重品が出てきても同様だ。作業は午後3時にほぼ終了した。処分品は2トントラックで5台分。家具やベッドなど3分の2は再利用で同社が引き取り、残ったゴミは後日回収される。費用は約36万円だった。

リリーフによれば、多いのは亡くなった親の遺品整理を子どもが頼むケース。一方で「高齢のおひとり様の生前整理も目立ってきた。ひと部屋だけで10万円以下という事例も多い」と赤沢知宣おかたづけ事業部長は話す。「家族に迷惑をかけたくない」と話す依頼者も少なくないという。

(マネー報道部 土井誠司)

[日経回廊の記事を再構成]

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