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働き方改革、残業削減だけでは失敗する 日経BP総研マーケティング戦略研究所長 麓幸子

日経BP総研マーケティング戦略研究所

2017/8/10

つまり、企業経営者がマネジメントすべき人たちのメンタリティーが変化しているのだ。家事・育児・介護という私的領域のタスクを「奥さん」に任せて仕事にまい進してきた人たちは、組織の中で少数派となった。片働き世帯数と共働き世帯数は20年も前に逆転し、その差は年々増加、今や共働き世帯は片働き世帯よりも427万世帯も多くなった(2015年)。若い世帯では共働きが当たり前で家事・育児を夫婦双方で担う。一方、介護と仕事の両立が問題となるシニア層は今後加速度的に増える。時間の制約や制限が生じる可能性のある「新しいマジョリティー」が組織の中で台頭しているのだ。

一方、これから社会に出る若手層は、残業も転勤にも拒否感を持つ。日本経済新聞社の行った「就活学生100人アンケート」では、6割が「月40時間を超える残業はしたくない」と回答している(日経電子版2017年6月1日)。

残業時間削減は重要であるが、単に時間を減らすだけでは解決しない様々な問題がある。新しいマジョリティーに即した人材マネジメント、労働生産性を上げる仕組みが必要になってくる。

■生産性向上には「エンゲージメント」がカギとなる

「働き方改革は、労働生産性の改善の最良の手段であるとされていますが、しかし、労働生産性と働き方改革がうまく結びついているかというと疑問が生じます」と指摘するのは、我が国のリテンションマネジメント研究の第一人者の青山学院大学経営学部教授の山本寛氏だ。

山本寛青山学院大学経営学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業。その後、銀行等に勤務、大学院を経て現職。博士(経営学)。メルボルン大学客員研究員歴任。日本経営協会・経営科学文献賞、日本労務学会賞・学術賞、経営行動科学学会・優秀事例賞など受賞

山本教授によると、「働き方」改革とは、長時間労働是正のように「働く時間」など仕事の外形的、形式的側面を問題とするが、働く時間が短くなったから労働生産性が上がるというものではないという。

「働き方改革で一番改善されるものは『働きやすさ』であろうと思われますが、それだけでは労働生産性向上は困難です。それと同様に、仕事の内容的側面としての『働きがい』が重要なのです。厚生労働省の調査でも『働きやすさ』よりも『働きがい』が業績に結びつく率が高くなっています」

では、働きがいとは何で表されるかというと「エンゲージメント」だという。これまでは、働きがいというと「モチベーション」という言葉と結びつけて語られることが多かったが、これは実は指標化が難しい。近年では、定量化、数量化され、国際比較も可能な指標であるエンゲージメントが注目されている。エンゲージメントとは、「会社の成長と自分の成長を結び付け、会社が実現しようとする戦略・目標に向かい自らの力を発揮しようとする自発的な意欲」である。つまり高業績につながる企業と個人の結びつきのことを指す。このエンゲージメントの向上こそが、生産性、売上高に影響を与えると山本教授は言う。

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