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働き方改革、残業削減だけでは失敗する 日経BP総研マーケティング戦略研究所長 麓幸子

日経BP総研マーケティング戦略研究所

2017/8/10

PIXTA

 「働き方改革」に関するニュースをメディアで見ない日はない。政府が最重要なテーマととらえ、2017年3月には「働き方改革実行計画」を決定した。多くの企業も、今、「働き方改革」に注力している。16年の電通の新入社員の労災自殺認定以降、「働き方改革」に関する潮目が大きく変わった。いわば、本気で「働き方改革」に取り組まなければいけないという機運が盛り上がっている。皆さんの会社でも、定時退社やノー残業デ-、テレワーク実施など働き方改革に関する取り組みが実施されていることと思う。

 日本は長時間労働の国である。これまで、働く人の時間は制限がないものと考えられてきた。「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業に基づき、家に「専業主婦」がいることを前提に仕事は成り立っていた。企業は、そのような時間制約・制限のない男性を基準として従業員を働かせてきた。「長時間労働は美徳」という価値観や従業員に際限のないガンバリズムを強いる企業風土が生まれ、それが何とも痛ましい過労死や過労自殺を生んできた。だからこそ、長時間労働を是正する「働き方改革」はとても重要である。ようやく、日本は、「働く人の時間は有限である」と気づいたのだ。

 しかし、一方で、「働き方改革」に関する課題も見られる。残業時間削減といっても業務が減らないため実際は持ち帰り残業が発生していたり、会社からは「残業するな、売り上げも落とすな」と言われたりする。経営者側は、労働基準法違反にならないよう残業時間削減の旗を振るものの、本音の部分では、労働時間という資源が減ることで売上も縮減してしまわないかと懸念している。4月に発表されたロイターの調査では、新たに導入される残業上限規制の結果、事業に支障が出ると回答した企業が約4割に上っている。

 急ごしらえの「働き方改革」による弊害がそこかしこで散見される。いったい何をKPI(key performance indicator:目標達成のために見るべき指標)とすればよいのか、どの課題から手をつけたらいいのか、PDCA(plan-do-check-act:計画、実行、評価、改善の4段階を繰り返すことで業務を改善するサイクル)をどのように回していくのか、様々な混乱が生じている。

■「熱意のある社員」は6%のみという衝撃

 「日本は熱意あふれる社員の割合が6%しかおらず、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった」――17年5月26日付けの日経電子版に掲載された米ギャラップ社の従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査の結果は、筆者には衝撃的だった。世界経済フォーラムが発表する男女のギャップを示す「ジェンダーギャップ指数」で、2016年に日本は世界144カ国中111位と過去最低のランキングとなったのだが、それよりも低い順位だったからである。会社に高い帰属意識を持ち、「会社人間」と称された日本の社員像は今や昔だ。記事の中でギャラップのジム・クリフトン会長は、「日本で60~80年代に有効だったコマンド&コントロール(指令と管理)がミレニアル世代には効かなくなっている」というコメントを寄せている。

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