公務員の彼、奔放な私 「結婚話」に気持ちが冷めて[増山晴美さん(仮名) 第2回]

2017/8/11

キャリア女子ラブストーリー

こんにちは。ライターの大宮冬洋です。激情的な恋愛をしてきたと告白する高校教師の増山晴美さん(仮名、40歳)と語り合っています(前回記事はこちら)。20代後半で恋に落ちた秀行さん(仮名)に対しては、好きすぎるのでわざと困らせるような言動を繰り返し、揚げ句に振られてしまったそうです。

若い頃ってバカなことばかりしちゃいますよね。自分が気持ちよくなることを追い求めるあまり、一番大事にしなくちゃいけない相手をないがしろにしてしまいがちです。関係が壊れてから激しく悔いる。後悔先に立たず、覆水盆に返らず、ですね。手痛い教訓を得て、大事な人とはまっすぐに向き合うことの大切さを学んだり、学ばなかったり。

30歳の頃の晴美さんは反省をするには元気すぎたようです。秀行さんとの別れにはショックを受けていましたが、友達にセッティングしてもらった10対10の「丸ビル合コン」ですてきな男性を見つけます。3歳下の公務員、雅也さん(仮名)です。

「見た目は普通です。話は面白くない。でも、私がしゃべりまくっていれば問題ありません。彼とはフィーリングが合うことが最初からわかりました。私、そういう相手を見抜く目だけはあるんですよ」

晴美さんは銀座のクラブでホステスのアルバイトをしていた経験もあります。恋愛の相手選びに関しては、表面的なものではなく「男女としての相性」を見きわめる力があるようです。元来の鋭い勘を豊富な経験で磨いた結果でしょうか。こういう人は恋愛に一生苦労しない気がします。

「まだ32歳、好きに生きていたい」

「とにかく人間ができている人でした。私は言い方もキツイし、モノの扱い方も雑だし、お金はあるだけ使ってしまいます。宵越しの金は持たねえ、みたいな姿勢です。いつもお金がなくて困っていたら、彼に『貯金はいくらあるの? 財布が汚いね。お金はもっと丁寧に扱うべき』と指導されました。付き合っているときはうるさいなーと思っていたのですが、女友達からは『晴美にもの申してくれる男性が初めて現れた。その人を失ったら絶対ダメ』と警告されたんです」

しかし、晴美さんは友だちの警告を無視します。「地に足がついている大人」の雅也さんから結婚を申し込まれたときに、まったくその気になれなかったのです。

「当時の私はまだ32歳ですよ。海外旅行には年2回は必ず行くし、好きなものを食べたり買ったりしたい。結婚話が出た途端に彼のことが嫌になってしまいました」

雅也さんは晴美さんとの交際をスムーズにするために近所に引っ越してきてくれていました。真面目な男性なのです。その彼とケンカしたわけでもないのに、結婚話をされただけで気持ちが冷めてしまう。晴美さん、オリを嫌う野生動物みたいな人ですね……。

「ちゃんと話をして別れました。後腐れはありません。でも、女友達からは『バカじゃないの?』とあきれられました」

あきれられて当然ですが、「ちゃんと話をして別れた」のは偉いと思います。そうしないと、雅也さんが次に進みにくくなってしまうからです。

僕の想像にすぎませんが、今ごろ雅也さんは別の女性と結婚をして幸せな家庭生活を送っているのではないでしょうか。妻子を愛してはいますが、ごくたまに晴美さんを思い出すのです。ハチャメチャな人だったな。もし結婚していてもうまくいかなかっただろう。でも、すごく魅力的だった。楽しかった。自分にとって、あんな女性と恋愛ができたのは奇跡だったと思う――。

誰の心にも宝物のような恋人の思い出があったりしますよね。最終的に結ばれなかったとしても、人生の大切な彩りではないでしょうか。

一方の晴美さんは、しっかり者の雅也さんと別れた後は、解き放たれたように「肉食生活」に突入します。続きはまた来週。

大宮冬洋
 フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に「30代未婚男」(共著/NHK出版)、「バブルの遺言」(廣済堂出版)、「私たち『ユニクロ154番店』で働いていました」(ぱる出版)など。電子書籍に「僕たちが結婚できない理由」(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京・愛知・大阪のいずれかで毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/

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