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「白ワキ姫」 女性の悩み解決した男性開発者の目線

日経トレンディネット

2017/8/7

ものづくりをしたいと、広告代理店から転職したリベルタの真田哲矢部長。通販事業部からキャリアをスタートし、発想の豊かさが認められて美容企画開発部の部長に抜てきされた。スタッフは5人。真田部長の他は全員女性だ
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 今、20~30代の女性たちの間で「こういうものが欲しかった」と話題を集めているコスメがある。それが「himecoto」だ。

 初めて商品名を聞いたという読者も多いだろう。それもそのはず、広告展開はほとんどしていない。ひと目で目的が分かるパッケージや売り場のPOPで女性に共感を呼び、人気に火がついたパーツ専用コスメだからだ。

 ワキの黒ずみや汚れを落とす「白ワキ姫」、脚の毛穴や黒ずみを塗ってカバーする「白アシ姫」、指先のシワを目立たなくする「白ゆび姫」など、他人には言いづらい女性のデリケートな悩みを解決するために考案されたhimecotoは2014年に発売され、2017年6月までの累計販売個数は99万6117個に上る。ニッチな製品としては大ヒットである。

 まさに、かゆいところに手が届く「ニッチなコスメ」に興味を引かれ、販売元のリベルタが開催した展示会を訪れた。広報担当者にどのような人が開発をしているのかを聞いたところ、男性が担当しているという。しかも、「自分には無頓着なのに、女性の悩みをつかむのがうまい」らしい。

 ここまで女性の悩みを的確に捉えることができる男性とは、一体どのような人物なのだろうか。himecotoがどのように生まれたのかを探るべく、開発担当者を訪れた。

■男性目線で考えたからこそヒット

 開発したのは、美容企画開発部の真田哲矢部長。自分に無頓着と聞いていたので、「髪に寝ぐせでもついているのだろうか」と想像していたのだが、実際はその反対で、物腰柔らかで爽やかな印象だ。

 「もともとは通信販売の企画営業でしたが、4年前に今の部署に配属されました。私自身は美容オタクではないので、社内でも無頓着なほうかもしれません(笑)。男性だから男性のものを作りたいという感覚はあまりなくて、女性の悩みを解決するものを作るほうがやりがいを感じるんです」(真田部長)

 「きれいな女性でも、きっと何か悩みを抱えているんじゃないか。男性目線で女性の悩みを捉えたのが、himecotoの始まりです」と真田部長。そのきっかけは、電車の中で偶然目にした、ある光景だったという。

 「僕の前にノースリーブを着た美しい女性がつり革につかまって立っていたんです。ふと見上げると、ワキが黒ずんでいるのが目に入ってしまって……。これは衝撃を受けましたね。それと同時に、もしかしたらワキの黒ずみに悩んでいる女性は多いのかもしれない、と気づいたんです」(真田部長)

 早速インターネットなどで情報を収集したところ、ワキの黒ずみに悩んでいる女性が意外に多く、社内の女性スタッフからも「ワキの黒ずみはなかなか人に言いづらい」「裸になるよりもワキを見せるほうが恥ずかしい」という意見が寄せられた。

 「市場ではちょうどデリケートゾーン用の石けんが出始めたころで、店舗でも売り上げの実績が出ていました。以前なら通販でしか買わないような商品を店舗でも手に取るという、消費者の意識が変化してきた時期だったので、ワキの黒ずみに特化した商品の開発に踏み切りました。テーマは“隠れてこっそりするケア”です」(真田部長)

■主軸商品「白ワキ姫」がアジア圏で大ブーム

 開発に1年をかけて完成したのが、古い角質をピーリングしながら肌をホワイトニングする「白ワキ姫」だ。himecotoの第1弾コスメとして、2014年から販売されている。

 「実際の使用感は女性でないと分からないので、開発段階で社内のスタッフや妻に協力してもらい、モニタリングしました。社内のスタッフに聞きづらいことも妻には掘り下げて聞けたので、助かりましたね」(真田部長)

 売り上げも好調で、2016年には寝る前に塗るワキ専用の美白パック「白ワキ姫 ナイトパック」を発売。さらに、「洗濯板構造」でワキについたデオドラント剤を落とす「白ワキ姫せっけん」も2017年3月に発売した。白ワキ姫シリーズの2017年6月までの累計販売個数は75万445個に及ぶ。

ピーリングとホワイトコーティング効果によって、約30秒で白く美しいワキになる「白ワキ姫」(1250円)は累計約70万個を突破。就寝時専用の美白パック「白ワキ姫 ナイトパック」(1400円)も好調

 ヒットの理由の一つがパッケージだ。白ワキ姫のパッケージを見ると、使い方や効果がひと目で分かるデザインになっている。

 「himecotoはまずバラエティーショップでテスト販売し、反応が良い商品をドラッグストアで販売しています。白ワキ姫はドラッグストアでも展開していますが、ドラッグストアは商品数がバラエティーショップより圧倒的に多く、さらに顧客の年齢層もさまざまなので、数ある商品の中で手に取ってもらえるよう、パッケージは分かりやすくしています。商品開発の中で、パッケージデザインにかける時間が一番長いかもしれません」(真田部長)

 また、海外での展開も売り上げに貢献している。同社では20年前から「Baby Foot」という足の角質ケアブランドを展開しており、累計販売個数が1400万個以上と、同社の売り上げの半分を占める主軸製品となっている。これらは海外の美容展示会に参加するなどして地道に海外にも販路を広げ、現在では世界50カ国以上で販売。中国には現地法人(上海李瑠多貿易有限公司)も設立している。

 そのネットワークを活用し、白ワキ姫も海外での販売をスタート。韓国やマレーシアなど、美白への意識が高いアジア圏での売れ行きが好調で、韓国の竹下通りともいえるソウルの明洞にあるドラッグストアでは、白ワキ姫が1日に1000個売れたほか、マレーシアでは1日100個以上がネット通販で売れているという。

 「今後はシンガポールや台湾、中国での販売も考えており、実現すれば国内の売り上げを上回る可能性があります」(真田部長)

■白く美しい「生足」になるためのクリーム&乳液

 白ワキ姫シリーズの次に売り上げが高いのが白アシ姫シリーズ。生足ブームで、傷や黒ずみは気になるけれどストッキングははかないという女性たちに向けての提案だ。2016年から販売している白アシ姫は脚用ボディーファンデーション。塗るだけで毛穴をカバーし、透明感のある脚を演出してくれる。

 「開発で一番苦労したのは、すべての女性の脚の色にマッチさせること。肌なじみがよく、洋服につかない色を突き詰めた結果、肌色に関係なく脚を輝かせる白色のクリームにたどり着きました」(真田部長)

「白アシ姫」(1400円)。ホワイトラベンダーの香りが心地良いクリーム。伸びがよく、塗るだけで肌がワントーンアップするので、これを使えば素足を見せることに抵抗がなくなりそうだ

 そして、根本からの美白ケアを目的とした商品として、毛穴のブツブツや炎症を抑える就寝時専用の「白アシ姫ホワイトニングミルク」を2017年2月から販売。白アシ姫シリーズの2016年7月~2017年6月までの累計販売個数は10万4505個、売り上げの伸び率は3倍を記録した。

■競合が多い「角栓ケア」市場に挑んだ「ツルハナ姫」

 売り上げ第3位は、真田部長が「himecotoシリーズで唯一ニッチな商品ではない」という、鼻の角栓専用の「ツルハナ姫」。

 「鼻パックなど、鼻の角栓ケアは元々市場にあり、さまざまな商品が販売されていましたが、あえて挑戦しようと企画した商品です。あかすりのようにボロボロ角栓が取れるインパクトのある商品を作り、既存のマーケットに挑戦しました」(真田部長)

 2016年5月から販売を開始し、累計販売個数は6万8052個。バラエティーショップだけではなく、ドラッグストアでも展開している。

「ツルハナ姫」(1250円)
試してみると、クセになる使い心地。クリームをこすると、本当のあかのようにボロボロになり、汚れがすっきり落ちた

■SNS映えする、美しい手元を作るクリーム

 「日本初、あるいは世界初のコンセプトだと思います」と真田部長が自信を持って薦めるのが、塗るだけで指のシワを目立たなくする白ゆび姫だ。2016年10月から販売し、累計販売個数は5万7139個。2017年の約半年で売り上げが3倍にも伸びた、今一番勢いのある商品だという。

 「Facebookに、20代の女性が自分のネイルをアップしていたんです。そのコメント欄に『指のシワが気になる』と書かれていて、20代でも指のシワが気になるんだと驚きました。それから社内のスタッフの手をこっそりチェックして(笑)。20代でもシワが目立つ人が結構いる、と気づいたんです。企画を出したときは、上司からも『ニッチすぎる』と言われましたね(笑)」(真田部長)

 現在はバラエティーショップでの販売だが、今秋からはドラッグストアにも販路を拡大。さらに、手のシミやシワ、くすみを改善する新製品も開発中だという。

「白ゆび姫」(1200円)を使用する前の手
諦めていたアラフォーの深いシワでも目立たなくしてくれたのには感涙。SNS映えするのはもちろん、名刺を渡すときなどにも手元が気にならなくなりそうだ

 そのほか、紫外線によるメラニンの生成や乾燥などにより黒ずんでしまった唇をケアする「美唇姫(びじんひめ)」(1400円)、黒ずみが気になるひざに塗り、洗い流すことで白くしていく「白ひざ姫」(1300円)など、全11種類の商品を展開している。

 「先日リピーターの人たちを集めて座談会を開いたのですが、弊社の商品に対して一番求めたいのは『根本的な解決』だという意見をいただきました。今後もそれを命題として、企画開発を続けたいと思います」と熱く語る真田部長。女性の悩みを解決する「ニッチ」なコスメに、これからも期待していきたい。

(ライター 小口梨乃)

[日経トレンディネット 2017年7月11日付の記事を再構成]

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