炎天下の東京五輪に「オアシス」を 冷やす技術競うひんやりベンチ/ぬれにくいミスト/水滴る壁

ベンチの座面の下には電子部品の「ペルチェ素子」が取り付けられている(東京都千代田区の日建設計本社)
ベンチの座面の下には電子部品の「ペルチェ素子」が取り付けられている(東京都千代田区の日建設計本社)

2020年東京五輪・パラリンピックが開かれる7月下旬から9月上旬は暑さのピークで、気温が40度近くまで上がる可能性がある。アスリートや観戦する人の負担を少しでも軽くしようと、屋外で涼をとるための技術開発が日本企業の間で急ピッチで進んでいる。都会版「オアシス」の最先端の事例を紹介する。

ベンチの座面の裏側に「電子部品」

「おっ、これはヒンヤリだね」。腰を下ろした人たちは一様に、ピクッと背筋を伸ばすような反応をする。建築設計を手がける日建設計などが開発したベンチだ。

日建設計などの「クールベンチ」は日よけ、ミストと組み合わせることを想定している(写真はイメージ)

ヒンヤリ感の秘密は、金属製の座面の裏側に装着した「ペルチェ素子」という電子部品にある。異なる2種類の半導体の両端に金属板を取り付けて電流を流すと、熱の移動によって片側の金属板が冷たくなり反対側が温かくなる性質を利用している。通常はパソコン内部の発熱を抑えたり、ワインセラーや小型冷蔵庫などを冷却したりするために使われており、ベンチを冷やす用途は珍しい。

日建設計、村田製作所、集成板大手の銘建工業(岡山県真庭市)、噴水製造の光栄(大阪市)の4社は、このベンチに太陽光を遮る屋根、屋根の下から噴射するミストを据え付け、「ゼロエナジー・クールスポット」として18年夏にも実用化する。

利用する人の体感温度は、複合効果で10度近く下がるという。屋根の上には太陽光パネルを設置してペルチェ素子やミストに必要な電力を賄うため、環境にも優しい。東京五輪・パラリンピックの関連施設を中心に普及させる計画だ。

下から冷やす発想のベンチは積水樹脂も開発に着手している。地下水をくみ上げて、それを座面の下にあるパイプに通す仕組みだ。地下水は夏でもセ氏17度程度なので、ベンチの座面を冷たい状態に保てる。昨年夏に環境庁の外郭団体、環境情報科学センターが埼玉県で手掛けた実験に参加して有効性を確認したという。バス停などの施設のほか、テニスコートや野球場などのベンチにも活用できるとみている。

「ぬれた」と感じる前に蒸発

パナソニックが開発したミスト。高さ3メートルから噴射されるさまは煙のようにも見える(東京都江東区の展示施設「パナソニックセンター東京」)

一方、上からミストを噴射する技術に磨きをかけているのがパナソニックだ。水の粒の大きさは15マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリメートル)で、通常のミストの約10分の1。あまりに粒が小さいため、人がぬれたと感じる前に蒸発してしまう。いわば「ぬれない」ミストだ。

水の粒が小さいため、「ぬれた」と感じる前に蒸発する

同社の展示施設で体験してみた。金属製の柱の高さ3メートルほどのところに穴があいていて、内部のノズルから「シュー」という音とともに白い煙のようなものが吹き出している。柱の半径1メートル以内に近づくと、煙の当たる顔や首筋、腕がヒヤッとするが、ぬれた感じがしない。

ノートを開いてみても、紙が湿った感じにならない。ボールペンでもインクがにじむことなく文字が書ける。柱の上部、ノズルの30センチメートルまで手を近づけて、ようやくぬれたような感触になり、吹き出しているのが煙ではなく水だと実感できた。

秘密は半導体の洗浄技術を応用した「2流体ノズル」にある。水に空気をまぜたうえで圧力をかけて噴射することで、粒を小さくできる。圧力が2.5気圧と低いため騒音も小さい。ミストが拡散して冷却効果が薄れないように、ノズルの上から風を送り出して空気の壁(エアカーテン)を作り出す。