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中古マンション、プロが診断 「リノベ物件」は要注意

2017/8/11

PIXTA

 広さや間取りを重視して新築ではなく、あえて中古マンションを購入する人が増えている。心配なのは築年数の古さからくる設備の劣化やトラブル。夢のマイホームも住んでみたら欠陥住宅では台無しだ。安心して中古マンションを買うために、契約前に住宅の様々な問題を第三者の目で点検してくれる住宅診断サービスの利用が広がっている。

 「不安なく子育てのできる家かどうか、事前にプロに診断してもらい、契約に踏み切れた」。こう話すのは横浜市のAさん(29)だ。2月に築27年の中古マンションを約2000万円で購入。夫と1歳の子どもと、まもなく入居する予定だ。

 Aさん夫婦は目星を付けた物件について住宅診断をしてもらおうと、診断士をインターネットで探した。住宅診断とは、住宅の劣化度合いや安全性を第三者の診断士が点検するサービス。「ホームインスペクション」ともいわれ、診断士の多くは1級建築士などの専門資格を持つ。「配管や設備の劣化度合いは素人には判断が付かない。入居前にどこまでリフォームすべきかも含めてプロに判断を仰ぎたかった」とAさんは話す。

柱などの傾きを測定する住宅診断士

■床や壁、配管劣化を点検

 診断では床の傾斜や壁や柱の腐食、配管の劣化状況などを確認する。依頼内容によっても異なるが、一般に5万円程度の費用がかかる。住宅診断士の取りまとめをするNPO法人日本ホームインスペクターズ協会(東京・新宿)のホームページなどで、最寄りの診断士を検索できる。

 新築マンション価格の高止まりを背景に、中古市場は伸び続けている。東日本不動産流通機構の調べでは、2017年4~6月期中古マンションの成約件数は首都圏で前年同期比1.2%増。9期連続で前年同期を上回っている。

 Aさんの新居の診断を手掛けた住宅診断大手のさくら事務所(東京・渋谷)の住宅診断士、山見陽一さんによると、中古マンションで特に診断が必要なのは「築年数が15年超の物件」。新築時に設置する設備の交換時期が15~20年程度だからだ。

■体調が悪化するほどの傾き

 「新居に暮らしているだけで体調が悪くなる」。先日、山見さんのもとへ救いを求める依頼が来た。入居後約1カ月。真っすぐ立っているのに傾いているような感覚が日増しに強くなり、自律神経に異常を来したという。

 住宅診断に訪れ、一歩、廊下を踏み出すと、足が吸い込まれるように床がたわんだ。廊下の傾きは実に1センチ。リビングは全体が中心部に向かってすり鉢状に約2センチ傾いていた。

 この物件は基礎となるコンクリートに直接床を張り付ける構造。コンクリートの劣化で隙間が生じたのに気づかず床を張ったことが原因だった。診断結果を施工会社に説明し、交渉の結果、無償でコンクリート補修と床の張り替えをしてもらえたという。

床下で水漏れしていたリノベーション物件

 ただ、こうした施工会社が責任を負う例は少ない。中古物件の契約後に見つかった瑕疵(かし)は多くの場合、買い主の責任で修繕をする。入居したとたんに全面的なリフォームが必要となる可能性もあり得る。「中古だから経年劣化はあって当たり前。大事なのは買う前にきちんと認識しているかどうかだ」と山見さんは強調する。

 この物件が販売業者が買い取って全面的なリフォームをして売り出す「リノベーション物件」だった点にも注意しよう。リノベ物件は目に見える部分を美しく整えている分、深刻な問題を見落としがちだ。きれいに張り直した壁紙の裏は壁の基礎部分まで全面カビだらけという例もある。「前の持ち主が退去したままの状態の物件よりもトラブルが起きやすいので、契約前にしっかり点検したい」(山見さん)

■修繕積立金、追加負担のケースも

浴室の天井裏から水漏れがないか点検

 中古マンションの場合、住居のハード部分の診断だけで安心してはいけない。忘れてはならないのが中古マンションのソフト部分の要となる管理状況だ。

 マンションは住民で構成する管理組合があるのが一般的だ。大規模修繕費用は管理組合で計画を立て、積み立てていく場合がほとんど。この計画の見込みが甘ければ不足資金を埋め合わせるため入居後すぐに積立金が倍増するなど、追加の費用負担が発生するケースもある。

 多くの人にとって住まいは人生最大の買い物だ。理想的な物件を前にすると、心が躍ってしまいがち。中古でも長く安心して暮らせる理想の住まいを手に入れるために、プロに診断をしてもらってはどうだろうか。

ワンポイント:管理状況にも注意

 中古マンションの購入に際しては、管理組合についてもよく調べよう。修繕積立金の計画や管理費など会計情報は必須だ。総会や理事会の開催状況も要チェック。喫煙やペット飼育など生活ルールのほか、管理会社の経営状況も把握したい。

(マネー報道部 岡田真知子)

[日本経済新聞夕刊2017年8月2日付]

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